新型コロナの感染が再拡大、まん延防止にいま知りたい疑問に豊田真由子が答える<後編>

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2021年04月17日 12:50  まいどなニュース

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写真豊田真由子
豊田真由子

各地で新型コロナの感染が再拡大し、大阪、兵庫、宮城、東京、京都、沖縄の一部地域に、「まん延防止等重点措置」が適用され、20日から愛知、埼玉、神奈川、千葉が加わることになりました。

【グラフ】チリ、米国はワクチン接種が進んでいるが感染が拡大している

ワクチン接種の状況は?

現状の感染拡大状況や、国民の生活への制限や募る不安を解消する有用な手立てがワクチンです。

新型コロナワクチンについて、国内では、先行する医療従事者(約480万人)と並行して、4月12日から高齢者(約3600万人)の接種が始まりました。日本国内の新型コロナワクチンの接種回数は、2021年4月13日時点で、医療従事者など174万3,439回(1回目接種114万2,444回、2回目接種60万995回)、高齢者2,742回となっています。

5月以降は供給量が増える見通し(4月613万人分、5月2150万人分、6月2252万人分(予定))で、高齢者の2回目の接種を6月末までに終了する予定とのことですが、現時点では全量を輸入に頼るしかないので、それ以降の一般の方への接種時期は確実なことは分からないというのが現状です。

日本には、ファイザー製7200万人分、アストラゼネカ製6000万人分、モデルナ製2500万人分が供給されることになっていますが、現時点で承認されているのはファイザー製のものだけで、他は申請が行われ現在審査中です。

ワクチンの接種方法などは各自治体の裁量に任されていますが、国からの供給がないことには、現場の自治体はどうにもできません。多少時間はかかるかもしれませんが、数か月の単位だと思われますので、争奪戦のように煽られることなく、お住まいの自治体から連絡が来たら、速やかに接種をしていただく、ということだと思います。

日本は他国に比してワクチン接種が遅れているのは事実です。日本で国産ワクチンができない理由は、以前よりご説明しているように、予防接種禍を巡る世論やメディアの動きとそれを受けた政策転換と民間メーカーの衰退という、然るべき歴史的経緯があります。

今後日本のワクチン政策をどうしていくのか、ということについては、改めて広く議論が必要だと思いますが、少なくとも現時点において、ワクチンについて新興感染症のリスクへの備えが全くできていなかったという現実は、その経緯も含め、きちんと受けとめ、次につなげていかないといけないと思います。

ワクチンを接種したらマスク無しでよいの?

ワクチンの接種が進んでいくことにより、感染拡大は着実に抑えられていきます。ワクチンは、接種した個人の発症や重症化を抑える(感染それ自体を防ぐかについては議論があります)とともに、接種した人の割合が増えていくことで、社会全体における感染拡大を抑制していきます。

上述したとおり、新型コロナワクチンについては、一部の変異株に対し有効性が低減しているという研究報告もありますが、例えば、mRNAワクチンは変異株に対応して迅速に改良することが可能とされており、いずれにしても、その時点でできることを随時やっていく、ということしかないと思います。

ここで注意すべきことは、ワクチンを接種したらなにもしなくてよい、ということにはすぐにはならない、ということです。イスラエルや英国などは、ワクチン接種が進み、感染者数が減少している(それでもまだ英国では、例えば、飲食店の室内での営業は認められていません。)一方で、チリや米国のように、ワクチン接種が進んでいる一方で、感染が再拡大している国もあり、接種の進捗が途上の段階で、感染対策に対して無防備になってしまうことの危険性が指摘されています。

感染減少・拡大の原因については、それぞれ様々な要因があり、検証が必要ではありますが、いずれにしても、ワクチンを接種しても、当面は、マスク着用・手指消毒、喚起・密を避けるといった感染防止対策が、求められます。

ワクチンの副反応は?

