なぜ子どもの勉強にiPadが必要なのか?東大理IIIに3男1女合格佐藤ママ「便利さは諸刃の剣」

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2021年04月19日 16:15  AERA dot.

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写真佐藤ママこと佐藤亮子さん
佐藤ママこと佐藤亮子さん
 公立の小学校でも児童に「iPad」などのタブレット端末が配られるようになりました。学習ツールとして便利な反面、自由にネットにつなげられるため、親からは戸惑いの声も聞かれます。三男一女4人の子ども全員が東京大学理科III類に合格した佐藤ママこと佐藤亮子さんに、タブレット端末との賢い付き合い方を聞きました。

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―最近の子育ての悩みについておたずねします。今は「子どもがゲームに夢中で勉強しない」というのが共通の悩みで、「スマホ中毒」「スマホ依存」を心配する親御さんが多い印象です。佐藤さんに寄せられる子育ての相談で、新たに増えているテーマはなんでしょうか。

佐藤亮子さん(以下、佐藤ママ):iPadなどタブレット端末との付き合い方の悩みが多いですね。コロナ禍で学校や塾がオンライン学習をせざる得なくなったこともあったので、急速にオンラインの環境が整備されました。従来からそのような傾向はありましたが、公立の学校でもiPadをはじめとするタブレット端末が一人ひとりに配布され、それで授業をし、宿題もタブレットに出され、子どもはタブレットに答えを書き込んで先生に送るというような状況になっています。教科書もタブレットにしようという動きもありますね。

 子どもは自分専用のタブレットを所有することになって、いわば学校のお墨付きで自由に使えるので親としてはそこのところが非常に心配なのです。こうしたツールを勉強のために利用するとなると親も使用を認めざるを得なくなっているので、使い方を指導するのがかなり難しいようです。必然的に子どもがインターネットに触れる時間も格段に増えてきているし、ネットに流れている全ての情報に触れることができてしまうというのも深刻な問題となっています。

――具体的にどんな問題や課題があるのでしょうか。

佐藤ママ:タブレットを使いながら、子どもが自ら学習・遊び・息抜きの線引きをするのは非常に難しいのです。子どもから「宿題をやるのに必要だから」と言われると、親はなかなか「使ってはダメ」と言えません。

 そもそも、人間はすぐにラクな方に流れますから、難しい問題に出会って考えるのが面倒になったら、ちょっと休憩と称して勉強とは関係ないサイトを息抜きとして見てしまうのは容易に想像できます。しかし、5分見るつもりが気づいたら1時間も経過していた、なんてことは大人でもよくあること。YouTubeなどの奥には AIが隠れていて子どもの趣味や好みを判断して、次々と興味がありそうな動画をあげてきますから、その魔の手から逃れるのは至難の技です。ネット上のコンテンツやそれを提示する仕組みはうまくできていて、それに絡めとられると大事な自分の人生をネットに捧げることになりますね。

 YouTubeもためになるものもありますが、なんといっても他人が興味を持った内容を動画にしているわけで、いわば人の人生をかいま見ているだけなのです。大人は娯楽や趣味として見ることができますが、子どもはこれから自分の人生を作っていかなければならず、そのために長時間を費やすということがいかに愚かなことかはわかるでしょう。

 やはり、子どもは18歳までは非常に未熟な存在だということを大人が認識することです。未熟なのだから、全力で守らないと。やはり、今の時代は親がネットの使い方に関してはよく考えないといけないと思います。

 便利なツールですが、なんでも「便利さ」は「諸刃の剣」ということは間違いなく真理なので安易に子どもに与えることは危険です。

――確かに、線引きは難しいですね。学校で習う勉強で子どもがつまずきやすい箇所や理解が難しい内容を、わかりやすく解説した学習系・勉強系のYouTubeも人気です。学習に役立つコンテンツもあります。

