『黒子のバスケ』黒子テツヤはなぜ影が薄いのに魅力的なのか? 戦い方と性格のギャップを考察

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2021年04月19日 08:01  リアルサウンド

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 2009年から2014年まで連載され、その超次元的な描写でバスケ漫画の新境地を開いた『黒子のバスケ』(集英社)。累計発行部数は3100万部を超え、男女問わず絶大な人気を誇った本作だが、作品の主人公は体から覇気の感じられない平凡な少年であった。本記事ではそんな『黒子のバスケ』の主人公・黒子テツヤの魅力を改めて紹介していく。


 部員数は3桁を超え、全中3連覇を達成した帝光中学校バスケットボール部。そして帝光バスケ部に、10年に1人の天才が5人同時に現れた世代を人は「キセキの世代」と呼んだ。ただキセキの世代には、奇妙な噂があった。それは天才である5人が一目置く、誰も知らず試合記録にも残らない「幻の6人目(シックスマン)」がいるというものだった。


 本作の主人公にして、元帝光中バスケ部「幻の6人目」である黒子テツヤ。身長、体重、運動能力と全てが平均以下の彼が、様々な手法で得点に絡む活躍ができた理由は「影の薄さ」だった。影の薄さを武器に進学先である誠凛高校バスケ部の快進撃を演じる立役者となった黒子の、1番の魅力はその戦い方と性格のギャップにある。


 黒子の戦い方は、持ち前の影の薄さを活用した「ミスディレクション」を利用したものだ。ミスディレクションとは相手の注意を別の対象に誘導する技術のことで、黒子はこの技術を応用しながらマークを外しパスの中継役を行なっていた。


 そんな地味さが取り柄とも言える役割の黒子だが、原作第1話ではいかにも凶暴そうな火神に飄々と挑み、小さい体で日本一になるとまで言い放って見せた。またその後はキセキの世代の1人、黄瀬涼太に面と向かって倒すと宣言したりと、顔に似合わず大胆不敵な行動が目立つ。そして普段から覇気を感じない黒子だが、作中ではその雰囲気に反して闘志を燃やす姿も随所に描かれている。


 ウィンターカップ出場が懸かった運命の一戦、誠凛高校の対戦相手は因縁の霧崎第一高校だった。去年巻き起こった霧崎第一のラフプレーによる木吉の怪我を思い返し、感情が空回りしてしまう誠凛高校の2年生メンバー。しかし落ち着きを取り戻し本来の実力を発揮することで、誠凛高校は遂に逆転に成功する。


 しかしそんな状況でも霧崎第一のラフプレーは止まらない。黒子がいなければと考えた霧崎第一の主将・花宮は、黒子に怪我を負わせようと肘を振り下ろす。間一髪で避けられ悔しそうにするも、次の瞬間花宮は不敵な笑みを浮かべていた。


 実は花宮の悔しがる姿は演技。そのままディアドロップを決め再度逆転した花宮は、黒子に「お前らの夢はゲームオーバー」と吐き捨てる。それを聞いた黒子はふざけるなと呟き、「ボクらの、先輩たちの、みんなの夢のジャマをするな!!」と魂を込め、運命のイグナイトパスを放った。


 強くはなくても漢気は魅せる。そんな黒子が持つギャップに釘付けになった読者も少なくないだろう。


 また『黒子のバスケ』では、様々なキャラクターが2人1組で描かれている。黒子も例外ではなく、彼には光となる相棒がいた。名前は火神大我。キセキの世代と同等の天賦の才を持つ、黒子と同じ誠凛高校の1年生だ。この火神との相性の良さが、黒子の魅力をさらに引き出している。


 ギラギラと生気を滾らせ才能溢れる火神と、おっとりとした雰囲気を醸し出す黒子は一見噛み合わないようにも思えるが、2人にはある共通点があった。それが「仲間と共に勝ち上がることへの熱意」だ。


 ことあるごとに陰と陽、光と影として対極に描かれる2人だが、この1点においてのみ連載当初から意気投合していた。この熱血漢とも言えるほどの熱意が、2人を同じく頂へと向かわせる名コンビに仕立て上げているのである。


 そして火神の当たり構わず威圧し萎縮させる雰囲気に、黒子の物怖じしない図太さは最適だ。黒子はその170センチにも満たない体格からは想像も付かないほど物怖じしない性格をしている。ミニゲーム中や試合中にヒートアップした火神をクールダウンさせるのは、いつも黒子の役目だった。先輩相手に勝てないと呟く同級生の胸ぐらを掴む火神に、「落ち着いてください」と膝カックンをお見舞いする黒子。火神だけを見ればシリアスで怖いシーンも、黒子が間に入りコミカルに変えてしまう。誠凛高校の光と影。チームを支えた2人は、キャラクターとしても相性最高のコンビだった。


 平凡ながらも、主人公として強烈なキャラクター達がひしめく本作をまとめあげた黒子テツヤ。彼にはその雰囲気とはかけ離れた、アツい魂が宿っていた。そして相棒であるツンツンギラギラした巨体を誇る火神と、丸い雰囲気で控えめな体躯をした黒子は、様々な面において相性の良い凸凹コンビであった。体はヒョロヒョロでも、オドオドしていない。黒子には相棒といるからこそ輝く、唯一無二の魅力が無数に隠されていたのだ。


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