中学で統合失調症 実名告白「自分なりに病気と闘っている葛藤をわかって」

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2021年04月18日 10:00  AERA dot.

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写真※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)
 統合失調症は脳の機能がうまく働かなくなり、考えや感情がまとまりにくくなる病気です。およそ100人に1人がかかり、10代後半から30代前半の若い世代に発症しやすいという特徴があります。

 榛澤裕一さん(32)は、中学のときに統合失調症を発症して入退院を繰り返しました。現在は、ほぼ症状が見られない安定した状態になり、東邦大学医療センター大森病院メンタルヘルスセンターのデイケア、イルボスコで、若い世代のデイケアを運営する仕事をしています。発症当時の様子やその後の経過を語ってもらった前編に続き、後編では病気を受け入れていった心境や精神疾患に悩む若者やそのご家族に伝えたいことを語ってもらいました。

(匿名は精神疾患に対する偏見・差別を助長しかねないとの考えのもと、本人の承諾を得て実名で紹介します)

*  *  *
――どのあたりから快方に向かわれたのでしょうか?

 高校を卒業しても具合が悪くなることが多くて入退院の繰り返しだったんですけれども、ようやく統合失調症の診断がつき、ある薬を使って治療していこうということになって少しずつ症状が改善していきました。その流れで25歳くらいから若者向けのデイケア(病気を抱えながら生活していくための対処法や工夫を学ぶ場)に通うようになって、本格的によくなってきたという実感があります。

 デイケアは軽症の患者が通常の生活に戻っていくためのステップなのですが、以前の僕は病気が慢性化していて、その対象ですらなかった。デイケアに通えるくらい回復したということですね。

 デイケアで病気について学ぶようになって、「なぜこのような症状が出るのか」をきちんと理解することができました。それまでは客観的に自分を見ることはできなかったんですよね。

 また、病気を再燃させないための知恵を身につけてから、ごく自然に無理のない生活を心がけるようになりました。再燃の兆候やその対処法も学んでいるので、ちょっとおかしいなというときに早めに気づくことができます。上手に病気と付き合えるようになり、自信もつきました。

 デイケアで同病の仲間と出会えたことも、宝物です。つらかった経験を話してわかってもらえたときは、スッと気持ちが楽になった。結果論ですが、精神科の主治医だとかデイケアの仲間とか、この病気になったからこそ出会えた人もたくさんいます。前向きに考えられるようになったことも、デイケアのおかげかもしれません。

――病気を徐々に受け入れていったのでしょうか?

 統合失調症という病名がはっきりわかったのは20歳過ぎでしたが、それまで病名はあまり気にしたことはなくて、むしろ症状が気になりました。高校の頃だったか、精神疾患の本を見ると「こういう症状が出る場合は統合失調症が疑われる」というようなことが書いてあって、その通りのことが自分に起きているんですよね。「ああ自分の病気はこれだな」と病名を推測できました。あとから病名がついてきた感じでしょうか。

 病名がある程度推測できたことで、半分はスッキリしました。不可解な症状が病気のせいだとわかれば、納得できますからね。だけど「自分は統合失調症なんだ」と認めるのはきつくて、現実を受け止めるまでにはかなりの時間がかかりました。

――現在はどのような生活を送っていますか?

「寛解」といって、ほぼ症状が見られない安定した状態になり、東邦大学医療センター大森病院メンタルヘルスセンターのデイケア、イルボスコで、若い世代のデイケアを運営する仕事をしています。再発する可能性もありますから、体調を維持するため、夜更かしをしない、お酒は飲まない。羽目を外すような遊び方はしません。気をつけることが当たり前の生活になりました。仕事をして終わったら一休みして家に帰ってご飯を食べてお風呂に入って寝て……つまらない生活だと思われるかもしれませんが、そんなありきたりの毎日が今はすごく楽しい。働けること、そして社会とかかわりがあることがうれしいんですよね。昔はそういうことすらあきらめていましたから。

 自分で収入を得られるようになったことで、将来のために貯金をしようといった地道な目標もできました。

――ご自身の経験を踏まえて、精神疾患に悩む若者やそのご家族にどのようなことを伝えたいですか?

 精神疾患にかかると「とにかく早く治したい」と焦ってしまいがちですが、治療が長期間に及ぶことも少なくありません。長い闘いになることは覚悟しておいたほうがいい。焦らないこと、そして腰を据えて「きっとよくなる」「必ず元気になる」と信じて、あきらめずに治療に取り組むことが大切です。

 本人は自分なりに病気と闘っているんですよね。何とかしなければならないと思っているんだけれど、自分一人の力ではどうにもできなくて、それが反抗的な態度になってしまうんです。だから家族など近くにいる人は、本人の葛藤をわかってあげてほしいと思います。

 また、家族は本人の将来を心配するあまり「中学や高校は絶対行かなきゃダメ」とか、「大学に進学するのは当たり前」などと押し付けてしまいがちです。でも精神疾患によって日常生活にはリスクが生じているときに、そんなことを言われたら、さらに負担がかかってしまうことになる。

 近くにいるからこそ本人の話にじっくり耳を傾けて、どういう形で社会とつながっていくのがよいのかを一緒に考えてほしい。形にこだわることなく、無理のない方法を選んでほしいと思います。あきらめなければならないこともあるけど、いろいろな道がありますから。

 また僕自身はかなりこじらせてしまったのですが、早く症状に気づいて適切な治療を始めれば、回復も早い。でも具合が悪くても、なかなか精神疾患と結びつけることができません。特に中学生など若い世代では、気づけないんですよね。

 本人はもちろん、親でも先生でも友だちでも誰かに精神疾患の知識があれば、ちょっとした変化でも気づき、受診につなげることができるのではないでしょうか。一人でも多くの人に精神疾患について知ってほしいと思っています。

前編(中学生で統合失調症を発症「計算ができない」「暴言を吐く」「死にたい」今振り返る当時の僕)はこちら
https://dot.asahi.com/dot/2021041300073.html

(文・熊谷わこ)

【おすすめ記事】中学生で統合失調症を発症「計算ができない」「暴言を吐く」「死にたい」今振り返る当時の僕


このニュースに関するつぶやき

  • 日本の統合失調症患者は飲む薬がやたら多い印象。それでも知り合いに聞くに「夜中に急に具合が悪くなる」とか「何故か軍歌をヘビロテ」とか聞いた。日本の精神医療が悪いんじゃないか?
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