佐藤ママ:私もいくつか見ましたが、非常にわかりやすく、子どもの理解の助けになると思いました。そうしたコンテンツを子どもが利用すること自体は否定しませんが、その動画を見るだけでは本物の実力はつきません。授業ではわからなかった問題を解決するのに分かりやすいヒントはもらえます。でも気をつけないといけないのは、そのわかりやすい解説を見て、子どもがわかったつもりになってしまうことです。見ただけでは理解したことにはならず、やはり自分で何も書いていない紙に鉛筆で解けなければダメなのです。

 人から解き方を習うとわかった気になりますが、実はそれでは不十分なのです。それは、家庭教師をつけてもテストの点数がよくならない、塾や予備校の講義をたくさん受講しても思ったように伸びないというケースと同じ“落とし穴”にはまっているのだと思います。

――“落とし穴”をもう少し、具体的に教えてください。

佐藤ママ:人から説明されると自分でも解けるような気がしてくるのです。しかし、自分でやってみると解けない。「見るだけ、聞くだけ」と「自分がわかる」というのは大違いということです。わかった気になってしまってもう自分で解くことはしない、ということはしっかり”落とし穴”に落ちた状態です。やはり、自らの手で苦労して考えて解かないとものにはならないのです。面倒だけどその後に味わう喜びは大きく、その真の喜びを子どもたちには味わってほしいと思います。

 学習系YouTubeなどのネットの解説動画はわかりやすくできており、繰り返して何度でも見ることができますから、どうせなら内容を暗記してしまうくらい徹底的に見たらいいのです。そのくらいの覚悟がないと結局はひまつぶしにしかなりません。子どもは、「わかったふり」が得意ですので、親は子どもに説明してもらうとかチェックすることも有効です。

――現代人はすぐに答えを求めがちです。また、すぐに「答え」がわかることも、ネットの利点でもあります。

佐藤ママ:大人は、すぐにネットを利用して答えを探したらいいと思いますよ。そこそこものがわかっている大人は、答えを取捨選択できますから。しかし、子どもは今からたくさんのものを学ばないといけないので、なんでも安易に結論のみをネットから探してわかった気になっては成長しません。

 だから、「子どもとネット」との付き合い方は大人がよく考えなければならない重要問題ということになります。0歳から18歳まで心身ともに成長し続ける子どもを、親はあらゆることで守るという姿勢を貫くべきでしょう。

 そして、なんといっても視力の問題があります。子どもの目は成長過程なのでタブレットの画面を見続けることが害になるのは間違いありません。目は一生使うものですから、子どもの時には細心の注意が必要です。

 ネットのない時代は、ああでもない、こうでもないと子どもは自分の頭で考えたものです。解き方を塾の先生に質問するのでも、翌日になったり、生徒が質問するための列に並んだりしなければならないので、それまで何がわからないのか自分の中である程度整理していました。ネットの解説動画に全面的に頼るのは、自分で考えるチャンスが奪われることでもあります。

――何かを理解するにはトライアンドエラーが大事なのですね。とはいえ、現実問題として、子どもにタブレット端末が与えられた状況です。どうやってつきあっていくのがいいのでしょうか。

佐藤ママ:学校がタブレットを配布したり、授業や宿題に使ったりするのは、私は困ったものだと心配しています。子どもたちが大人になって仕事でネットを使うことになったときには、 IT機器は今よりも想像以上に進化しているでしょう。それを考えると、今の時代の機器に慣れることは大して意味のないことではないでしょうか。

 それより、子どもの中身をアナログの学習法を軸に育て、そこにネットの利点はプラスするだけと考えるのがいいと思います。タブレット端末の利用を子どもに全てお任せにすると、とんでもないことになるのは火を見るより明らかです。学校のことで使わざるを得ないときには、親のそばで時間を決めることが必要でしょうね。タブレットでの宿題がすんだら、親はタブレットを預かるということです。とにかく、タブレットに触れる時間をなるべく少なくする工夫と親の覚悟が子どもの人生を左右するといっても過言ではない時代です。

 人間は何も制約がないと堕落の坂を転がっていく生き物です。親は何が一番必要かを見極めて、今の時代を生き抜く子どもを育ててほしいと思います。

(まとめ/AERAdot.編集部 鎌田倫子)

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