“車いすでJRに乗車拒否された”発言に賛否。車いすユーザーの意見を聞いた

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2021年04月15日 09:21  女子SPA!

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女子SPA!

写真写真はイメージです(以下同じ)
写真はイメージです(以下同じ)
 骨が折れやすい障害を持ち、車いすを使用して生活するコラムニストの伊是名(いぜな)夏子さんのブログが議論を呼んでいます。

 伊是名さんは、JRの無人駅を利用しようとしたところ、駅員から一時「案内できない」と言われた経験を4月4日ブログに投稿。

 これに対して、無人駅で駅員を4人も呼んで車いすを運ばせるのはクレーマーだ、駅員に感謝の気持ちはないのかなど、非難が殺到したのです。一方で、当事者が声を上げなければ社会は変わらない、と応援する声も。賛否の論争がいまや合戦になっています。

 確かに、車いすの移動はとても不便です。私は合同会社ブラインドライターズという、スタッフ全員が障害のある方で構成された会社を経営しています。そのため車いすの方の介助をすることもありますが、自分の感覚からするとどうしようもなくイライラすることが多いです。

◆電車での移動スケジュールはまったく読めない

 まず改札でアテンドを頼みます。手の空いた駅員さんが来るまで待ちます。着駅に連絡を取ってもらい、駅員さんの確保ができるまで待ちます。改札で数十分、ホームで電車を何本も見送ることはザラです。

 車いすユーザーは約束の時間の30分前には到着するように家を出るそうですが、それでも遅刻することがしばしばあります。それほど電車の時間が読めないんです。私は普段、「電車は最も時間の読める移動手段」ですが、障害のある方たちにとってはそうではありません。

 ホームまでエスカレータしかない駅では、いったんエスカレータを使用停止にして、昇降用の装置を設置し「車いす乗りまーす!」とか号令がかかり、パレードみたいになります。ただホームに行きたいだけなのに、です。

◆無人駅の増加が大きな負担に

 無人駅の増加も問題になっています。

 現在日本は約5割の駅で無人化されており(2020年3月時点 国土交通省の集計による)、事前の連絡が必要になるなどアテンドを必要とする方たちにとって大きな負担となっています。2020年9月には、車椅子の利用者が「無人駅で乗車する際の介助に予約が必要なのは差別だ」としてJR九州を相手に訴訟が起こし、現在係争中です。

 無人化は経営上の判断ではあると思いますが、実施する際に利用者の利便性を考えたのかは疑問です。

◆「大人しく従順であれ」障害のある人への無言の圧力

 バリアフリーを推進するのに、健常者が求められているのは「心やさしさ、思いやり」であることに対し、車いすユーザーで建築家の元東洋大学教授・川内美彦さんは異議をとなえています。

 駅のエレベータを必要な人に譲る際に「優しい心遣いを」、駐車場の優先スペースには「思いやりの心で協力を」などとあり、「すべての例が、説明をせずに感情に訴えている」と著書『尊厳なきバリアフリー』で指摘しています。

<そしてそれは障害のある人に「心」「やさしさ」「思いやり」の対象として「大人しく従順であれ」という無言の圧力を加えているのだ。(中略)自己主張せず、いつもにこにこしていて、人に好かれる方が生きやすいとしたら、それは社会が障害のある人を選り好みしているということであり、権利や平等といった考え方とはまったく異なるものである>(川内美彦『尊厳なきバリアフリー』現代書館より)

 Twitterでは、伊是名さんに対し「感謝の気持ちが足りない」という批判も多いです。それは川内美彦さんが指摘するような、障害がある人への先入観から発せられてはいないでしょうか。

◆障害の中身や考え方は千差万別

 今後このまま無人駅が増え、対策がされなければ、どこかで必ず今回のような問題が起きるでしょう。訴訟にもなっているのですから、この機会に、しっかりと考えるべきです。

 しかし今回の件で最も心配なのは、ふだん障害者と関わらない人たちが、「これだから障害者は面倒くさい」と、大きな主語で偏見を持ってしまうことです。「障害者」と言っても、その障害の中身や考え方は千差万別です。「声を上げなければ変わらない」と思う一方で「私は迷惑をかけないように気をつけているのに」と思う当事者の方も多いでしょう。

 全員が障害のある方で構成された会社ブラインドライターズのスタッフ・保護者や、編集部周辺の車いす利用者に、今回の件について意見を聞きました。実にさまざまな意見が寄せられています。抜粋してご紹介します。

◆「伊是名さんの行動は本当にありがたい」

 幼い頃から足に装具をつけての歩行と、時々車いすを使っている俊也さん(仮名・40代)はこのように話します。

「今回の事件を知って、よく言ってくれたなと思いました。

 本当に自分の立場からすると、理不尽なことばかりです。あまりにも電車に乗ることが大変過ぎて、僕は電車に乗らなくなりました。その代わり、バイクと車を運転できるように練習して、電車に乗らなくても移動できるようになりました。ですが、車は障害者用駐車場が少なすぎて、止められないことは多々あります。

 それに、バスで乗車拒否されたり、困っているのに誰も手を貸してくれなかったりは日常茶飯事です。
 たまに手を貸してくれる人はコテコテの関西人の方か、外国の方で、それ以外の方が手を貸してくれたことはほとんどないです。

 1人で声をあげても何も変わらないと思い、毎日我慢して生きている自分からすると、今回の伊是名さんの行動は本当にありがたいと思います」

 また、脊椎損傷のため車いすで生活する貴美子さん(仮名・30代)は
「(伊是名さんの)ブログ後半で熱海駅長から提示されたセンターの電話番号は、JR東日本のスマホサイトからかなり探しづらい場所にありました。電話番号はページトップに載せておいてほしいです」といいます。

◆「あんたら他人事じゃないんだよ!」

 当然ながら、車いすを使うのは障害者だけではありません。今年3月に、母親(80代)が脳出血で左半身不随となり、突然の車椅子生活になった真由美さん(仮名・50代)は、こう語ります。

「私がショックだったのは、ネット上とかで伊是名さんが袋叩きにされたことです。Twitter上でいろんなアンケートを取る『アンケート魔人』というアカウントが『伊是名さんを支持するか、しないか』をアンケートしたら、4万件を超える回答があって、『支持しません』が97.3%だったそうです。
 Twitterアンケートだから偏りはあるとはいえ、あまりにも異常だと思いませんか? 

