庵野秀明がアニメ化監督を務めた少女漫画 『彼氏彼女の事情』に感じる“エヴァみ”

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2021年04月17日 09:21  リアルサウンド

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少女漫画『カレカノ』に感じる“エヴァみ”

 月刊少女漫画雑誌「LaLa」で1996年から2005年まで連載された『彼氏彼女の事情』(津田雅美・著)。アニメ化されただけでなく、英語版、ドイツ語版に翻訳されるなど大きな旋風を巻き起こした。


 物語が完結してから15年以上が経過するが、最近になって『彼氏彼女の事情』の略称『カレカノ』のワードがSNSでも散見されるようになった。


関連:【画像】庵野秀明が監督したTVアニメ「彼氏彼女の事情」Blu‐ray BOX


■優等生同士のラブコメ?


 『カレカノ』の主人公のひとり、宮澤雪野は小さいころから人から賞賛されることが大好き。チヤホヤされたいがために努力を重ねて、文武両道、容姿端麗、品行方正な自分を作り上げた。そんな彼女が進学した高校で出会ったのが、もうひとりの主人公である有馬総一郎だ。全国模試1位、剣道部所属でインターハイでは個人の部優勝と文武両道の完璧な人間。やりたくて仕方がなかった高校総代を有馬が担ったことで、雪野は勝手に有馬をライバル視していく。


 そんなことを知らない有馬はやがて雪野に惹かれ、告白。もちろん雪野は断るがふとしたきっかけで自分の本性を有馬に知られてしまう。雪野の本性は努力家で超見栄っ張り。一方、有馬も腹黒い一面を見せ始め……。見せかけの自分を捨て、本当の自分になることを決めたふたりの世界は徐々に変わっていくことになる。


 コミカルでテンポの良い物語だが、有馬が自身と正面から向き合うことによってカラーが変わってゆく。


■作り上げられていた有馬の孤独


 完璧人間のように見える有馬だったが、彼は深い闇を抱えていた。


 幼児期には実の母親からひどい虐待を受けたトラウマを抱えている。自分を引き取ってくれた叔父夫婦は有馬を心から愛し育ててくれたが、実父は代々医者の家系である有馬家とは違う道を歩んでいたため、一族からは白い目で見られている。養父母のためにも自分が優秀でなくてはならない、と努力を続けていたのだ。


 雪野との出会いで解放されたかのように見えた有馬だったが、実母との再会によって、複雑な苦悩を抱えて堕ちていく。雪野を始めとした周りの人たちに支えられ、立ち直っていく有馬の自己との向き合い方は深い。繰り返される自問自答、さらけ出せない本音と自身の本性に苦しめられた。その重い時間のことを有馬は大人になってからも思い出す。


■カレカノとエヴァの共通点?


 アニメ化もされている『カレカノ』だが、実は手掛けたのは庵野秀明監督だ。アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』後に手がけた、初のアニメ作品ということで話題にもなった。『エヴァ』のスタッフも多く携わっており、心象表現なども「庵野的」カラーがそこここに見られる。


 『シン・ウルトラマン』に続き『シン・仮面ライダー』の制作が発表され、ファンの間では『シン・カレカノ』をやってほしい、というコメントが多く見られた。実は映像としてだけではなく、『エヴァ』と『カレカノ』には、他者に“認められる”自分、“母親”といったキーワードなど、共通点も感じられる。


 『エヴァ』ではシンジの母親であり、ゲンドウの妻であるユイの存在が物語のキーポイントだ。一方『カレカノ』では有馬の母親にも強いインパクトはあるが、何より雪野自身が母親になる。有馬が立ち直る過程で、雪野は有馬の子どもを身ごもる。愛していながらも雪野の傷つけることが目的で行った行為ゆえの妊娠だったために、有馬は悩むが、「絶対にこの子を幸せにしなければ」と悟る。


 “母親”となった雪野の存在は、有馬の心を救い、幸せに導いた。『エヴァ』もまた、「ユイ」の愛を知ることがキーワードだったとしたら……と思うが、これは少しこじつけが過ぎるだろうか。


(文=ふくだりょうこ)


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