ディズニーアナウンス変更に、「美白」「はだいろ」もNG… 表現が制限される現代における本当の“多様化”とは

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2021年05月05日 08:40  ORICON NEWS

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写真これまで数々の炎上案件を担当してきた三浦崇宏氏 (C)oricon ME inc.
これまで数々の炎上案件を担当してきた三浦崇宏氏 (C)oricon ME inc.
 先ごろ、ディズニーランド・シーが園内アナウンスの“Ladies and Gentlemen, Boys and Girls”を“Hello Everyone”に変更したと発表。翌日にはファミリーマートが“はだいろ”と表記していた下着を回収、同日、花王が“美白”表現の撤廃を発表した。賛同の声が挙がる一方で、「過敏すぎる」「“多様化”なのに言葉の幅は狭まるってなんか皮肉」などといった反発も。「表現の自由」「個性の実現」が重視されつつも、「〇〇ハラスメント」という言葉の多用・乱用も見られる現代において、本当の“多様化”とは何なのか。

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■2017年に炎上した“保毛尾田保毛男”は当時は問題にされていなかった、世間の意識変化の背景とは

 博報堂時代にはマクドナルド異物混入事件を担当し、現在はSNSでの炎上対策の相談や、SNSの誹謗中傷を失くす活動「#この指とめよう」に取り組むなど幅広く活動しているPR・クリエイティブディレクターの三浦崇宏氏(The Breakthrough Company GO代表)。先述のディズニー、ファミマ、花王の取り組みについて意見を尋ねると、彼は「大前提として良いこと」と唱えた。

「とんねるずの保毛尾田保毛男問題が2017年にありましたが、それが生まれた20年前は大きな問題になっていませんでした。ですが、これに傷ついた人は20年前も今も、人数はそんなに変わってないと思うんです。当時は『傷ついた』と言うことがカミングアウトにもつながったわけで、要は“我慢”していたんでしょう。ですが、昨今は多様性に対する意識が高まり、我慢していた人たちの声が可視化されてきた。その人たちに対して配慮の目を向けられるようになった、ということ自体は、世の中が良くなってきていると感じます」(三浦氏/以下同)

 こうした動きは「ダイバーシティ&インクルージョン」と呼ばれる。ダイバーシティとは“多様性”。インクルージョンは“包括”だ。「異性愛者も、同性愛者の方もいる、黒人も白人も黄色人種もいる、いろんな多様性があってそれぞれ認め合おう」…これが“多様性”。三浦氏はそれだけでは「不十分」とし、「同時にそれぞれ全部が平等に生きやすい世の中にしていこう」という、表面上ではなく体制面や継続性など現実的な施策を促す動き=“インクルージョン”が必要不可欠だと話す。企業を例にすると、従業員のマイノリティの割合だけに注目するのではなく、マイノリティの人々が能力を発揮できる環境、それぞれが働きやすい職場を整えなければ、真の多様性の社会・実現には至らない、ということだ。

 例えば、「グリーンウォッシュ」という言葉がある。いくらマーケティングに乗って環境保全に寄り添った宣言をしても、実際は資材浪費をしているなど、中身が伴ってない現状があれば、当然炎上案件となりうる。

「これはマーケティング・ブランディングにも取り入れられています。昨今はどこも商品の品質が上がり、マーケティング全体がコモディティ化(同質化)している。スペックが同じである以上、消費者に選んでもらうためには付加価値が必要になります。ここで環境や人権、社会に対して“いいことをしている”という姿勢は、先進的な企業という示しになる。よりその企業が愛されるブランディングとして、『ダイバーシティ&インクルージョン』が機能している現状があり、ディズニー、ファミマ、花王の今回のすばらしい取り組みにも当てはまるかと思います」

■“個人の声”が社会を動かす力を得た今、見つめ直されるべき広告・メディアの功罪

 数年前から日本でこうした動きが加速した背景には、商材のコモディティ化に加え、SNSの発達がある。

「SNSの発達により、“大企業の声”と“個人の声”が対等になったのは大きな変化。例えば、『保育園落ちた、日本死ね』という主婦の方のブログの一言がきっかけで、国会を動かすまでに至りました。つまり、“個人の声”が社会を動かす可能性が飛躍的に増えたんです。窮状を訴える声が可視化・社会化されるようになった結果、その声を応援しようという動きが生まれた。以前はデモや暴力を起こさなければ社会を動かすのは難しい側面がありましたが、そういった意味で、SNSは社会変化のあり方を大きく変えたと言えます。マーケティングにも同じことが言えます」

