不倫デートが生放送で映ってクレームも NGが増えたテレビが失ったもの 鈴木おさむ

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2021年04月15日 16:00  AERA dot.

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写真放送作家の鈴木おさむさん
放送作家の鈴木おさむさん
 放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、テレビの仕事について思うことをつづります。

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 下北沢本多劇場で「てれびのおばけ」という舞台をやっています。僕が作演出で、主演の二人に今田耕司さんとせいやさん(霜降り明星)

 物語はテレビ局が舞台で、今田さん演じる葉月(はづき)というテレビマンが、50過ぎてずっとやってきたバラエティーの現場から、ワイドショーを作る情報に移動してきて、戸惑う毎日。今までバラエティーを作ってきて人とのつながりを大事にしてきた葉月からすると、知り合いだとしても事件を起こしたら取り上げなければいけないワイドショーのやり方に疑問を感じている。すると、その葉月の家にお化けが出てくる。瓦田(かわらだ)という名前のお化けは実は80年代にバリバリのバラエティーを作っていたテレビマンで、今のテレビの作り方に唖然としていくというスタート。

 僕がテレビの仕事をしてきて、そして今感じることをリアルな描写を含めながら書いているのですが、あらためて脚本を書いていてバラエティーでできなくなったこと増えたよなと思うんです。

 80年代、「ザ・ベストテン」では、アイドルが仕事終わりで新幹線のホームに駆け付け、新幹線に乗り新幹線の中で歌うと、途中で切れてしまう、なんてものがあり、ドキドキしながら見ていました。

 今は絶対にできません。まず、電車のホームで生でバラエティーの中継はできないだろうし、駆け込み乗車だし、なにより、一般のお客さんの顔が出まくっている。この5年だろうか、テレビで通り過ぎる一般人の顔にボカシをかけるようになったのは。

 実は数年前、僕が構成を手掛ける生放送の番組で、街中をデートしていた男女が不倫のカップルで、それが映ってしまっていた。なんと、そのカップルが番組に連絡してきて、不倫なのに映ってしまったことにクレームを入れている。いや、不倫してる方が悪いだろと思うんだけど、文句を言われたら番組は弱い。今後リピート放送する時には、ボカシをかけることになった。

 通りすがりの一般人の顔を自由に出せなくなった。昔は「テレビに出たいでしょ」と思っていたかもしれないが、今はそうじゃない。

 他にもたくさんある。人を落とし穴に落とす企画もなかなか見られなくなった。落とし穴って実は結構危険なんですよね。走って来た人を落とし穴に落とそうとすると、前後含めて合計10メートルくらいの穴を掘らないといけない。ショベルカーで穴を掘るってめちゃくちゃお金がかかるんです。なので、意外に最近の地上波の番組では見られなくなってきた。

 大食いはあるけど、早食いはない。なぜなら早食いすると喉に食べ物を詰まらせて事故が起きる可能性があるから。ドッキリで言うとお色気ドッキリもなくなってきたし、90年代は、営業に行くとお客が全員ヤクザだったなんてドッキリもあったが今はコンプライアンスNG。

 できないこと、やらないこと、やれないことが本当に多くなったなと改めて思う。その中でなんとかもがきながら狭い部分をより深く掘り起こして番組を作る今のテレビマンのパワーも凄いなと思う。

 テレビがおもしろいと思うことを放送出来るパワーは昔より本当に減ったと思う。ユーチューブはできている人も多いかもだが、そのターゲットは絶対にそっちに行くと思う。

 今のテレビで失ったものをあらためて確認しながらも、せめてネットは変わらないでほしいと思いながらも、変わっていくんだよな。そしてまた新しいものが出てくる……。

■鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中。バブル期入社の50代の部長の悲哀を描く16コマ漫画「ティラノ部長」の原作を担当し、毎週金曜に自身のインスタグラムで公開中。主演:今田耕司×作・演出:鈴木おさむのタッグで送る舞台シリーズ第7弾『てれびのおばけ』が4月18日(日)まで 下北沢・本多劇場で上演。YOASOBI「ハルカ」の原作「月王子」を書籍化したイラスト小説「ハルカと月の王子様」が好評発売中。

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