「総理がおっしゃる」テレビの過剰な尊敬語に違和感 メディアと「対等」なのになぜ?

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2021年04月21日 08:00  AERA dot.

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写真菅義偉首相の「ぶら下がり」会見。メディアが官邸サイドの機嫌を損ねることを恐れているのも過剰に尊敬語を使う背景だという (c)朝日新聞社
菅義偉首相の「ぶら下がり」会見。メディアが官邸サイドの機嫌を損ねることを恐れているのも過剰に尊敬語を使う背景だという (c)朝日新聞社
 テレビの報道番組や情報番組では政府や総理大臣に尊敬語がよく使われる。背景にはメディア側の萎縮のほかに、ツイッターなどSNSの影響もある。AERA 2021年4月26日号で掲載された記事を紹介。

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「『総理がおっしゃっている』って、平気でテレビで言うようになったのはなぜだろう」

 今年1月、ツイッターにこう投稿したのはテレビユー福島の記者、木田修作さん(35)だ。このところ、テレビの報道番組や情報番組でキャスターや司会者、コメンテーターなどの出演者が政府や総理大臣に言及する際、「尊敬語」を使うことが常態化していることに大きな違和感があるという。

 確かに多い。たとえば、「総理がご判断されるのでは」「大臣はこうお考えになっておられる」などの言い回しがテレビからよく聞こえてくる。これは以前にはなかったことだ。木田さんは言う。

「私たちメディアの大事な仕事は『権力の監視』です。政治家に過剰に尊敬語を使う必要はなく、『総理が話していました』で十分なはずです」

 これはメディア側の問題にとどまらず、視聴者である私たちにも無関係ではないと、木田さんは懸念する。

「総理大臣や政府を尊敬の対象にしてしまうと、政治や政策に対する意識、声を上げる姿勢にも当然、影響があります。コロナ禍で特別定額給付金について番組で言及する際の『給付金をもらう』も同じ意味で気になります。税金が財源ですから、『もらう』ではなく『受け取る』が正しいはず。私たちの意識への負の影響という点で、過剰な尊敬語と根っこはつながっていると思いますね」

 メディアの尊敬語に同様の違和感を持つのは、戦史研究家の山崎雅弘さん(54)だ。

「総理と『対等だ』という認識がメディアにないと、そもそも権力監視なんてできません。怖いのは、私たちの側も尊敬語に慣れてしまい、『国民は政府や総理よりも下なんだ』と刷り込まれてしまうことです」

■戦う前から負けている

 権力の監視どころか、メディアが戦う前から負けている──。そんな状況は2012年12月に始まった第2次安倍政権からだと、山崎さんは考えている。14年6月、NHKのニュースでキャスターが「政府がおっしゃいましたけど」と話すのを聞き、「40数年この国で生きてきて、政府に敬語を使うニュースキャスターを初めて見た」とツイッターに投稿している。

「驚きました。感じるのは、政府や総理の機嫌を損ねることをメディアが極端に恐れているということです。メディアは第2次安倍政権以降、『権力と対等』でなく、『殿様と下僕』のような主従関係に安住するようになりました。官邸側に完全に仕切られてしまっている現在の総理会見もその象徴です」

 これに加え、山崎さんが「気持ち悪い」と話すのが、「させていただく」という言葉の氾濫(はんらん)だ。本来そこまで言う必要はないのに、「上の人の機嫌を損ねてはいけない」「自分が謙虚であることをアピールしないと」という「萎縮の心理」が社会全体に広がっていると、山崎さんは見る。

「そんな萎縮の状況と、政府に尊敬語を使うことは根っこがつながっています。加えて、『権力を監視するための批判は、与党への攻撃だ』という勘違いをする人が増え、本来の仕事を果たすメディアに対し、『偉そうだ』などと筋違いの批判をしてしまう。メディアの萎縮には、国民の側にも責任の一端があるんです」

■怖いSNS上での批判

 それはツイッターなどSNSの影響も大きいのではと考えているのが、政治記者として30年以上の経験があり、テレビの報道番組などでコメンテーターとしての出演も多い毎日新聞専門編集委員の与良正男さん(63)だ。自身はテレビでコメントする際、政府や総理に尊敬語は使わず、かつ必ず「菅さん」と呼ぶ。

「私もたまにエゴサーチ(インターネット上で自分の名前を検索)すると、『なんで与良は一国の総理にさん付けなんだ。何様だと思ってる!』と。そういう声はテレビ局にも山ほど来るんです。それをアナウンサーやコメンテーターがすごく気にする結果、『尊敬語を使って、リスペクトしているふりをしておいたほうが無難だ』となる。そんな意識は間違いなくあると感じています」

■尊敬の気持ちはない

 加えて与良さんが気になるのは、その尊敬語が本当は尊敬の気持ちからきているわけではないということだ。与良さんはテレビ出演以外の日常でも、政治家を呼び捨てにすることはしない。長年取材し、政治家の仕事に敬意を払っているからだ。

「若い記者やテレビの現場のアナウンサーは、オンエア以外では『安倍が』『菅はさぁ』などと呼び捨てにしています。これが僕はとても不快で。実はリスペクトしていないのに、何だか妙な敬語を使っている」

 与良さんは元々、アナウンサーなどがスポーツ選手に言及するとき、「本当にがんばられて記録を残されているので」などと過剰な敬語を使っていることに違和感があったという。

「世の中全般に、『敬語を使うことが、その人の仕事に対するリスペクトだ』という勘違いがあるように思います」

(編集部・小長光哲郎)

※AERA 2021年4月26日号より抜粋

このニュースに関するつぶやき

  • 公僕に対しての尊敬語は不要かもしれないが、一般の人に対する言葉や態度がなっていないのでは?自分たちが一番エラいと勘違いしているのが「メディアとやら」でしょ?
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  • 言葉狩りをしまくった挙句の言い分がこれかよ?TVの現行は誰が書いてるのか言ってみな?忖度って言いたいがために自演して見せてんだろ?だから視聴者が減るんだわ。
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