偶然生まれた「チャンピオンシップ」が川崎と名古屋にもたらしたもの

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2021年05月07日 06:31  webスポルティーバ

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 J1首位の川崎フロンターレと同2位の名古屋グランパスが、ホーム&アウェーで2連戦。それは偶然が重なった、異例の試合日程だった。

◆4月29日/J1第22節名古屋vs川崎
◆5月4日/J1第12節川崎vs名古屋

 AFCチャンピオンズリーグ(ACL)に出場するクラブが、他クラブに先んじてリーグ戦の試合を消化することは珍しくないが、さすがに同一カードが中4日で立て続けに行なわれるとなると、過去に例がない。

 もともとACLの試合日程に対応するため、変則日程が組まれていたうえに、ACLの日程が新型コロナウイルス感染再拡大の影響によって2カ月ほど後ろにずれ込んだことで、さらなる特別対応を余儀なくされた結果だった。

 しかも両日とも他にJリーグの試合は開催されておらず、ただでさえ注目を集める首位攻防戦は、一層特別感を増した。

 あたかも、J1年間王者を決めるチャンピオンシップが5年ぶりに復活したかのようだった。

 はたして注目の対決は、川崎の2連勝。しかも、2戦合計スコアは7−2である。




 シーズン序盤にして雌雄を決する"チャンピオンシップ"は、あっけなく昨季王者の圧勝に終わった。名古屋のセンターバック、DF中谷進之介が語る。

「2試合で7失点しているわけだから、今まで(10試合を)無失点で積み上げてきたものが、川崎には通用しなかったということだと思う」

"ファーストレグ"は、川崎が面白いように名古屋を攻め立て、4−0と先勝した。

 試合開始早々の3分、相手ゴール前での流れるような連係からMF旗手怜央が先制ゴールを決めると、川崎は前半のうちに3得点。試合終盤の84分にも追加点を奪い、名古屋を突き放していた。

 この結果を受け、"セカンドレグ"の名古屋は「自分たちでも修正するところは修正しながら戦った」と、名古屋のMF稲垣祥。「それがいい方向に表われていることも多々あった」と振り返る。

 しかし、名古屋が高い位置から川崎に圧力をかけ、主導権を握って進めているかに見えた試合も、31分にCKから川崎に先制点を許すと、後半59分までに計3失点。たちまち勝負は決した。

 その後、2点を返して1点差まで迫りはしたが、"たられば"で振り返るほど惜しい内容の試合ではなかった。

「やっぱり地力の差で負けた。今の僕たちの力を認識できた2試合じゃないかと思う」

 稲垣がそう続けたとおりだ。

 これで、首位の川崎と2位の名古屋との勝ち点差は9にまで広がった。今季はまだシーズンのおよそ3分の2を残しているのだから、十分に追いつくチャンスはあるとも言えるが、裏を返せば、およそ3分の1しか終わっていないのに、これほどの大差がついてしまった、とも言える。

 偶然が重なって生まれた"チャンピオンシップ"も、終わってみれば、川崎の強さを際立たせただけ。むしろ皮肉なことに、優勝争いへの興味を削いでしまいかねない結果となった。

 川崎の強さについては、改めて述べるまでもないだろう。

 チームとしての完成度の高さにおいても、選手個々の能力の高さにおいても、現在のJ1で抜きん出ている。一発勝負ならともかく、長いシーズンを通して川崎に対抗できそうなチームは見当たらない。

 事実、今季の川崎はここまで14試合を戦い、12勝2分け。まだひとつも負けていないどころか、引き分けすらふたつしかないのである。

 過去のJ1を振り返ると、ACLを掛け持ちすることの負担が、J1の成績に悪影響を及ぼすケースが少なくない。今季の川崎にしても、その強さに疑いはないとはいえ、昨季ほどには悠々と独走できないのではないかとも思われた。

 ところが、同じ14試合消化時点での成績を比較しても、昨季の川崎は11勝2分け1敗。今季は成績を落とすどころか、さらに上げている。昨季の1敗が名古屋に喫したものだったことも、今季の川崎がさらに強くなったことをわかりやすく示している、とも言えるだろう。

 ACLの大会方式や日程が変更になったことで、その負担がかかる前にセーフティーリードを奪ってしまった格好だ。

 カレンダーはまだ5月上旬にして、早くもタイトルの行方は見えてしまった。そう言ってもいいのかもしれない。

 むしろ気になるのは、異例の試合日程で割りを食う結果になった名古屋のほうだ。

 直接対決2連戦を前に、名古屋は勝ち点3差で川崎に食らいついていた。それまでの12試合では9勝2分け1敗。うち10試合が(9試合連続を含む)無失点で、総失点はわずかに3だった。

 ところが、川崎との2試合では計7失点。1試合ごとに12試合分の失点をまとめて喫したことになる。そのショックたるや、決して小さくはないだろう。依然2位につけているとはいえ、このままズルズル後退してしまわないかと、心配になるほどだ。

 大一番を制し、早くも独走態勢に入り始めた川崎とは対照的に、あっという間に勝ち点差を広げられた名古屋。特別な舞台設定が整い、大きな注目を集めた"チャンピオンシップ"は、それゆえ、両者の明暗を色濃く分けた。

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