例えば海外では、アストラゼネカ社製のワクチン、ジョンソン&ジョンソン社製のワクチンで、血栓が生じる副反応が指摘されています。日本ではまだ承認・使用されていませんが、検証の結果を精査し、それによっては、接種対象年齢を考えるなどの、対応が求められると思います。

もちろん、実際に重篤な副反応で亡くなった方・苦しむ方とご家族にとっては、取り返しのつかないことであり、甚大な苦しみです。最大限公的な救済をするとともに、社会が理解を深めていくことも、とても大切です。

ただ、そのことと、社会全体におけるワクチンの効用を否定することは、分けて考える必要があります。一般的に、ワクチンを接種することで、一定程度、個人の感染を予防する・重症化を防ぐことができ、公衆衛生の観点からは、ワクチン接種により地域や国で多くの人が免疫を得ることで、感染拡大を抑えることができます。

ワクチンを接種しなかったことで、「接種していたならば失われなかった命」が失われ、「接種していたならば救えたはずの重症化や後遺症」が生じます。

もちろん、ワクチンを接種するかは、個人の選択・自由に委ねられることでありますが、正確なエビデンスに基づいて判断をする、ということが大切だと思います。

医療ひっ迫の原因は?

感染が急拡大し、最も懸念されていることのひとつは、「医療のひっ迫」です。昨年春からの現場の医療従事者の方の奮闘と疲弊は、相当なものです。

重症者用病床が埋まり、受け入れができない事態も懸念されます。ハコ(病床)だけでなく、治療を行うヒト(医療従事者)、高度な治療を可能にするモノ(ECMO等)も併せて必要になります。

なんであれ、生じた問題を解決するためには、問題の原因を分析して特定し、その原因を取り除いていく、ということが必要です。そのためには、日本のコロナ病床に関する状況を客観化・相対化してみることが有用ではないかと思います。

人口当たりの感染者数が相対的にかなり少ない状況で、人口当たりの病床数世界一である日本において、「医療ひっ迫」が起こってしまっているのであれば、それはやはり「なにかがおかしい」ということになると思います。

2021年1月下旬のデータで、全病床に占めるコロナ病床の割合は、日本は0.87%と、英国の22.5%や米国の11.2%に比べ、10分の1以下です。

日本で、新型コロナ患者を受け入れている病院を、設置者別に見ると、公立病院で約7割、民間病院では約3割です(2021年1月10日時点。厚生労働省)。

医療ひっ迫が懸念される大阪府ですが、データで見ると、以下のようになっています。

吉村知事によると(2021年1月19日)、大阪府でコロナ患者を受け入れている民間の医療機関は、救急受け入れと内科・呼吸器内科医師のいる病院に限ってみた場合でも10パーセント、病床は0.6%とのことです。

大阪府の病院の病床は、合計で104,566(一般病床:65,301、精神病床:18,165、療養病床:20,632、結核・感染症病床:370)となっています(日本医師会)が、現在、新型コロナ用に確保できているのは、最大1990床(軽症・中等症用:1766床、重症者用:確保数は224床)とされています。

ちなみに、大阪府では、2月の緊急事態宣言解除後に、確保していた病床を減らすように指示がなされたそうで、ステージに合わせて病床を増減させるという理屈は理解しますが、解除したら感染が再拡大することは当然想定されたことであり、また、病床は一度減らしたら急には増やせないものなので、バッファーを多めに取っておくべきだったろうと思います。

しかし、医療ひっ迫問題の根幹は、もっと別のところにあります。そもそも日本は、新型コロナ用に確保された病床数が少ないので、分母が少ないために、分子が増えたら、一挙に病床がひっ迫してしまうということになります。

医療ひっ迫はどうしたら解決するのか?

コロナ病床を劇的に増やした他国の事例を見ると、日本との医療制度や、国・自治体の病院への権限の強さの違いなども実感するわけですが、国内の他地域の事例も参考にすると、地域の医療機関が密に連携し、病院間の役割分担をして柔軟に病床を確保していくことが有用と考えられ、ポイントとなる「地域の医療機関の連携」と「リーダーシップ、核となる調整役の存在」が浮かび上がります。

コロナ病床が増えない理由の一つは、上述のように、民間病院での受け入れの少なさがありますが、日本は民間の中小病院が多く、実際、ゾーニング(コロナ患者とそれ以外の患者の区域を分ける)が難しい、人工呼吸器やECMOなどの設備や感染症専門医がいないといったことから、コロナ患者の受け入れができない場合もあります。

