インド映画『WAR ウォー‼』爆発×ダンス×男の因縁! 後先を考えない“起転転転転結”の痛快脚本

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2021年05月05日 15:02  日刊サイゾー

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写真この連載で2度目の登場! インドの大スタータイガー・シュロフ。日本の俳優だと岡田将生と同い年です。(Getty Imagesより)
この連載で2度目の登場! インドの大スタータイガー・シュロフ。日本の俳優だと岡田将生と同い年です。(Getty Imagesより)

──劇場か、配信か。 映画の公開形態はこのどちらかに偏りつつあるが、その中間が存在していることを忘れてはならない。YouTubeやVODで見られる劇場未公開、あるいはひっそりと公開が終わってしまった傑作を加藤よしきが熱烈レビュー!

 今、巷を騒がしている「戦狼外交」という言葉がある。中国の強気な外交姿勢のことだが、この語源は映画『戦狼/ウルフ・オブ・ウォー』(2018年)という1本の映画である。

 アクションスターのウー・ジンが監督・主演を務め、“戦狼”と呼ばれるエリート軍人がアフリカで功夫(カンフー)を武器に悪党どもをブチのめす痛快娯楽作品で、中国で大ヒットした。この強く頼もしい“戦狼”になぞらえて「戦狼外交」という言葉が生まれたのである。こんなふうに映画が現実に影響を及ぼすことがあるのだ。

 そして私は、そろそろインドで「タイガー外交」という言葉が生まれるのではないかと思っている。というのも、このウー・ジンに勝るとも劣らないアクションスターがインドに存在し、現に大ヒット作を生んでいるからだ。今回ご紹介するのは、以前に紹介した『タイガーバレット』(2018年)でも大暴れしていたタイガー・シュロフの作品であり、同年のボリウッドの映画興行成績で1位を獲得した大ヒット作『WAR ウォー‼』(2019年)である。この映画は社会を動かすほど景気がよく、勢いがあり、問答無用で面白い。

 インドの特殊工作員、カビール(リティク・ローシャン)が、突如としてインド政府の要人を暗殺した。国家に忠誠を誓ったはずの真の軍人であるカビールの裏切りに、インド政府は動揺するが、とにかくカビールを一刻も早く粛清しなければならない。そしてカビール追跡に名乗りを上げたのが、カビールの愛弟子であり、カビールも認めた真の軍人・ハーリド(タイガー・シュロフ)だ。カビールとハーリド、2人には海よりも深い因縁と、男同士の熱い絆があった。ハーリドは初めてカビールと出会った日に想いを馳せる。

 あれは2年前のこと……。出会いは最悪だった。何せハーリドの父親は、国家を裏切ってカビールを撃った挙句に、カビールに殺されていたのだ。カビールから見れば、ハーリドは裏切り者の息子。ハーリドから見れば、カビールは父親を殺した男。お互いに信頼度0%だったが、しかしハーリドは懸命に訴える。「父が裏切り者だと密告したのは、オレの母親です。オレにはそんな母の血も流れている。だから、どうかオレを信じてください……! オレに、名誉挽回のチャンスをください!」真の軍人であるカビールは器も大きい。懸命に訴えるハーリドに、作戦参加を許可するのであった。

 カビールの部隊が向かったのは、テロリストの討伐だ。真の軍人であるカビールは、リスキーな作戦にでる。自分を囮にするために、あえてテロリストに捕まったカビール。そしてカビールは、筋肉が絶妙にチラ見する不自然なほどセクシーに破れた服で拷問を受ける(※書き忘れましたが、リティク・ローシャンさんもタイガー・シュロフさんも、冗談のように男前でスタイルが良くて筋肉がムキムキです。あまりの筋肉に、基本的に着ている服が悲鳴を上げています)。

 そしてテロリストが集結しているところに、ハーリドが『エクスペンダブルズ2』(2010年)を完コピしたスタイルで突撃してくるのであった。ハーリドとカビールは力を合わせ、遂にテロリストの親分をやっつける。命を賭けた作戦は成功に終わり、2人は互いを認め合った。チームでクラブに繰り出し、「シヴァ神万歳〜♪ ワイルドな雰囲気〜♪」と大いに歌い、キレキレのダンスで親睦を深める。(以下のYouTube動画は必見)

