選挙の鬼・中村喜四郎は立憲民主をどう立て直すのか「次の選挙で『政権交代』は言わない」

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2021年04月15日 07:00  AERA dot.

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写真中村喜四郎衆院議員(撮影/西岡千史)
中村喜四郎衆院議員(撮影/西岡千史)
 国政選挙で14勝無敗、うち8回は無所属で出馬して勝利した。かつて自民党に所属し「将来の首相候補」と言われた中村喜四郎衆院議員は今、立憲民主党で「打倒自民党」を目指して活動している。だが、菅義偉政権が相次ぐスキャンダルで防戦一方であるにもかかわらず、野党への支持は広がっていない。「負けない男」の異名を持つ中村氏は今、何を考えているのだろうか。

* * *
──2009年の衆院選で旧民主党が勝利して政権交代を実現しましたが、その後の国政選挙では自民党と公明党が圧勝を続けています。今の野党議員に足りないものは何でしょうか。

 政治に対する泥臭さ、そして選挙への執念です。今の選挙制度は、小選挙区で負けても党が強ければ比例で復活できる。だから、野党の議員は死に物狂いで選挙を闘う気持ちが弱い。今、政治に無関心な人、あきれた人が増えている。そんな人たち一人ひとりに声をかけて耳を傾け、まずは投票に行ってもらわないといけない。そこで私は、投票率を10%上げる運動をして、全国で署名を集めています。

「そんなことをやっても意味がない」という人もいます。それでもやるんです。政治家が私心を捨てて徹底的にやることで、はじめて有権者が関心を持ってくれる。自民党なんて、たいしたことないんです。誰かが夢中になって立ち向かっていけば、次の総選挙で勝てる可能性は間違いなくあります。

──今年10月で衆院議員が任期満了となります。総選挙までに何が起きると考えますか。

 4月には衆参両院で3つの補欠・再選挙があります。これで野党が勝利すればどうなるか。千葉県知事選挙でも分裂して負けた自民党と公明党は、これまでのような選挙協力が機能するかわからなくなってきます。

 千葉県知事選では、私は熊谷俊人さんの選挙を勝手に応援していました。前回の衆院選で、千葉県内の13の小選挙区で野党系で勝利したのは野田佳彦元首相だけ。千葉県で野党の勢いをつける必要がありました。

 それで、私の選挙区は隣の茨城県だから「隣県勝手連」をつくって応援に行くことにしました。自民党系の首長や支持団体にも、次の衆院選の候補予定者を連れてどんどん会いに行く。それで、「熊谷さんが選挙で圧勝するから、最後だけでいいから応援してほしい」と言って歩いたんです。立憲の人からは「そんなことまで言っていいんですか」なんて言われましたけど、いいんですよ。自民党なんてハッタリかます政党なんだから、こっちもハッタリかますんです。

──地方選挙で勝利できても、世論調査では野党の支持率は上がっていません。

 現在の国会では、与野党の議席数に圧倒的な差があります。だから与党は国会を自由に進めることができる。新型コロナウイルスで対応が必要なのに、昨年秋は臨時国会をなかなか開かなかった。以前であれば、こんな緊急時に与党が国会を開かなかったら、マスコミはこぞって大批判したものです。

 だからといって、次の選挙で有権者が与党に投票するとは限りません。野党を支持していなくても、野党に票を入れる無党派層の国民はたくさんいます。国会を開かなかったことも含め、政府のコロナ対応には怒りを感じている人がたくさんいる。選挙は、1票差であっても「勝つか負けるか」しかありません。国民の怒りがどっちに向かうか。それは選挙をやってみないとわかりません。

──自民党は以前に比べてどのように変わったのでしょうか。

 私は自民党に約20年間いましたから、自民党政治についてそれなりに知っているつもりです。私がいた時代は、国民に対して責任ある政治をしていて、権力は抑制的に使っていた。何よりも「国を担っていくんだ」という責任感を、どの党よりも持っていた。それが野党とは違ったところです。

 それが小選挙区比例代表制になり、2012年に第2次安倍晋三内閣が発足してからは、信じられないことばかりが起きはじめました。三権分立の中で行政だけが肥大化し、国会が形骸化してしまった。2018年の通常国会終了後には、森友問題で文書の改ざんなどが相次いだことについて、大島理森衆院議長が「再発防止のための制度構築を強く求める」と苦言を呈したほどです。

 司法に対しては、黒川弘務検事長(当時)の定年延長問題も起きました。過去の自民党は、権力を持っていても司法に対して一線を越えることはなかった。だから、田中角栄さんでも逮捕されたんです。三権分立の尊厳に、時の権力は触れてはいけません。それが今の自民党では、言葉に責任を持たず、傲岸不遜に政治をやっている。その結果、役人も萎縮して政治家に意見しなくなりました。

 外交や防衛政策もその場しのぎの対応ばかりです。安倍前首相は「戦後外交の総決算」と言い始め、北方領土問題では4島一括返還の原則を2島返還にしてしまった。それに対して誰も「おかしい」とは言わない。

 昔の自民党なら、党内で活発な議論をしていた。米価問題では、徹夜で議論しましたよ。それだけ議論をすると、みんな疲れてしまって「もういいからまとめてくれ」となるわけです。そこでまとまった結論というのは、全体の意見の落としどころにおさまっていく。でも、その決定というのは、大きくズレてはいない。