感染・クラスター発生のリスクをできるだけ拡散しないようにすること、他の疾病の治療をすることも必要であること等も踏まえれば、多くの病院で少しずつ受け入れるよりも、限られた病院でまとまった数の患者を受け入れる方が、効率的・効果的です。空施設利用や新設工事でコロナ専門の病院・病棟を作る、他の疾病の患者やコロナの回復患者を他の病院で受け入れるなどにより、集約を図ることが有用です。

具体的に、日本や世界の対応事例を見てみます。

埼玉の羽生市では、民間病院が駐車場に、80床のプレハブのコロナ病床を新設しました。

長野県の松本医療圏では、重症度別の受け入れ先やコロナ以外の患者を担当する病院を明確にし、地域全体で通常診療への影響を少なくしました。2020年4月に市が、市立病院のコロナ病床を大幅に増やす方針を決定し、市立病院が一般病床を転換し最大37床を確保、市立病院では対応が困難な重症患者は、国立病院や大学病院などが対応し、民間病院は透析中の患者や中等症患者を受け入れるなどの分担をしています。

東京都墨田区は、地域の医療機関に対して、国の退院基準を満たした患者からの感染の可能性は極めて低いことを周知した上で、回復患者の転院を受け入れる医療機関には1000万円の補助金を支払うことにしました。そして、区から患者の転院を依頼された場合は、原則すべてを受け入れる、という区独自のルールで運用を始めました。

英国では、2021年3月からのロックダウン時に、短期間で国内の医療体制を新型コロナ感染症用にシフトしました。新型コロナ用の病床・ICUの増床、さらに「ナイチンゲール病院」という専用仮設病院が全国に設けられました。(ナイチンゲール病院はあまり使用されなかったということですが・・) 英国で、医療体制を短期間で大きく変えられたのは、国営の医療提供システム(NHS)の下、病院の9割以上が公的病院で国の管轄下にあり、トップダウンで動かせたことが大きいと言われています。

2020年3月、米国ニューヨーク州のクオモ知事は、州内の病院に病床増床の命令を発するとともに、大型展示場に1000床など、州内8か所に臨時病院を設置、米海軍の病院船の使用も政府に要請し、3週間で9万床を確保したとされています。

人口当たり病床数世界一で、感染者数が相対的に少ない日本で、現実に医療ひっ迫が起こっていて、救われるはずの命が救われないのだとすれば、やはりその状況は、関係者一丸となって、解決せねばなりませんし、解決できるはずなのです。

<おわりに>
中国・武漢での最初の感染確認から1年4か月、当初は未知であった新型コロナウイルス感染症についても、様々なことが分かってきました。

人類の歴史において、感染症のパンデミックは繰り返されてきました。過去のパンデックは、感染の仕組みについての知識向上や公衆衛生の啓蒙活動、新しい治療法やワクチンの開発などにより、終息・収束してきました。

新型コロナについても、今後、ワクチンや治療薬が開発・普及していくこと等によって、着実に感染拡大は抑えられていきます。現時点では引き続き、日常生活において、マスク着用・手指消毒、行動を抑えるといった感染防止策を取ることが、個人と社会を守ることにつながります。

明けない夜はない。
がんばってまいりましょう。

◆豊田 真由子 1974年生まれ、千葉県船橋市出身。東京大学法学部を卒業後、厚生労働省に入省。ハーバード大学大学院へ国費留学、理学修士号(公衆衛生学)を取得。 医療、介護、福祉、保育、戦没者援護等、幅広い政策立案を担当し、金融庁にも出向。2009年、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官として、新型インフルエンザパンデミックにWHOとともに対処した。衆議院議員2期、文部科学大臣政務官、オリンピック・パラリンピック大臣政務官などを務めた。

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  • まん延を抑え込み、医療関係者を応援したいなら、基本的な感染予防を今一度徹底することだよ。しっかりマスクをし、頻繁に手を洗い、飛沫を避けること、だ。
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