今季初黒星のダルビッシュ 現地ドジャース番記者の本音「思い知らされた」

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2021年04月19日 16:25  AERA dot.

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写真今季初黒星のダルビッシュ(Sean M. Haffey / Getty Images Sport)
今季初黒星のダルビッシュ(Sean M. Haffey / Getty Images Sport)
 4月17日(現地時間:以下同)、サンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有は、現在ナ・リーグ西地区首位のロサンゼルス・ドジャースを相手に最高のパフォーマンスをみせた。7回1安打1失点、9奪三振、3与死四球で、今季初勝利を飾ったピッツバーグ・パイレーツ戦(4月12日)を上回る圧巻の投球を披露。試合では負けを喫したが、早くも今季最高の試合であったと言っても過言ではない内容だった。

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 ダルビッシュとロサンゼルス・ドジャースとの対決は特別な意味を持っている。ドジャースファンにとってダルビッシュは忘れられない存在だ。発端は、2017年のワールドシリーズでの出来事だ。ダルビッシュは、ヒューストン・アストロズ相手に0勝2敗、自責点8、防御率21.60で惨敗した。「ワールドシリーズでの炎上はチームやファンの期待を裏切り、許せなかったです」と、ドジャース専門メディア『DODGERS NATION』のブルック・スミス記者は当時を振り返る。ダルビッシュに対するファンの恨みは長く続いた。

 2年後の2019年、シカゴ・カブス移籍後初めてロサンゼルスで登板したダルビッシュに大ブーイングを浴びた。このまま一生嫌われ者になるかと思われていたが、2019年末に状況は一転する。17年当時アストロズに所属していた選手の内部告発を発端に、アストロズにサイン盗みを含む不正スキャンダルの疑惑がかかった。「アストロズの不正疑惑報道以降、ドジャースファンの見方は変わりました。当時の批判は不公平でしたし、謝罪運動にも発展しました」とスミス氏は語る。スキャンダルをきっかけに、ファンの間では、「ダルビッシュは不正行為の被害者だった」と言う考え方に変わっていき、近年の活躍ぶりから、「最高の投手」であると評価を改め受けることになった。

 しかし、それも昨年までのこと。パドレスに移籍した今では話が変わる。現在、パドレスとドジャースは昨季から熾烈な優勝争いを繰り広げている。パドレス本拠地のスクリーンには”BEAT LA”(ロサンゼルスと倒せ!)と言う煽りが映し出される。地元紙『サンディエゴ・ユニオン・トリビューン』のケビン・エース記者が「パドレスファンはなによりもロサンゼルスのチームが嫌いです」と言うほど、ドジャースに対抗心を燃やしている。ドジャースファンでもある前出のスミス記者は、「よりにもよって同じ地区のライバルチームに移籍なんて……と言う気持ちがあることは否めません」と、複雑な気持ちを明かした。だからこそ、どのような結末になるのか、両チームのファンはこの試合に注目した。

 そして迎えた4月17日、「ロースコアの展開になるだろう」と予想されていた通り、壮絶な投手戦が繰り広げられた。相手先発は、球界に誇る左腕のエース、クレイトン・カーショー。ダルビッシュとはドジャース時代にキャッチボールのパートナーを務めるほどの仲の良さで知られていた。しかし、ダルビッシュがライバルのパドレスに移籍して以降は連絡を控えているというほど、カーショーもまた相手を意識し試合に臨んだ。

 ダルビッシュとカーショーは初回から互いに相手打線を封じ込めた。両者ともに素晴らしい立ち上がりをみせたわけだが、特にダルビッシュについて、「ドジャース主力選手があれほど苦戦を強いられるとは正直予想外でした」(スミス記者)、「あの投球こそまさにダルビッシュの真髄です」(エース記者)と両軍の記者は高く評価した。

 ゼロ封が続いた試合は4回裏に動きだした。パドレスの5番プロファーのバットがキャッチャーミットに当たり、捕球妨害を受けるシーンがあった。これにカーショーは激怒し、あわや乱闘かと思われる一触即発の雰囲気が球場全体を覆った。そして5回表、ダルビッシュは2アウトから死球、ライト前ヒット、四球で満塁のピンチを迎えたところで9番、投手カーショーと対決する。前の回からの怒りが収まらないカーショーは、フルカウントから8球粘って四球を選び、押し出しで1点をもぎ取った。ダルビッシュはその後の2イニングを21球で抑えるほど立ちなおしたが、「5回の展開は不運だった」とエース記者が語るように、その後も味方の援護を受けられず、7回98球で降板した。

 それでも、ダルビッシュは試合後の会見で、「あの打線にあれだけの投球ができたので、負けたのはすごく悔しいですけど、自分の中では自信になった」と自身の投球に手応えを感じていた。パドレス側のエース記者も「まさにパドレスが求めていたエースそのものだった」と高く評価した。そして、ダルビッシュは敵軍の記者もうならせた。ドジャースを取材するスミス記者は「今日のダルビッシュは私がこれまで見た中で最高の内容だった」と称賛し、「今回こそドジャースが勝ちを得ましたが、ダルビッシュが厄介な相手であることを改めて思い知らされました」と述べる。この試合は結局、ダルビッシュ対カーショーのエース同士の戦いで、相手の執念に負けたとも言える。

 だが、ダルビッシュとドジャースの対戦はまだ始まったばかり。直接対決は5カードも残っている。ダルビッシュは次戦もドジャース戦でカーショーとの投げ合いが予想されている。しかも今度は、あのドジャース本拠地での試合になる。ドジャースファンがどのようなリアクションを起こすかはまだわからないが、過去の因縁は、今は最大のライバルとして立ちはだかる。ドジャース戦は、今季ダルビッシュが登板する試合の中でも最も熱いものになることは間違いない。(澤良憲/YOSHINORI SAWA)

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