 もう一つは、マーケティングのグローバル化。2018年には、ドルチェ&ガッバーナが上海でのショーに先駆けて、中国人モデルがピザを箸で食べるのに苦戦するといった動画を公開し、世界的に大きな物議を醸した。「D&Gは、これにより中国市場撤退を余儀なくされました。現代では、各企業が文化や習慣、価値観が違う顧客層に対してマーケティングを広げています。日本にも海外から多くの方が労働力として入ってきたり、暮らしていたりしている。そこへの配慮が当然求められる時代にようやくなったと捉えています」

 三浦氏は、広告・メディア業界の“功罪”も感じているという。「大前提、広告とかメディアが社会のステレオタイプを加速してきたということは自認しないといけないと思うんです。例えば、日本では15秒でCMを作らなければならない。15秒で洗濯機の良さを説明する上で、お母さんが洗濯してる画を選びがちです。そうした表現が“家事の役割の押し付け”になっていった可能性もあると思うんです。テレビを付ける度に常に女性が料理をしていると、じゃあ私も料理をやらなきゃいけないのかと思ってしまいますよね。これが働きたい、稼ぎたい、そういった女性の才能や可能性を狭めてきた。そんな事を広告・メディアが50年間やってきたわけで、そろそろ進歩した段階で新しいルールを作ろうよ、となったのが今。まさにその過渡期であり、僕はそこに表現の新たな可能性を感じているんです」

■“多様化”において、年代、人種、国籍でくくるべきではない「個を尊重することであり、自分自身に向けるべきもの」

 つまり三浦氏は、表現が次々と撤廃されていく現状について、窮屈さを感じていない。

「PRや広告に関わる人間として、例えば『美白』という言葉一つが使えなくなったところで勝ち残れないようでは、そもそも何の差別化も出来ない。これは企業も同様です。ルールがアップデートされたわけですから、我々も言葉のアップデートをしなければならない。大喜利のようなもので、それならばどんな言葉、表現があるか、考えるのが僕らの仕事なのです」

 SNSでは「過敏すぎる」などの声もあるが、そもそも企業は、ライバル社が内容量を増やせばこちらも増やすなど、“過敏”に企業努力を続けている。昨今の「ダイバーシティ&インクルージョン」を重要視したマーケティング・ブランディングでも同じ、ただそれだけだという。

「ですから、昨今の風潮で表現が窮屈になるのではないかという心配は、個人的には全くの杞憂だと感じています。より消費者の知見が深まり、ルールや配慮すべきことは昔に比べて増えたと思いますが、そうあるべきだし、言葉はアップデートされていくべきものであって、無限です。言葉と実態が伴っていれば、ちゃんと応援される時代ですから」

 その上で、「一面的なダイバーシティ&インクルージョン」に警鐘も鳴らす。「先日、森元首相の女性蔑視発言が話題になりましたが、これに『だからおじさんは』などの批判もありました。これはいけません。多様化を実現するために、“おじさん”とカテゴライズしてはダメ。これは個人の話であり、年代、人種、国籍などでくくって語るものではないのです。誰かを守るために、関係ない誰かを傷つけるのはNG。多様化とは、“個を尊重することであり、自分自身に向けるべきものでもある。他人に強要するよりも、あくまで自分の中に持っておくものだと思います」

 大量のクレームがきたからといって、必ずしもCMや商品を取り下げるべきではない。と、三浦氏。「その基準も、他者ではなく自社にあるべきです。揺らぎないストーリーや理念が強固な企業が生き残っていく時代です。今回の花王さんにしても、世界マーケットを開いていく上で、“美白”を直訳した際に違和感がある国が存在するために表現を撤廃したのでしょう。シミやそばかすを防ぐ効果がある商品に対して、よりふさわしい表現を模索したに過ぎません。これに対し、“美白でいいじゃないか”という声もあるかもしれません。ただ、そういったクレームが100件きたところで、花王さんはブレないと思います。1つの表現を全商品で撤廃するというのは、ものすごく労力がかかることですから、その決定までにあらゆるプロセスを経て、世界的な視野で考えて下しているはずです。その中で明確に決定した“自社基準”があらゆる人への想像・配慮を広げており、それが個人レベルでも実現している。それが本当の“多様化社会”だと思います」。


(取材・文=衣輪晋一)

このニュースに関するつぶやき

  • 言葉狩りを嬉々としてやっておいて、多様化もくそもあるか?(;'∀')
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  • 昨今の言葉狩りは常軌を逸している。ホモを毛嫌いして何が悪い? 「LGBの人権を認めろ!」は「スカトロ、ロリコン、SMマニアの人権を認めろ!」と同次元の話だ。
    • イイネ!37
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