 ところが、今は形だけの議論しかしない。最初から官邸で物事が決定していて、自民党は追認するだけになってしまった。安倍前首相が桜を見る会問題で118回も国会でウソをついても、党で何の問題にもならない。やりたい放題です。

──変えるには、どうすればいいのでしょうか。

 前回衆院選の小選挙区(定数289)で立憲、希望、共産、社民と野党系無所属議員が得た議席は60。全体の20.7%しかありません。議会は数です。小選挙区で79.3%の議席を持つ与党に立ち向かうのは、今の野党ではとてもできません。だから与党はやりたい放題で、結果的に自民党の質も劣化してしまった。

 ですが、前回衆院選で野党が選挙協力をしていれば、維新の会の票を含めなくても、単純計算で小選挙区で102議席を獲得することができた。まずは、これが次の衆院選の目標です。102議席に比例の議席を含めると、野党は200議席を得ることができる。そうすれば、野党の議席数は国会の43%で、保革伯仲です。

 私は、いきなり次の選挙で「政権交代をする」とは言いません。200議席は現実的な目標で、そうなれば自民党も国会運営に緊張感が出る。自民党という政党を変えるには、野党を増やすことが必要なのです。

──「自民党を変えるために野党を増やす」というのでは、野党第一党としての目標が消極的ではないですか。

 国会が与野党伯仲になったのに、それでも自民党が変わらなければ、次は政権交代しかありません。その時はどうなるか。自民党内からも不満が出る。千葉県知事選もそうでしたが、各地の地方選挙で与党が次々と分裂しているように、国政でも同じことが起こります。

 もちろん野党も変わる必要があります。野党の議席数が増えれば、「野党連合政権」を訴えている共産党も、具体的に立憲とどのような政権を作るのかを議論しなければなりません。日米同盟、自衛隊、天皇制など、野党内でどのような見解をまとめるのか。それから共産党は逃げることはできません。

 やってはいけないことは、選挙前に突然、政権合意を作ることです。時間をかけてオープンな形で議論し、野党内だけではなく、支持者にも理解してもらえるようにする。立憲も共産も変わらなければならない。しかし、それができれば「大人の野党」になることができます。

──共産党は変わることができますか。

 共産党だって、今の野党で政権交代を目指すなら変わらざるをえない。現実には、政策にこだわっているのは政治家の方で、共産党の党員の方は柔軟ですよ。だから、私は共産党委員長の志位(和夫)さんには「一つ取ったら二つ譲ってくれ」と言っている。「過去の方針と矛盾したことは言いたくない」という共産党も、政権を目指すと宣言したわけだから、これからどんどん変わっていかないと、党員も納得しません。

──野党の中には、維新の会との協力を模索する動きもあります。

 維新の会と協力できれば、野党に有利であることは間違いありません。しかし、国会での維新の行動は与党とほぼ同じで、現在の野党と一緒に選挙を戦うことは考えられません。これは政党の考え方の問題なので、我々が変えることのできるものではありません。だから、次の総選挙では「維新は実質的に与党の一員だ」と国民に認識してもらう必要があります。

──現在、立憲内で岡田克也衆院議員らと「小勝会」というグループを立ち上げていますが、その目的は。

 前回の衆院選で比例復活で当選した人たちの会です。次の選挙では小選挙区で勝つ。その目的で集まった議員で、名前はわかりやすいものがいいだろうということで「小勝会」となりました。それ以上でも、それ以下でもありません。

 一部の報道で共産党と距離を置く目的でグループが作られたかのように書かれましたが、まったくそんな議論はしていません。むしろ、小選挙区で負けた議員の集まりですから、共産党に対して協力を拒むような話は一切していません。

──中村議員は、自民党時代は「将来の総理候補」と言われていました。今でも、総理大臣を目指していますか?

 まったくそんなつもりはありません。立場が欲しいなんて、さらさらない。

 このままでは日本の民主主義が間違った方向に向かう。私の仕事は弱い野党を強くすること。自分の経験をすべてかけてやり遂げるつもりです。誰もついてこなくてもかまわない。私一人でもやる。

 個人的なことを話せば、ゼネコン汚職事件で刑事被告人になり、「中村はもうダメだ」と言われてきたのに、そんな私を支えてくれた支援者の人たちがいます。その人たちは「いつか中村は日本を立て直すために動いてくれる」と期待してくれています。その期待にこたえずに、政界を去るわけにはいきません。

 私は、一切の私心を捨てて国のために尽くそうと思っています。そのためには、次の選挙で野党が議席を伸ばして保革伯仲に持っていき、国会に緊張感を作る。まずはそれを目指しています。

──野党は一つにまとまるでしょうか。

 最近はコロナの影響で控えていますが、19年10月からは、野党の党首を集めて食事会をやっていたんですよ。最初はぎこちなかったですが、何回かお酒を飲みながら食事をすると、ざっくばらんに話ができるものです。2時間なんてあっという間に過ぎます。党首だけではなくて幹事長や選対委員長同士でもやっています。

 私が自民党にいた時は、当時の最大派閥の田中派で汗を流しました。そこで学んだのは、一切の私心を捨てて、大義のために一つになるということ。そのために徹底的に議論を尽くす。一つにまとめるために、今は立憲の中で汗をかいていますよ。

(聞き手/本誌・西岡千史)

※週刊朝日オンライン限定記事

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  • 選挙の鬼、二代目 #中村喜四郎(#中村伸)氏は焦らずじっくり攻めていく立場か。
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