「ウチで看取ってあげよう」衰弱した老猫を保護 家族全員の給付金を医療費に充て懸命の緩和ケア

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2021年04月21日 11:00  まいどなニュース

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写真病院から退院したつむぎちゃん、この日から正式に家族の一員となった
病院から退院したつむぎちゃん、この日から正式に家族の一員となった

「お母さん、ガリガリの子猫がいるよ。エサをもって、早く来て」

【写真】パパに抱っこされるのが好きだったつむぎちゃん

神奈川県に住む堀和美さん(仮名)の家族は、夫と高校3年になる双子の娘、そしてペットとして犬(パグ、オス・9歳)、保護猫(生後9カ月、オス)を飼う動物好きの一家だった。長女から緊急の連絡を受けたのは、2020年7月24日のことだった。

学校の帰り道、ある一戸建ての駐車場から、「ニャーニャー」と鳴きながら出てきた猫。身体の模様からそれが三毛猫であることは辛うじてわかったが毛がべたべたと固まっていて、薄汚れていた。そして、何より気になったのが、首回りの毛だけを残して、身体中の毛が刈られていた。まるでライオンカット(サマーカット)をしたかのような見た目だった。

子猫と思っていたら老猫だった

長女からのSOSを聞いてすぐに現場に駆け付けた和美さん。家で飼っている子猫用のドライフードを与えた。誰かが飼っている猫かもしれない、という考えが頭をよぎったが、その場を通りかかった近所の人がこう言った。「1週間ほど前からそこでずっと鳴いていたよ」。このままでは死んでしまう、そう思った堀さん親子はそのまま自宅に連れ帰った。

さっそく翌25日、動物病院で診てもらった。獣医師からノミがついている上に、口内炎でよだれがひどく、そして歯が1本もない、と指摘された。かなり状態が悪く「次の日には死んでいたかも」とも。そして子猫と思っていたその猫は推定18歳以上のメスの高齢猫で、人に慣れていることから飼い猫だったかもしれない、とういうことを聞き、驚いた。保護した猫は1週間の入院が必要となった。病室を出るときに「どうするか決めてくださいね」と言われた。

どうするか決める−つまり衰弱した老猫を引き取るかどうか。和美さんのなかでは葛藤があった。すでに家には犬と猫がいる。世話をするのはもっぱら和美さんになるのは目に見えている。家族の協力は得られるのか。そんなとき夫から「ウチで看取ってあげよう」と提案があった。家族会議を開いた後、和美さんの腹は決まった。「やっぱりこの子を見殺しにできない」。そうして堀家は新しい家族を迎えることになった。「つむぎ」と名前も決めて1週間後、病院に迎えにいった。

退院したものの、その後も闘病が続く

入院中に判明したことだが、伸びた爪が巻いて肉球に突き刺さっていた。退院後もしばらく肉球の消毒をした。退院して2週間後には、膀胱炎が判明。こちらも入院中の血液検査で腎臓の数値が悪いことが判明、そのせいで退院後、何度もトイレに行ったり来たりを繰り返していた。

糖尿病もあり、多臓器不全で獣医師から「長く生きられないかもしれないから、たくさん甘やかして好きなものを食べさせて」と助言を受けた。9月になるころには、食欲がなくなった。レントゲンを撮ったところ、上下のあごに腫瘍が見つかった。何とかつむぎちゃんの苦痛を和らげてあげたいという一心から、緩和ケアのための点滴を打つため、通院を続けた。

高額な医療費は家計に響いた。昨年、新型コロナウイルス感染症による経済的影響に対する緊急対策として、国⺠全員に1⼈当たり10万円の特別定額給付⾦が支給されたが、堀家に支給された4人分の給付金はすべてつむぎちゃんの医療費(身の回りの物、餌、通院のためのタクシー代含む)に充てた。しかし…。懸命な治療もかなわず、10月20日、天国に旅立った。ちょうどその日も病院に行く予定だった。当日朝ペットカメラ越しに大好きだった夫の部屋の前で力尽きているのを確認。しばらくベッドで横にさせていたが、病院に行こうと抱き上げたとき、そのまま息を引き取った。

学校にいた長女は、和美さんからのLINEでつむぎちゃんの死を知り、必死で涙をこらえた。友人にそのことを話すと「つむちゃんは幸せだったと思うよ」という言葉をかけられたという。帰宅後、最期の様子を聞くと、涙が止まらず号泣した。

老猫を家族として迎えた堀家、一緒に暮らした時間はあまりにも短いが、それでも後悔はない。つむぎちゃんが生前、前の飼い主が探しているかも知れないと思い、地域のボランティアに聞いたり、迷子猫サイトに登録したりもしたが、名乗りを挙げる人は出てこなかった。和美さんは言う。「もし、つむちゃんは、誰かが飼っていたペットだとしたら、その方に、我が家で保護したこと、そして看取ったことを伝えたいのです」。前の飼い主がこの記事を目にすることを願っている。

つむぎちゃんが息を引き取る前日のこと、病院帰りの車中で、「つむはパパのことが大好きだからね〜」などと夫婦で会話をしていたという。その夜、歩くのもままらないはずのつむぎちゃんがヨタヨタと和美さんのところまで歩いてきて、膝の上に乗ってきた。「きっとママのことも好きだよっていう意味で乗ってくれたのかな」とつむぎちゃんの行動を今でも思い出すことがある。つむぎちゃんを学校帰りに発見した長女は今春、高校を卒業。そして動物の看護を学べる学校に進学したという。

(まいどなニュース・佐藤 利幸)

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