「しちゃいけないが多すぎる国」に久夛良木健と夏野剛が提言 プレステにつながった“妄想力”

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2021年04月14日 08:00  AERA dot.

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写真Z世代に人気のeスポーツが体験できる空間を導入する計画もある(写真/近畿大学提供。施設はイメージ)
Z世代に人気のeスポーツが体験できる空間を導入する計画もある(写真/近畿大学提供。施設はイメージ)
 2022年4月、近畿大学が「情報学部」を開設予定だ。初代学部長には「プレイステーション」の開発にかかわった久夛良木健(くたらぎ・けん)さんが就任予定で、昨年、同大学情報学研究所所長に「iモード」の父・夏野剛(なつの・たけし)さんが就任した。AERA 2021年4月19日号では、革新をもたらした二人に単独インタビュー。いま求められる学生像とは。

【写真】日本の教育界を変えるのはこの二人

*  *  *
――従来の大学入試とは異なる試験も予定している。情報学部長代理に就任予定の井口信和教授は一般入試や総合選抜型のAO入試のほか、大学側からスカウトする仕組みも検討していると明かす。その狙いは、教授の“弟子”ではなく、社会のニーズに合う学生を育てることにあるという。

久夛良木:学生たちには未来を思考してほしいんです。大人の世界で言えば、DXが社会の課題の一つになっていますが、DXに取り組んで終わりでは意味がありません。何のためにDXするのかを考えながら未来を作っていかないといけない。それには好奇心や妄想力、自ら考える力をトレーニングしておくことが重要です。

 社会には一つの課題があるのではなく、たくさんの課題が複雑に絡み合って存在しています。大人の事情や利害関係、物事を変えるための順番や法体系を見直す必要もある。一気にラジカルな変革を狙っても、周囲の理解がない状態だと崩れてしまいます。

夏野:そうですね。

久夛良木:ソフトウェアを作るときも、まずはアーキテクチャーを考えます。全体の構造を大きな枠組みで捉えて、どういう形で融合できるのかを想像する。ビジネスにも政治にも言えることで、アーキテクチャーの上に共通のフレームワークやプラットフォームがあることで、世界中の人が互いの文化圏や共通認識、価値観を理解しあえる……なんてことを話していると、1時間でも2時間でもしゃべりたくなっちゃうんですよね(笑)。

■しちゃいけないが多い

――目標とする教育像がある一方で、日本社会に停滞も感じていると話す。

夏野:一番の課題は、人材の流動性が低いことです。22歳で選んだ会社に勤め上げる人がいること自体は悪くありませんが、みんなが同じ会社に居続けるのは異常です。人材がたこつぼ的になっていることは最大のハンデで、同じような人で構成されている産業は進化しません。

久夛良木:その進化しない原因の根幹の一つには教育があります。日本は世界で類を見ない「しちゃいけないこと」がたくさんある国です。20世紀に決めたルールが今も続いていて、それに対してチャレンジしようという意欲が湧きにくい。なぜなら、チャレンジが素晴らしいことだとこれまで教えてこなかったからです。教育者にとってチャレンジする生徒ってとても面倒臭いんです。

夏野:教育産業もマルチキャリアであっていい。少なくとも情報学部では、アカデミズムと実業の垣根を取り払うことで、大きく前進すると考えています。

――一世を風靡した日本の製造業も近年停滞している。プレイステーションやiモードのような革新的なアイデアは、どのようにして生まれたのか。

久夛良木:僕は世の中にない新しいものが大好きで、人と同じことには関心がありませんでした。ただ、やっぱりそれが時代の流れだったんだとも思う。夏野さんの生んだiモードは2000年近辺ですが、モバイルでインターネットにつなごうというのは世界で一番早かったですよね?

夏野:そうです。携帯からインターネットが閲覧できたら、どこからでもアクセスできて便利だろうな、という発想からでした。技術的に可能か不可能かはさておき、何が世の中にあれば面白いだろうという想像を膨らませていました。

久夛良木:プレステもそうで、当時はコンピューターグラフィックスが手元でグリグリ動くなんて考えられないことでした。今のパソコンとは比較にならないほど、原始的なことしかできない。そんな時代だったけど、限りなく進化をし続けるコンピューターが生まれたことで、コンピューターとエンターテインメントを融合させてみたいという僕の妄想が花開いたんです。

■若年層の発信力に期待

夏野:おサイフケータイが実現した原動力は、僕の小銭嫌いです。幼いときから小銭が嫌で、どうにかしてなくしたかった。久夛良木さんが言うように、「あったらいいな」という妄想が可能性につながります。

久夛良木:妄想力は特定の人に備わっているわけでもないよね。『ドラえもん』のひみつ道具が登場したのは1969年で、ハヤカワ文庫からSF小説が出たのは70年代でした。あの頃のSF作家の妄想力ってすごくて、それらはもうほぼ実現されているよね?

夏野:でも「2001年宇宙の旅」はまだ実現されていません。木星には行けていないですよ。

久夛良木:ボイジャー探査機が映像を送ってきてくれてる。今は火星の上にドローンが飛んでいたりするけれど、60年前だったらそれ自体も映画の中だけの話だよね。

 僕は妄想力が大事だと思っているんです。小さい子どもはいろんなことを「わーっ」としゃべりますが、あれは妄想力が豊かだからです。子どもにとっては自分の前にあるすべてが未来だから。その好奇心を忘れずに、学生たちには近未来の社会のニーズを思考してほしい。

――発信力を養ってほしいという思いもある。

久夛良木:学問の新しいコミュニケーション手法を近大発で作れるといいなと考えています。学生が使う共通のプラットフォームができたら面白いことが起きそう。もし僕が学生だったら、吸収できることを核にして、自分たちがそれらの核になって周りをどんどん巻き込んでいきたい。ネットはもともと、いろんな人がつながるツールですから。

夏野:今の若者はインスタグラムやTikTokで私生活を発信することに長けていますが、大学で学んだことや社会で起きていることに対する自分の意見を発信できるようになってほしい。それを推奨する仕組み作りが私たちの役割でもあります。

久夛良木:思考力、妄想力、チャレンジ力を持った学生が入れば、大学は圧倒的に変わります。大学が変われば、日本も変わる。僕も夏野さんも今ワクワクしていますが、先生だけだと空回りするから、みんなでワクワクするような情報学部を作っていきましょう。

(構成/編集部・福井しほ)

※AERA 2021年4月19日号より抜粋

このニュースに関するつぶやき

  • 近大って大学名だけ聞くとあんまり良い印象無いけど、水産はけっこう攻めてるからここも後に続けるといいね。専門学校の上位版で終わらないでほしい。
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  • 確かにその通りだな。テレビや新聞だけ見なきゃいけないとは決まってない。ネットなんかにも真実は転がってるからねぇ朝日さん?
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