コロナ禍で悩みを抱える新入社員たち。数ヶ月で辞めた原因とは

0

2021年04月23日 09:21  日刊SPA!

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

日刊SPA!

写真写真
 去年、コロナ禍で採用取りやめや内定取り消しなどがあった。就職の難しい1年だったが、新卒で入社しながら1年未満で会社を辞めた人たちは少なくない。この厳しい状況でなぜ退職を決断したのか。

 背景にはコロナならではの問題があった。しかし、それだけではないようで……。

◆2ヶ月で退職した“営業のできる声優”会社員「気づけば“コロナ商材”の営業を…」

 ゲームや洋画の声優として活動するゆいさん(23歳・Twitter:@YUI_TENSHOKU812、@califeyoshino)は去年6月、新卒で入社した会社を退職した。

「退職するか、とても葛藤しました。でも、心が疲れて仕事を休んだある日、人事部長に『辞めます』とメッセージを送っていました」

 とても明るい性格で負けず嫌いのゆいさん。大学時代から声優として活動しており、卒業後も声優としての道を考えていたため、もともと就活はしていなかった。

 しかし今後のキャリアを心配していた母親から、「まずは正社員として働いてみたら」と提案があった。ゆいさんも、女手ひとつで大学まで通わせてくれた母の期待に応えたいと就活を決心、声優の活動は控えめにすることにした。

 就活を開始した時、すでに大学4年の11月。間に合わないか、とダメもとで面接に挑むと、あっさり内定が出た。
 
「入社してみると、コロナ禍でもフル出社する会社でした。配属された部署での仕事は、当初聞かされていたのとはまったく別物で、気がついたら、マスク、アルコール、アクリルパーテーション、次亜塩素酸水などのいわゆる『コロナ商材』をひたすら売る日々でした。営業の電話は1日100〜200件していたと思います」

 同期に負けたくないという思いで朝8時〜深夜0時頃までコロナ商材の営業電話とリスト作成を行った。すぐに150万円の収益を出すなど着実に結果を出した。社長から成績優秀社員が呼ばれる食事会に誘われるなど輝かしいスタートを切った。そんな時、社長の裏の顔を目にしてしまう。

◆先輩社員と交流の場なく、悩み吐露もできず

「社長が結果を出せていない社員を罵倒していたんです」

 年に数回開かれる社内の表彰式での出来事だった。社員を守るために赤字しないようにと、社長も必死だったのかもしれない。ただ、汚い言葉で社員を罵倒する社長の姿を見てしまった。そこから会社のやり方に疑問を抱き始めた。というのも、会社の定時は10〜22時、うち2時間休憩となっているが、全く守られていなかった。さらにゆいさんの同期もすでに数人辞めていた。

「これからも働けるのかな。大丈夫かな」

 不安は募った。しかし、「社長ってどうなの?」と軽く話せる場所はなかった。コロナで飲み会などはなかったので、先輩社員とはそこまで仲を深められず、機会は少なかった。

 残業も多く、ボイトレなどの声優活動もほとんど出来ていなかった。「辞めたいけど辞めたら短期離職になる。でも声優活動も続けたい」。そんな自問自答を繰り返していた。頑張り続けてきたが限界を迎えた。プツリと糸が切れてしまい、食事会前日に退職した。

「コロナ禍での退職でしたが、全く後悔していないです! 今は別の会社に転職して、前職よりも自由度が高くて嬉しいです。自分の裁量で残業出来るので定時であがる日は定時で、残業する日は24時までなど、自分で決められるのが助かっています」

 『営業ができる声優アイドル』として名をはせるべく、今日も努力している。

◆研修なしで配属、サービス残業、休日出勤「やっていけない」

 昨年4月、フォトスタジオで働きはじめたlisaさん(23歳・Twitter:@arinko809)。学生時代、音楽の勉強をしながらカメラマンとしてもアルバイト経験があり、それを活かせると選んだ職業だった。

 新天地での日々に期待が高まる一方、コロナ禍で不安もある中で迎えた春、悪い予感は的中した。入社早々行われるはずだった入社研修などがされないまま、配属先が決まり、気づけば本格的に仕事が始まっていた。

 何も分からないまま業務が進むことに、不安ばかり大きくなる。

「やっていけないかもしれないと思いました」

 それでも懸命に仕事を続けたlisaさん。しかし書類の提出期限に間に合わせられず、休日出勤した上、残業代がもらえないことがあった。平日勤務では休憩が取れない日が多かったという。

「知らない間に体力的、精神的にも弱ってしまいました。入社から2か月ほど経って、自分には合っていないと自覚しました」

 季節は夏になり、ようやく会社の経営方針や理念などを学ぶ時間が設けられた。そこで、やはり違うと改めて感じたlisaさん。「わたしにはどうしても合わせられない」と感じたそうだ。

 lisaさんは思い切って上司に退職を申し出た。もちろん、上司は「勿体ない、あなたならできる」と励ましたという。

 そうした言葉はlisaさんを思い留まらせた一方、会社に迷惑をかけている、負担を与えていると感じさせ、むしろストレスとなった。何度も話し合いを重ねる中で、ある日、上司からこう言われた。

◆上司が一言「コロナ禍じゃ仕事見つからないよ」

「新卒一年未満で退職、そのうえコロナ禍では次の仕事は見つからないよ」

 lisaさんは頭が真っ白になる。どんどん気持ちが後ろ向きになり、体調の悪い日が続いた。「今辞めたら、どうなるんだろう」。どん底に落ちていた。休みの日も仕事のことで頭がいっぱいになり、趣味を楽しむ余裕もなくなっていた。

 そんなlisaさんだが、入社から10か月後、ついに退職した。

「辞めたいけどコロナで転職は難しいと言われた頃、母親に、『ちょっとおかしいよ』と言われたんです。ずっと音楽が好きだったのに、趣味ですら音楽から遠ざかっていて。そんなこと今までなかったので、そう言われたんだと思います。

 辞めたことに後悔はしていないです。もちろんお世話になった会社の皆さまには申し訳ないですし罪悪感は残ります。もし我慢していたら慣れて楽しく仕事が出来ていたのだろうかと考えることも未だにあります。ですが、社会人として色々学べたので経験値としてプラスになったと思います」

 lisaさんはこの春から音楽教師として新たな一歩を踏み出した。

「社会人2年目とはいえどゼロからのスタートで不安がいっぱいです。でも自分が自分であるためにどう過ごすかをよく考えて、仕事もプライベートも両立していけるようにしたいです」

 彼女は、自分の気持ちと真っ直ぐ向き合って決めることが大切な気がすると強調していた。

 コロナ禍で希薄になった人と人との繋がり。いま、多くの会社でリモートワークが推奨され、飲み会などの会合も自粛となっている。

 その弊害か、新入社員たちは仕事の悩みを相談できず、上司が気づいたときには退職を心に決めているという状況が生み出されている。オンラインでもケアできるかどうかが大きな課題と言えよう。

<取材・文/星谷なな>

―[モンスター新入社員録]―

【星谷なな】
5歳の頃からサスペンスドラマを嗜むフリーライター。餃子大好き26歳。 たまに写真も撮ります。Twitter:

    前日のランキングへ

    ニュース設定