“最高峰”に拘り続けたWOWOWの30年、編成局長が明かす動画配信時代に打ち勝つ独占コンテンツ

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2021年04月14日 08:40  ORICON NEWS

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写真開局30周年を迎えたWOWOW(写真は東京都江東区の放送センター)
開局30周年を迎えたWOWOW(写真は東京都江東区の放送センター)
 開局30周年を迎えたWOWOW。世界最高峰のスポーツ大会や大物アーティストのライブ中継、オリジナルの社会派ドラマなど、さまざまなジャンルで強力なコンテンツを放送しており、映像メディアが戦国時代に突入するなか独自のポジションを築いている。動画配信サービスがシェアを急拡大する近年、新たな戦略とともにWOWOWの大きなアドバンテージになるのが、これまでに数々のビッグタイトルの放送権を獲得してきた交渉力と関係各所との信頼関係だ。並み居る競合とどう戦っていくのか、WOWOWのコンテンツ戦略局局長の口垣内徹氏に聞いた。

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◆世界最高峰に触れられる場所がWOWOW、その想いは昔から変わらない

――この30年間で放送業界も大きく変化しました。改めて振り返りいかがですか?

【口垣内徹】 僕が入社したのは1995年の4月。その当時より掲げていた「世界のトップエンタテインメントを日本のお客さまに届ける」という志は、現在も大きく変わっていません。例えば、当時はテニスの『グランドスラム』の中継をしてもいまほどたくさんの人が視聴いただいている状況ではありませんでした。本当に好きな人が世界最高峰に触れられる場所が、WOWOWでした。その想いはいまも変わっていません。

――90年代には衛星放送が続々と立ち上がるなか、差別化や独自性をどう考えていましたか?

【口垣内徹】 他社のサービスが続々立ち上がり、そこからはコンテンツで戦う時代になりました。ひとつは、他社にないもの、WOWOWでしか届けることができないものをより早く放送するのがペイチャンネルなので、そこに注力していきました。いろいろなチャンネルが並ぶなかでも、WOWOWはエンタテインメントジャンルで世界トップのコンテンツをお届けする姿勢で続けてきました。

――終了してしまう衛星放送のチャンネルもあるなか、WOWOWが支持を受け続ける理由についてはどう思いますか?

【口垣内徹】 基本的には、いま流行っているものを選んで放送しているわけではありません。世界で権威あるテニスを観るなら『グランドスラム』。世界で一番強い選手の戦いを観たいなら『エキサイトマッチ』といった、さまざまなジャンルの世界のトップをいくつも放送しています。この規模感で放送しているのは世界的でみても類がない。やはりほかにはないものに触れたいというお客さまが集まるチャンネルにしないと、生き残ってはいけないと思います。

◆どのコンテンツも特別ではない 放送権獲得における権利元との“特別な関係”

――テニスやサッカーなど、世界的メジャー大会の独占放送を長年にわたり続けています。近年は海外メディアなどの参入もあり競合他社が増えるなか、なぜこれだけのコンテンツを獲得できるのでしょうか?

【口垣内徹】 正直なところ権利が獲得できていないものももちろんあります。ある意味、不安定な要素もありますが、アスリートへのリスペクトや、中継における技術力、競技の観せ方、現地感を伝えるなど、WOWOWの思想やポリシーを持って大切に扱うことは、権利獲得における重要な要素のひとつです。最終的には権利元との信頼関係にもつながるので、とても大切にしています。私たちのフィロソフィとともに素晴らしいアスリートの活躍を視聴者に提供すべくスポーツ中継をさせていただいています。

――音楽の権利獲得においては、一朝一夕には成り立たない関係各所との信頼関係が必要になっているかと思います。

【口垣内徹】 アーティストをリスペクトし、その音楽をどう伝え、そこにどれだけの強い想いを持っているかも重要です。また、WOWOWの撮影技術など、これまでの番組実績を評価していただいたり、音楽ファンに限らない幅広いエンタテインメントファンへ広くアプローチできることにアーティスト側が関心を持っていただけることも多いです。これまでに積み重ねてきたさまざまな実績や新しい技術などがあってこそ放送を実現できることは、音楽に限らずどんなコンテンツでも同じことが言えると思います。

――長年培われてきた特別な関係性が活きているところもあるのでは?