 そんな真の軍人であるはずのカビールが国を裏切って、テロ行為に走っている。信じがたい事実にSee-Sawの「あんなに一緒だったのに」が流れてきそうな雰囲気になるハーリド。しかしカビールの凶行は止まらず、要人暗殺の次は軍用機を空中爆破。スケールのデカいテロ行為で国家を危機に陥れるカビールを倒すため、ハーリドは遂に立ち上がる。かくして2人の男の壮絶なWAR(戦争)が始まるのであった。

 結構ストーリーを書いてるじゃねぇかと思ったそこの貴方、心配ご無用である。これだけでまだ全体の5分の1程度、前振り部分を書いただけにすぎない。本作はインド映画なので上映時間は151分と結構長めである。そうなると今度はダレるんじゃないか? と思ったそこの貴方、それも心配無用。本作は一瞬たりともダレる瞬間がない。絶対に観客を退屈させてなるものかと、とにかくあの手この手で観客の目を奪おうとする。信じられないほど金がかかっており、爆発しそうなものはだいたい爆発する

 ロケ地もインド、ヨーロッパ、北極圏と文字通りワールドワイド。北極圏の地でスーパーカーを爆走させるなど、うなるインド・マネーでブン殴ってくる系のゴージャスな見せ場が満載だ(この北極カーチェイスやバイクチェイスなど、完全に『ワイスピ』や『ミッション・インポッシブル』シリーズで見たやつだが、面白いからOKである)。

 そして潔いほど後先を考えていない脚本も素晴らしい。見ている今この瞬間に観客が「何だって!?」と前のめりになることだけを考えた、ハッタリ特化のストーリーテリングが炸裂。けっこう反則技に近い「実は、あの時……」のちゃぶ台返しを連発し、急展開のみで映画を引っ張る。起承転結でいえば、本作の構成は起転転(以下、151分「転」が続く)転転結だ。脚本の学校で出したら怒られるかもしれないが、たとえば「飛行機から飛行機に飛び移る」などのムチャクチャだけど面白い「画」の力で強引な展開が許せてしまう。最初から最後まで前のめりで、ツッコミを入れる暇がない。まさに近距離パワー型映画であり、映画の魔法を体感できること請け合いである。

 そして何よりはタイガー・シュロフである。登場シーンから、いきなり麻薬組織の取引場に窓を突き破って入ってきて、1カットで組織を壊滅させる勢いの良さ。本作はインドの大スターであるリティク・ローシャンとのW主演だが、アクション的には間違いなくタイガーのほうが目立っている(逆にセクシーなシーンではリティックが目立っている。素朴な疑問なんですが、どうやったら、あんなイイ男に産まれるんですか?)。

 ダンスシーンでも「サマーソルトキックで太鼓を叩く」など、派手な動きで目立ちまくりだ。見終わったあと、必ずやタイガーのファンになっているだろう。そして思うはずだ。このスターの魅力は国を動かせる、タイガー外交という言葉ができてもおかしくない、と。

 コロナ禍によって、我々は望まぬステイホームを強いられている。望んで家にいるならよいが、強制的に家にいろといわれると、どうしても気分が暗くなるものだ。予定が吹き飛んで暇な人も多いだろう。暗い気分で暇をしていると、ますます気分が暗くなる。本作『WAR ウォー‼』は、そんな暗い気分を間違いなく吹き飛ばしてくれるだろう。

 151分間、絶え間なく度肝を抜かれて「なにっ!?」とビックリし続けて、浮世のあれこれを忘れられるはずだ。あるいはいつの日かタイガー外交という言葉できた時に、「ああ、それの元ネタは知ってるよ」と国際情勢に詳しいパーソンになりたい方、押さえておいて損はないだろう。151分の娯楽であり、ひょっとしたら勉強にもなるかもしれない。まさに連休中に見るのに相応しい1本だ。

▽作品詳細
映画『WAR ウォー‼』
DVD & Blu-ray発売中
監督:シッダールト・アーナンド
キャスト:リティク・ローシャン、タイガー・シュロフ

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  • 例えで出してるけど、そもそもSee-Sawの「あんなに一緒だったのに」を知ってる人がどれだけいるのかが( ̄▽ ̄;)インド映画『WAR ウォーexclamation ��2』爆発×ダンス×男の因縁! 後先を考えない“起転転転転結”の痛快脚本
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