政府有識者会議で女性宮家・女系天皇の議論は進むのか? 金子宗徳・亜細亜大学講師に聞く

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2021年04月19日 10:41  しらべぇ

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菅義偉内閣は先月、皇位の安定的継承を議論する有識者会議を設置した。安倍晋三前首相が男系維持を思想信条としていたため、女性天皇・女系天皇・女性宮家の創設という議論は一向に進まなかった。

振り返れば、安倍政権は、現・上皇陛下の生前退位についてすら後ろ向きだった。はたして、菅内閣の下で議論は深化・進化するのか。月刊『国体文化』編集長・里見日本文化研究所所長で、皇室に詳しい亜細亜大学講師の金子宗徳氏に、話を聞いた。

■現状は皇室の危機

—政府が皇位の安定的継承のために有識者会議を設置した。これをどう評価するか。また、何を期待するか。

金子:現在の皇室典範では、「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」(第1条)と定められています。つまり、皇室の血筋を男系すなわち父方で受け継いでいる皇族のうち男子のみが天皇に即位できるのです。

男性の皇族が多ければ問題になりませんが、現在、この要件を満たし、天皇の地位を継承し得るのは、今上陛下の弟である秋篠宮文仁親王殿下、文仁親王殿下の御子で今上陛下の甥にあたる悠仁親王殿下、上皇陛下の弟で天皇陛下の叔父にあたる常陸宮正仁親王殿下のみです。

このうち天皇陛下の次世代にあたる方は悠仁親王のみで、考えたくありませんが、悠仁親王殿下に万一のことがあると、将来において天皇不在という事態が生じます。

そうなれば、日本国憲法に基づいて象徴たる天皇が国会を召集し、首相を任命するということができなくなるだけでなく、日本の歴史的・文化的伝統が大きく損なわれ、日本社会に深刻な悪影響をもたらすことでしょう。

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■菅首相はリアリスト

金子氏は次のような問題解決策を提示する。

金子:この問題を解決するためには、(1)皇位継承資格を男系男子以外の皇族に拡大する、(2)男系男子の血統を受け継ぎながら諸事情のため皇族でない方を皇族として処遇する、という方向性が考えられます。

かつて、小泉内閣や野田内閣は(1)の方向性を模索したものの、「前例」がないという保守層の反対を押し切ってまで強行する覚悟はなく、その後、保守層の支持を受ける安倍内閣は(1)の方向性を否定したものの、(2)にもクリアすべき課題が多いために解決が先送りされてきました。

この間に上皇陛下の御意向を受ける形で皇室典範特例法が国会の可決を経て成立しましたが、その附帯決議において、特例法の施行、即ち皇位継承に関する一連の儀式が終了した後、内閣が「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について」検討を行い、その結果を国会に報告するよう求めています。

昨年11月の立皇嗣の礼を以て皇位継承に関する一連の儀式が終わった以上、菅内閣としては、このまま問題解決に向けた努力をしないでいるわけにはいきません。解決に向けた努力を始めたという点については、評価したいと思います。

私の見るところ、菅首相には何が何でも男系男子による継承という「伝統」を守らねばならぬという強い拘りはないようです。また、官房長官を長く務める中で、(2)の対象となる方々、具体的には敗戦後に皇籍離脱した旧皇族の末裔たちの実情も把握していると思われます。

そうした首相の意向を受けて立ち上げられた有識者会議ですから、現実に即した議論が進められると期待しています。

■専門家でない有識者に期待する理由

(geargodz/iStock/Thinkstock/写真はイメージです)

—有識者6人のメンツを見てどんな感想を持たれたか?

