『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』暁佳奈の新作がランクイン 週間ライトノベルランキング

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2021年04月16日 11:01  リアルサウンド

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暁佳奈の注目新作が登場ラノベランキング

参考:Rakutenブックスのライトノベル週間ランキング(2021年4月5日〜11日)


 「魔法科」「転スラ」「はまち」「ダンまち」と、略称で呼ばれ愛される人気ライトノベルのシリーズ最新刊が、上位にズラリと並んだRakutenブックスのライトノベル週間ランキング(4月5日〜11日)。


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 3位には、女性向けレーベルのアリアンローズコミックスから、貧乏貴族令嬢と名門公爵家のイケメン当主との「契約結婚」から始まった賑やかな日々が綴られた木野咲カズラ作、徒然花原作のコミックス『誰かこの状況を説明してください!〜契約から始まるウェディング〜5』(フロンティアワークス)が入って、小説ばかりの並びに彩りを与えている。


 そんなランキングにあって、まったくの新作となる『春夏秋冬代行者 春の舞下』と『春夏秋冬代行者 春の舞上』(電撃文庫)が10位と11位に登場した。


 作者は、小説がテレビアニメや劇場アニメになって世界中にファンを得た「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」シリーズ(KAエスマ文庫)の暁佳奈だ。


 舞台は、北からエニシ、帝州(ていしゅう)、衣世(いよ)、創紫(つくし)、竜宮(りゅうぐう)に分かれた大きな島からなる国『大和』。日本の北海道から沖縄までをモデルにしたような世界で、登場人物も日本人のような名前で呼ばれている。


 本作でヒロインとなる少女は花葉雛菊という名前で、春の代行者として大和に春をもたらす役割を担っている。そう、この世界には春夏秋冬のそれぞれ担う代行者が存在して、受け渡すようにして四季をつないでいる。


 かつて世界には冬しか季節が存在しなかった。孤独に耐えかねた冬は生命を削って春という季節を作って慈しんだ。ところが、動物たちが目覚めてはすぐ眠り、木々も葉を付けたとたんに寒さに凍てつく連続に大地が悲鳴を上げた。冬は、厳しい暑さで大地を焼く夏と、生命が死へと至る秋を作った。世界に四季がもたらされた。


 やがて四季たちは、春とだけ過ごせなくなった冬を思って、四季の役割を誰かに任せることにした。牛や兎や鳥では果たせなかったその役割を、最後に受けたのが人間で、それぞれの季節の代行者となった者が、大和の島々をめぐって季節をもたらすようになった。そんな世界にこの10年、春だけが存在しなかった。雛菊が行方不明になっていたからだ。


 春の里が襲撃され、代行者ながらまだ6歳だったの雛菊が誘拐された。殺されたのならすぐに次の代行者が生まれたが、継承の印を持ったものは現れず、雛菊が生きていることだけが確かだった。従者だった姫鷹さくらは、それからずっと雛菊を探していたが見つからない。そんな世界に雛菊が戻ってきたから誰もが喜んだ。


 けれども、雛菊は壊れていた。前とはどこかが違っていた。単語を区切ったような話し方をする雛菊に何があったのかが、『春夏秋冬代行者 春の舞』の上下巻を通して明らかにされていく。一方で、夏の代行者を務めている葉桜瑠璃と、姉で従者の葉桜あやめが暮らす夏離宮を雛菊たちが訪れたり、秋離宮が襲撃されて、かつての雛菊のように秋の代行者の祝月撫子がさらわれてしまう事件が起こったりして、世界が決して平穏ではない様が見えてくる。


 寒い冬なんて存在しなければ良いと根絶を狙う勢力や、季節の代行者をもっと活用しようと訴える勢力など、様々な思想信条を持った過激派たちが跋扈して謀略を巡らせ、銃器を振るってテロを起こす。スオウが描く麗しいキャラクターたちや美しい背景に、耽美なファンタジーかと思って手に取ると、意外やハードなサスペンスが繰り広げられていて、驚くかもしれない。春夏秋冬、それぞれの代行者に一種の異能力が備わっていて、バトルシーンで発揮されるアクション要素もある。


 あと、描写にどことなくコミカルなニュアンスも漂っていて、良い意味で俗っぽい。雛菊の到着を知った役場から、職員が「自家用車でドリフトをきめて駅に迎えに来た」り、群衆の好奇に晒された雛菊が、部屋の隅で膝を抱き丸くなっていた様子が、「さながらその姿はダンゴムシのようだ」ったりと、ふっと笑える描写が出てきて、それぞれに分厚い上下巻をするすると読んでいける。


 一方で、雛菊たちが出会った少女が、冬の間に凍った母親の墓から雪を除こうとする描写、夏の代行者の瑠璃が、姉の結婚にふて腐れる描写など、家族の間に生まれる絆を感じさせる切ないエピソードも挟まれて、生きていく上で大切な存在を思わされる。


 ラブロマンスにも抜かりはない。冬の代行者、寒椿狼星は最愛の雛菊が目の前で誘拐されてしまったことを嘆き、苦しみ続けるクールな青年として描かれる。従者の寒月凍蝶も、弟子のさくらが雛菊を奪われた怒りと悲しみから、まだ10歳に満たない身で旅に出て雛菊を探して回ったことに、自責の念を抱いている。そんなイケメン2人は、またしても危機に陥った雛菊たちを助けられるのか。今度こそ狼星は雛菊をしっかりとつなぎ止められるのか。ロマンティックな要素を味わえる作品だ。


 ランキングに戻ると、10位に浅葉なつ『神様の御用人10』(メディアワークス文庫)が入った。亡き祖父がかつて務めていた神様の御用聞きに任命されたフリーターの良彦が、パートナーになってくれていた黄金という神様を助け、日本を大建て替え、つまりはいったんの滅亡に陥れようとしている荒脛巾神(あらはばきのかみ)を止めようとするエピソードの完結編。日本は救われるのか。良彦はフリーターから脱することができるのか。すべては物語の中に。


 近刊では、4月23日発売予定の大森藤ノ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか17』(GA文庫)が何かすごそう。サイトにある紹介が


〈 「ひれ伏しなさい」 これは少年が堕ち、美神が騙る、
 ──【眷族の偽典(ファミリア・ミィス)】──〉


 とだけになっている。ベルくんにいったい何が起こるのか? ドキドキして発売を待ちたい。


(文=タニグチリウイチ)


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