村上春樹×小野リサ「ボサノヴァ」を語る「嫌というほど聴いてきたけど、不思議に飽きない」

1

2021年04月23日 06:40  TOKYO FM +

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

TOKYO FM +

写真村上春樹×小野リサ「ボサノヴァ」を語る「嫌というほど聴いてきたけど、不思議に飽きない」
村上春樹×小野リサ「ボサノヴァ」を語る「嫌というほど聴いてきたけど、不思議に飽きない」
作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMの特別番組「村上RADIO」。第22回目放送となる今回は、2月14日(日)に開催された配信ライブイベント「TOKYO FM開局50周年記念 村上春樹produce「MURAKAMI JAM 〜いけないボサノヴァ Blame it on the Bossa Nova〜 supported by Salesforce」(以下、「村上JAM」)の模様を凝縮して、3月29 日(日)にオンエア。

音楽監督・大西順子さんが率いる「MURAKAMI JAMボサノヴァバンド」をはじめ、ジャズピアニストの山下洋輔さんと坂本美雨さんのパフォーマンス、村治佳織さんのクラシックギターをバックに村上さんが朗読を披露するなど、盛りだくさんの内容でお送りしました。
この記事では、第1部での小野リサさんの出演パートの模様を紹介します。

小野リサさん



美雨:ボサノヴァといえばこの方、お招きしましょう。小野リサさん! リサさんはブラジル生まれでいらっしゃいますね。10歳までブラジルに住まわれていました。ボサノヴァは住んでいたら自然と耳にし、自然と身に付くものなんでしょうか?

小野:わたしが生まれたころは、ボサノヴァがラジオで(普通に)かかっていましたけど、当時の人々はボサノヴァが生まれてすごくショックを受けたんですね。新しいものだったのです。その前の音楽は、朗々と歌い上げるような懐メロとか、丘の上のサンバだったりしたんですけど、そんななかで中間の心地よい音楽が生まれて、皆さんワクワクしていたと思います。

村上:「イパネマの娘」とか「コルコバード」っていやと言うほど歌ったでしょう? 僕もいやというほど聴いてきたんだけど、でも不思議に飽きないですよね。

小野:そうなんです、なんでしょうね。

村上:リズムとハーモニーがすごく特殊で魅力的なんだと思います。だから次にこのコードが来るとわかっていても、ぐっときちゃうところがある。

小野:そうですね。ボサノヴァのリズムは、「チクタク、チクタク」と4分の2拍子なんですけど、うちの父が「心臓の鼓動と同じなんだ」と言っていました。そのリズムとハーモニーが、やはりテンションが少し入ってパステルになって……。

村上:でも、(アントニオ・カルロス・)ジョビンのコードって普通じゃないですよね。

小野:ジョビンはたくさんの曲を作曲されましたけども、もともとはクラシックがとても好きだったみたいで、その影響もあって、クラシック音楽をポピュラーにしたいというところがあると思います。

美雨:リサさんが「ボサノヴァはアメリカ人よりも、もしかしたら日本人のほうが得意かもしれない」と仰っていたのが印象的でした。

小野:アメリカの音楽はジャズもロックもオフビートで、リズムの捉え方が反対なんですよね。サンバもボサノヴァもオンビートで、日本の音楽、古い音楽もお祭りの音楽もオンビートなのです。

美雨:アントニオ・カルロス・ジョビンはボサノヴァの創始者と言われていますけれど、今回はボサノヴァがテーマということで、特にアントニオ・カルロス・ジョビンの楽曲に特化してお送りしようということになっております。ということで、小野リサさん、演奏をお願いします。

◆「One Note Samba(Samba de uma Nota Só)」小野リサ

小野:お送りしました曲は、「One Note Samba(ワン・ノート・サンバ)」、"Samba de uma Nota Só"でした。メロディがずっと同じ音で、そしてハーモニーがどんどん変わっていきます。まるで汽車に乗っているような、いろいろな景色が動いていくような、そんな曲です。大西さんの素敵なアレンジでお送りしました。
 