金子:有識者6人の内訳をみると、男女が3人ずつ。人口比からすれば当然の判断でしょう。

年代で見ると、経済界代表であるJR東日本会長の富田哲郎氏が69歳、次いで座長に就任した労働経済学者で慶應大学学事顧問の清家篤氏が66歳、元ニュースキャスターで国際政治学者の宮崎緑女史が63歳、と60代が3名。

残る3名は、国際政治学者で慶応大学法学部教授の細谷雄一氏が49歳、女優でエッセイストの中江有里女史が47歳、行政法学者で上智大学教授の大橋真由美女史が46歳、と全員が40代。

「課題の重さに対して、失礼ながら、いささか“軽量級”」という指摘もありますが、菅内閣はあえて「有識者らしい有識者」を外したのではないかと個人的には思います。

というのも、あまりに専門的な議論が展開された場合、その内容を国民の大半が理解できず、結果として皇室が国民から遊離した存在になりかねません。

さらに言えば、「皇室制度の専門家」として知られる人々を集めると、それぞれが自説を展開するだけで結論に至らない可能性すらあります。専門家の知見は、ヒアリングを通じて結論に反映させることが可能です。

菅内閣が有識者会議に期待しているのは、専門家同士による高度な議論の結果を国民に受け入れさせることではなく、平均的な知性さえあれば理解できる水準で展開される議論の過程を国民に見せることではないでしょうか。

■どうなる? 女性宮家・女系天皇

—有識者会議によって、女性宮家の創設や女性天皇・女系天皇の容認は実現するでしょうか。

金子:この問題に回答する前提として、皇位継承のルールを最終的に御裁可されるのは当代の天皇陛下であるべきということです。

天皇は「国政に関する権能を有しない」と日本国憲法にありますが、天皇の地位に関わることを当事者であられる今上陛下の御意向を踏まえずに決めることは社会的通念に照らして間違っています。

内閣が「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」に関する意見を国会に提出する時点で、今上陛下の御内諾を得ることは必要不可欠でしょう。

この有識者会議は内閣が意見を集約する過程で開かれているもので、この会議が女性宮家や女性天皇・女系天皇の可否を決めるわけではありません。

平均的な知性さえあれば理解できる水準で議論が展開されるという私の予想が正しいなら、女性宮家や女性天皇・女系天皇に肯定的な世論調査の結果や女性の活躍を後押しする風潮に後押しされる形で、女性宮家の創設や女性天皇・女系天皇の容認という答申が出される可能性もあり得るとは思います。

だからと言って、その方向で物事が進むかは何とも言えません。と言うのも、その答申を受けて最終的な方向性を定めるのは内閣だからです。

その上、本年10月までに行われる衆議院選挙において自民党が敗北したならば菅内閣は総辞職することとなるでしょうが、そうして新たに成立する内閣が前内閣の定めた方向性に拘束される必要性はないのです。現に、小泉内閣や野田内閣が設置した有識者会議の答申を安倍内閣は踏襲していません。

■女系天皇でも国体は破壊されない

金子氏は右翼の論客であるが、女性宮家・女系天皇について先駆的な提言をする。

金子:なお、私個人としては、女性皇族が御結婚後も皇室に止まって女性宮家を創設して場合によっては天皇に御即位されても、ひいては、女系すなわち母方でのみ皇室に繋がる女系天皇容認が即位されても、皇室と国民との一体性、難しい言葉で言うと「国体」が破壊されることはないと思っています。

ただ気になるのは、夫婦別氏(別姓)制度との関係です。現在の制度では、民間の女性が皇族男子と御婚姻されると、その女性は皇族の一員となるために氏を失います。

それに倣えば、女性宮家が創設された後、民間の男性が皇族女子と御婚姻されると、その男性は氏を失うわけです。それゆえ、中国で何度も起こった「易姓革命」にはあたらず、皇室の血統は断絶しないと考えられるわけです。

けれども、たとえ選択式であるとしても夫婦別氏(別姓)制度を採用したら、将来的に、皇族の男性(女性)と民間の女性(男性)との姓・氏が異なるという事態が生じかねません。

そうなったならば、両者の間に生まれた御子は姓・氏を有するのでしょうか、それとも有さないのでしょうか。また、その御子が天皇となられた場合、それは「易姓革命」にならないのでしょうか。