【口垣内徹】 そのような信頼関係に基づく場合もありますが、最後はビジネスですから。WOWOWよりも高額の権利料で他社が獲得することも当然あります。

――硬派な社会派ドラマが多い連続ドラマWは、出演を希望する俳優が後を絶たないと聞きます。オリジナルドラマにも注力されていますよね。

【口垣内徹】 オリジナルコンテンツのなかでもドラマはひとつの大きな柱であり、とても大切なコンテンツです。一概には言えませんが、WOWOWのドラマはまず脚本ありきです。だからこそ、ストーリーの面白さや、クオリティの向上にも影響している面はあると思います。キャストはストーリーと役柄の全容を把握したうえで撮影に参加することができる場合が多くなります。でも、そのやり方ももはやWOWOWだけではないので、オリジナルコンテンツにもさらなる進化が求められています。

――たしかに役者が安心して撮影現場に入れることは、大きな要素だと思いますが。

【口垣内徹】 もちろん出演を希望する理由は、それ以外にもあると思いますが、やはり一緒に仕事をしたいと思ってもらえるプロデューサーやクリエイターがいることなのではないでしょうか。2000年代になると、オリジナルというだけでなく、それまで以上に差別化を図らないと視聴者に選んでもらえない状況になりました。そうしたなかのチャレンジとしてはじめたドラマWが、主力コンテンツとしてお届けできているのは、嬉しいところです。

――WOWOWのドラマの質の高さは、役者からも視聴者からも評価されています。

【口垣内徹】 ありがとうございます。ただ、連続ドラマWだけを作り続けていても、新しいお客さまを呼び込むことはできない。では、30分のドラマだったらどういう内容がおもしろいんだろう、いままでのドラマWでは作れないけれど、あのクリエイターと新しいコンテンツを生み出してみようとか、チャレンジし続けないと新しいものは生まれない。お客さまが納得する、おもしろいと思ってもらえるコンテンツを作っていかないといけない。それこそ、これまでの質とは違う価値を生み出さないといけないと思っています。やはり番組を作るプロデューサーがカギとなるでしょう。

◆まだまだ正解はわからない状況、放送と配信をシームレスに楽しんでもらいたい

――WOWOWでは、プロデューサーが育つ地盤が30年間で培われているのでしょうか?

【口垣内徹】 WOWOWにはディレクターがいません。プロデューサーしかいない会社です。各プロデューサーがいろいろな現場を経験しながらパートナーの制作会社の皆さまと共に学び、次はこういうことにトライしよう、こんな新しいことを取り入れたらおもしろいとチャレンジを続けています。ただ、プロデューサーに完成はなく、その時代ごとに求められるプロデューサー像があります。例えば、いまの時代でいうと、さまざまなクリエイターとつながり、放送だけではなく配信のことも考え、新たなコミュニティが作れる人材。作り手も時代によって進化していないといけません。

――ここ数年は動画配信サービスがシェアを急拡大させていますが、WOWOWでもオンデマンドに注力されています。

【口垣内徹】 動画配信サービス各社の動向は、もちろん注視しています。そんななかでWOWOWオンデマンドを1月13日にスタートさせました。配信限定の海外ドラマや放送と連動するオリジナルコンテンツなど、さまざまなコンテンツを強化していますが、まだまだ正解はわからない状況です。放送の同時配信に加え、放送と配信サービスを両軸で、観たい時にどんな時でも最高のエンタテインメントをお客さまに楽しんでいただけること、そんな体験をどのように提供していくかが求められていると思います。

――現在はコンテンツの放送権と配信権を両方取りにいかれているのでしょうか。

【口垣内徹】 それがベストではありますが、どういうバランスで何の権利を獲得して、どうサービス全体をデザインしていくか。WOWOWは、放送中心で考える発想ではなく、放送もあれば配信サービスもあるなかで、視聴者の皆さまにどう楽しんでいただけるかを考えています。放送と配信というメディアサービスで全体のサービスをデザインし、放送と配信をシームレスにWOWOWを楽しんでもらえるようにしていきたいと思っています。

(文/武井保之)
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