 自分の親が明日、車いす生活になるかもしれない。私たちだって、年とったらかなりの確率で車椅子になるんですよ。その時、“どこでも行ける”世の中のほうがいいじゃないですか。

 伊是名さんのブログの書き方は反感買ったかもしれないけど、基本は、“誰でも自由に動ける社会に”と訴えてるわけで、あんたら他人事じゃないんだよ!と思います。

 親の車椅子を押して外を歩いてると、みんな親切に手助けしてくれて、『すみません、ありがとうございます』の連発です。伊是名さんなんか、何千回も『すみません、ありがとう』を言ってきたはず。なのに、『感謝が足りない』なんて非難する人は、よく言えるよな…と」

◆「私は絶対、駅に事前に電話をしますが…」

 車いす利用者の子どもを持つ美紀子さん(仮名・40代)伊是名さんの発言について、感謝しつつも世間の反応に不安も感じるそうです。

「私は子どもが車いすで呼吸器などの医療機器もあり立ち往生できないので、駅への電話は絶対にします。どうしても乗りたい電車があり、スケジュール通りに移動したいのなら、私は事前に問い合わせます。
 一方JR側も車いすユーザを想定した対応を進めてくれたら良いなとは思うので、声を挙げてくれる方がいるのは有難いです。でも腑に落ちない点がいくつかあるなどして世の中の反感を買ってしまったのは残念です」

◆「障害者を取り巻く日本の現状に毒されているのかも」

 車いす利用者の兄を持つ亜依里さん(仮名・40代)は、今回の件について複雑な思いを聞かせてくれました。

「足に障害がある家族がいるので、一緒に出かけるときは下調べが必須です。車で行くとしたら障害者用駐車場はあるか、タクシーだったらすぐ捕まえられる場所か、ご飯を食べるなら、飲食店にエレベーターはあるか、入り口に近いテーブルにしてもらえるか、段差はないか等々、確認してからでかけます。

 でも、私としては自分たちが困らないために調べることなので、それが大変だとは思ったことはそんなにありません。でもそれは頻度が少ないからであって、当事者の兄自身は同じ思いではないかもしれません。

 今の日本では万全に下調べしてから行動しないと障害者が普通に動くことは難しいと思います。伊是名さんもご自分や同行者、そしてJRの職員の方みんなが困らないために、もう少し柔軟な対応をされても良かったのかもしれないなとは思いますが、そう思う時点で、障害者を取り巻く日本の現状に毒されているのかもしれないと反省しました。

 もちろん、無人駅などのありとあらゆるすべての場所のバリアフリー化は現実的には難しいと思います。ですが、バリアフリーの箇所をわかりやすく掲示するなどの障害者向けの情報の充実や、段差にスロープを設置する、手すりをつける、困っている人がいたら声をかけて手助けする、などの小さなことからもっと障害者が暮らしやすい社会を作ることはできるのではないかと思いました」

◆「『自費でタクシー乗ってください』も間違ってる」

  車いす利用者の他にも、ハンデイキャップを持つ人々の意見も聞いてみました。

「無人駅に行く際に障害者だから事前連絡をしなければならないというのは違うと思います。確かに対応していただく必要があるし、お願いしなければいけないのも事実かもしれませんが、『自費でタクシー乗ってください』も間違ってると思います。電車が止まった時は振替運行するのと同じような考え方もあるのではないかと思いました。
 伊是名さんのように発信してくださる方がいることによって、私たちがどこにでもいつでも出かけれるようになっていくのではないかとも感じました」(全盲/女性/20代)

「伊是名夏子さんとご家族の行く手を阻んだのは『障害』です。ただし、これは伊是名さんの体のディスアビリティの話ではありません。
『障害』とは、フィジカルやメンタルの面でハンディを持たない健常者向けに社会がデザインされていることによって生まれるんです」(ロービジョン/男性/40代 ロービジョン=ロービジョン=何らかの原因により視覚に障害を受け、全盲ではないが矯正もできず「見にく
い」状態にあること。弱視。)

 今回の伊是名さんの発言をきっかけに、暮らしやすい世の中へ変わっていくのか、それとも声をあげる人へのバッシングだけにとどまるのか…社会の一員である私たちの一人ひとりが問われているのではないでしょうか?

<文/和久井香菜子>

【和久井香菜子】
ライター・編集、少女マンガ研究家。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。英語テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。視覚障害者によるテープ起こし事業「合同会社ブラインドライターズ」代表

このニュースに関するつぶやき

  • 声をあげる人へのバッシングと、クレーマーへの非難は違う件
    • イイネ!0
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  • この件に関しては1km先の階段しか無い無人駅では大人4人で運んでも転倒の危険すらあるからエレベーターのある熱海駅で降りてタクシーでいく、が当たり前の話。
    • イイネ!45
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