こういう新たな問題が生じかねません。ですから、選択式夫婦別氏(別姓)制度を導入すべきでない、と私は思っています。

■旧宮家末裔の皇族復帰は難しい

—旧宮家末裔の皇族復帰へのお考えを聞かせてください

金子:いわゆる旧宮家は、室町時代に現在の皇室と別れた伏見宮の流れを汲みます。江戸時代に後桃園天皇が皇子を遺すことなく崩御された際、伏見宮邦頼親王の第一皇子が後継者の候補とされるなど、本家筋の血統が絶えた時には皇位を継承することが期待されていました。

それゆえ、明治天皇は皇女と伏見宮系の王子との婚姻を積極的に進め、11宮家が成立したのですが、大東亜戦争に敗れた後、その全ては占領軍の強圧により皇籍離脱を余儀なくされ、国民とされました。

こうした経緯を考えると、当代の天皇陛下の御了解が得られたならば、旧宮家末裔が皇族と認められ、ひいては天皇に即位される可能性はあり得ると思います。

とは言え、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」という日本国憲法の規定です。

そうした歴史的経緯はあるにせよ、ひとたび国民となった以上、その末裔に皇族としての地位を与えられる(そもそも、皇族であったこともない方が「復帰」するというのは不正確)というのは、「社会的身分又は門地」による差別に当たるという懸念を払拭できません。

旧皇族末裔に皇籍を附与しようとするならば、この懸念を払拭し得る憲法解釈を内閣法制局が構築せねばなりませんが、難しいように思われます。

■小室圭さんに違和感

—いわゆる小室圭さん問題がずっと週刊誌で報道されているが、どう見るか?

金子:御婚約会見がなされた時点から、小室氏の「軽さ」に若干の違和感があったものの、眞子内親王殿下が選ばれた方だから素直に祝福申上げようと思っていました。

その後、母上の金銭問題や当人の女性関係を巡る週刊誌報道がなされるようになったことは周知のとおりです。もちろん、その真偽は定かでありません。

もし、事実であれば問題の収拾を図るべきでしょうし、誤りであるならば反論すればよいにもかかわらず、小室氏は何も対応しませんでした。結果として、秋篠宮殿下、ひいては天皇陛下に御迷惑をお掛けしているわけで、そのような不誠実さに強い怒りを抱いています。

■女性皇族に限らないテーマ

—眞子内親王と小室圭さんの結婚が皇統の議論にどのような影響を与えると思うか

金子:現在の状況は「やんごとなき皇女を不埒な男が誑かした」という構図に見えるわけで、男系男子による継承を変えたくない側には「女系天皇を認めると、外国人男性が女性皇族を籠絡して皇室が乗っ取られる」と煽り立てる論者もいます。

けれども、これは男性皇族においても同様のことが言えます。男性皇族が外国人女性に籠絡されても問題はないのでしょうか。問題の本質は、現代社会において皇族の御結婚はいかにあるべきかということです。

皇族どうしの結婚が想定し難い今日、皇族は民間から然るべき異性を配偶者として迎え入れねばなりません。当事者の自由を尊重しつつ如何にして皇室の権威を守るか、最終的には皇族御自身のご自覚に期待申上げるよりほかになく、じつに難しい問題です。

■菅政権は国民が理解できるレベルで議論主導を

—最後に、皇位の安定的継承について、菅内閣に求めることを伺えますか?

金子:繰り返しになりますが、菅内閣には、現実に即し平均的な知性さえあれば理解できる水準で展開される議論を主導してもらいたいです。

皇室を巡る問題においては、老大家が上から目線で語りがちですけれども、それでは、国民とりわけ若い世代の共感を得ることはできないでしょう。

皇室とはいかなる御存在であるのか、これからの皇室はいかにあるべきか、国民全体が考える機会にしてもらいたいと思います。

・合わせて読みたい→天皇皇后両陛下の新年ビデオメッセージ 全文書き起こし

(取材・文/しらべぇ編集部・及川健二

このニュースに関するつぶやき

  • ‥仮称‥眞小室の宮家だけは‥不吉におじゃるぞよ‥(笑)
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  • 女系は反対です。小室さんと眞子さまの宮宅創設は反対です。
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