『呪術廻戦』『チェンソーマン』『怪獣8号』……人気ジャンプヒーローたちの意外な共通点

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2021年04月21日 09:21  リアルサウンド

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写真ジャンプヒーローたちの意外な共通点とは?
ジャンプヒーローたちの意外な共通点とは?

■トーハン調べ2021年3月期【コミックス】月間ベストセラー
1位 『呪術廻戦』(15)芥見下々 集英社
2位 『チェンソーマン』(11)藤本タツキ 集英社
3位 『怪獣8号』(2)松本直也 集英社
4位 『呪術廻戦 東京都立呪術高等専門学校』芥見下々 集英社
5位 『呪術廻戦』(14)芥見下々 集英社
6位 『呪術廻戦 公式ファンブック』芥見下々 集英社
7位 『呪術廻戦』(8)芥見下々 集英社
8位 『呪術廻戦』(1)芥見下々 集英社
9位 『呪術廻戦』(9)芥見下々 集英社
10位 『呪術廻戦』(2)芥見下々 集英社


 トーハン調べによる、2021年3月期のコミックスのベストセラーランキング(1位〜10位)は、上記のとおりである。あいかわらずジャンプ・コミックス――とりわけ『呪術廻戦』強し、という結果だが、本稿では上位3作の「共通点」について考察してみたいと思う。


関連:【画像】虎杖、デンジ、カフカ(怪獣8号)……


 まず、これらの作品は、いずれも「主人公が魔物と広義の“合体”をすることで、敵(悪)側の力を取り入れている」ということが挙げられよう。これについては、以前、3月9日トーハン調べの週間ベストセラーランキングの分析記事でも書いたので(https://realsound.jp/book/2021/03/post-723032.html)、興味のある方はそちらも併せて読まれたい。


 具体的にいえば、それぞれの作品の主人公たち――『呪術廻戦』の虎杖祐仁は特級呪物の両面宿儺を「受肉」し、『チェンソーマン』のデンジは親友の悪魔・ポチタと一体化、そして、『怪獣8号』の日比野カフカは、小型の怪獣(?)を飲み込んでしまったことで、敵(悪)側と同じ力を手に入れている。


 ではなぜ、こうした「毒をもって毒を制す」タイプのダークヒーローがいま受けているのか。それは、おそらく「清廉潔白な正義の味方」の存在が、正義と悪の境目(さかいめ)が曖昧(あいまい)になっている現代においては成立しにくくなっているからではないか、というのが私なりの見解なのだが、実は、前回の記事ではほとんど触れていない、もうひとつの「共通点」が、この3人にはある。


 それは、「主人公たちが“仕事”として魔物と戦っている」という点だ。そう、『呪術廻戦』では呪術高専、『チェンソーマン』では公安、『怪獣8号』では防衛隊の一員として、つまり、「職業」として、主人公たちはそれぞれ呪霊、悪魔、怪獣を退治しているのだ(注)。


注……『呪術廻戦 公式ファンブック』によると、呪術高専では、学生でも任務に赴き、呪霊を祓った場合は報酬が出るということが明記されている。また、『チェンソーマン』のデンジの雇用条件は不明だが、10巻でマキマ(公安4課を取り仕切る女性)は彼に「仕事を用意して お金をあげて」といっており、公安から(あるいはマキマ個人から?)相応の給料が出ているものと思われる。


 とまあ、これはこれで、先に述べた「主人公が魔物と“合体”して敵(悪)の力を取り入れている」ということとは別の意味で、いまの時代ならではの「リアルなヒーロー」の条件だといえるだろう。


 たとえば、「魔物と合体したヒーロー」の物語といえば、その元祖として、永井豪の『デビルマン』を思い浮べる人も少なくないだろうが、かの名作の主人公のそもそもの戦う動機は、「人類を悪魔から守るため」というものだった(やがて彼はその人類から裏切られるのだが……)。つまり、こうした、なんの見返りも求めず、無償で他者のために命を賭して戦うヒーローを、当時の読者たちは信じられたということだ。しかしいまの若い漫画読者たちにとってはどうだろうか。


 むろん、今回のランキング上位3作の主人公たちにも、「純粋な正義の気持ち」がないわけではない。『チェンソーマン』のデンジだけは、徐々にヒーローとしての自覚が芽生えていくように描かれているが、それ以外のふたり――『呪術廻戦』の虎杖悠仁にとっては、祖父の「オマエは強いから 人を助けろ」という“遺言”が、『怪獣8号』の日比野カフカにとっては、かつて破壊された街を見つめながら、幼なじみの少女と誓った「二人で怪獣を全滅させよう」という言葉が、「命賭けで戦うための原動力」になっている。


 だが、それでも、「現代を生きるリアルなヒーロー像」ということを考えたとき、「魔物を倒すことで報酬を得る」という設定はかなり重要な気がするのだ。現実の世界でも、警官、消防士、自衛官などに、「なぜあなたは他者のために命を賭けられるのですか?」と訊いてみたら、彼らはおそらく、「それが自分の仕事だから」と答えることだろう。そしてその答えはもちろん、「誰かを助けたい」という正義の気持ちと矛盾するものではないのだ。


 そう、たとえ「ヒーロー」と呼ばれる存在であろうとも、生きていくためにはお金を稼がないといけないわけであり、そんな彼らが「魔物を倒すことで報酬を得る(それゆえに真剣になる)」のは当然のことだといっていい。そしてそのひとりの「生活者」でもある現代のヒーローたちのリアルな勇姿は、やがて数年後には社会に出ていく少年読者たちに、「働くこと」の大事さとカッコよさを教えているのだ、というのは、いささか強引な結論だろうか。


(文=島田一志)


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