◆「CORCOVADE(コルコバード)」小野リサ
小野:ボサノヴァには欠かせないスタンダードな1曲です。リオデジャネイロの丘の上にキリストの像がありまして、そこからリオの街が全体に見渡せます。そこを「コルコバードの丘」と言います。コルコバード、聴いてください。

◆「Água de Beber(おいしい水)」小野リサ
小野:次は、わたくしの最後の曲になります。“AGUA DE BEBER”、AGUAというのは「お水」、BEBERは「飲む」というタイトルなんですけれども、日本では「おいしい水」と訳されています。

美雨:小野リサさん、ありがとうございました。どうぞこちらへ。

村上:素敵な演奏でした。ポルトガル語ってホントにボサノヴァに合ってます。スペイン語で歌うと全然雰囲気が違っちゃうんですよね。

小野:スペイン語はもっときちんとしているんですよ。

村上:ポルトガル語のふわっとした雰囲気とリズムがすごくよく合っている気がします。僕の友達でもボサノヴァにハマって、ポルトガル語を勉強したという人が結構いるんですよ。

小野:ボサノヴァを演奏するようになったり、サンバに凝り始めると、ポルトガル語にハマることが多いみたいですね。

美雨:ボサノヴァとかジャズとか、境目がない本当に美しい音楽でした。

小野:順子さんのアレンジのおかげです。

美雨:春樹さんは以前「村上RADIO」のなかで、アントニオ・カルロス・ジョビンさんの言葉を引用しました。

「僕ら、ブラジル人のつくる音楽はどうして美しいのだろう? その理由はひとつ、幸福よりは哀しみのほうが美しいものだからだ」

美雨:この言葉も美しいですけれど。

村上:ブラジルの社会情勢というのは、当時そんなに幸福なものではなかったんですよね。ボサノヴァが出てきたころは軍事政権が国を掌握して、いろんな人が海外に亡命したり、ブラジルに帰れなくなったりして、ジョビンもずいぶんひどい目にあっていますよね。いまはボサノヴァっていうとカフェのおしゃれな音楽みたいになっているけど、本当はそういう哀しみも結構含まれているんだと僕は感じるんだけど。

小野:そうですね、国の情勢がなかなか安定しなくて。でもそんななかでも、ブラジル人はすごく前向きなんです。カーニバルでは1年分働いたお金を衣装に使って発散するという明るさが素敵だと思います。

美雨:どうもありがとうございました。小野リサさんでした。どうぞ大きな拍手を!

TOKYO FM開局50周年記念 村上春樹produce「MURAKAMI JAM 〜いけないボサノヴァ Blame it on the Bossa Nova〜 supported by Salesforce」



(TOKYO FMの特別番組「MURAKAMI JAM〜いけないボサノヴァ レディオスペシャル supported by Salesforce」3月29日(月)放送より)

* 

◆「村上RADIO」4月25日(日)から月1レギュラー化!
作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMの特別番組「村上RADIO」。2021年4月より、これまでの不定期放送から毎月最終日曜日放送のレギュラー番組にリニューアル。月1レギュラーの第1回となる4月25日(日)の放送は、「村上RADIO〜花咲くメドレー特集〜」と題して、新旧さまざまなアーティストが演奏する「3曲以上が連なるメドレー音源」を村上さんの解説付きでオンエア。どうぞお楽しみに!

<番組概要>
番組名:村上RADIO〜花咲くメドレー特集〜
放送日時:2021年4月25日(日)19:00〜19:55(※放送日時が異なる局があります)
放送局:TOKYO FM/JFN全国38局フルネット
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/
動画・画像が表示されない場合はこちら

このニュースに関するつぶやき

  • 彼女がMIDIでデビューしたアルバムは実はボサノヴァではない。当時ライブでもノエル・ホーザやジェラルド・フィルミなどのサンバもよく歌っていた。あの日に帰って。
    • イイネ!1
    • コメント 3件

つぶやき一覧へ(1件)

ニュース設定