リヤド・マフレズ活躍の理由。ルーツはマグレブ、ストリートサッカー出身

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2021年05月07日 17:11  webスポルティーバ

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サッカースターの技術・戦術解剖
第57回 リヤド・マフレズ

<マグレブのスター>

「君は日が昇る国から来た。私は日が沈む国の出身だ」

 フランスに住んでいた頃、時々そう言われた。彼らは「日が沈むところ」を意味するマグレブの人々だ。場所で言うと、アルジェリア、モロッコ、チュニジアなど西アフリカのアラブ諸国がマグレブで、フランスにはそこからの移民や、移民2世、3世の多くが暮らしている。




 ジネディーヌ・ジダンはマグレブのスーパースターだが、サッカー界にマグレブの名選手は大勢いる。というより、フランスではフィジカルが強いのは黒人、テクニックに優れているのはマグレブと決まっていたものだ。プロだけでなく草サッカーでも事情は同じだった。

 マンチェスター・シティの右ウイング、リヤド・マフレズはマグレブのスターの一人だ。パリの北側、サルセルという街で育った。父親がアルジェリア人、母親がアルジェリアとモロッコのハーフ、移民2世である。

「裕福でないのは間違いないが、貧乏というほどでもなかった」(マフレズ)

 フランスのサッカー選手は都市郊外出身者が多い、いや都市郊外からしか出ないと言っていいかもしれない。つまり、ほとんどは移民系だ。移民家族は仕事のある都市の郊外に住む。都市の中では家賃が高すぎ、地方では仕事がないからだ。

 長いバカンスの期間に、集合住宅の中庭でボールを蹴っていたジダン、カルフール(フランスのスーパーマーケットチェーン)の駐車場で、カートをゴールに見立ててミニゲームに明け暮れていたティエリ・アンリ...そうして彼らは技術を身に着けている。

 マフレズはバカンスをアルジェリアで過ごしたそうだ。その時のストリートサッカーの仲間にはプロになった者もいて、ウィサム・ベン・イェデル(フランス代表、モナコ)はその一人だという。フランス育ちのマフレズが「心はアルジェリアにある」と言うのは、原点のストリートサッカーの場所がアルジェリアだったからかもしれない。

 マグレブらしくテクニック抜群のマフレズは、地元のAASサルセルのユースで頭角を表し、カンペールというクラブと18歳でプロ契約する。1年後には2部リーグのル・アーブルへ移籍。当時、パリ・サンジェルマンやマルセイユからも声を掛けられていたのに、フランス最古のクラブで知られるル・アーブルを選んだ理由は、「ユースチームが良かったから」だそうだ。

 U−21のチームで1シーズン、その後トップに昇格している。マフレズは「良い選択だった」と振り返る。技術は優れていたが体は細く、カンペール時代の監督からは「コンタクトするな」と言われていた。フランスの下部リーグはリーグ・アンとは別世界で、極めてフィジカルなゲームが行なわれている。本人も適応期間が必要だと思っていたのだろう。けっこう堅実なのだ。

 ル・アーブルでの活躍から、イングランドのレスターへ移籍したのは2014年だった。

<雑草軍団レスターでの快挙>

「イングランドへ行くとは考えていなかった。あまりにもフィジカルだから向かない、スペインのほうが合うと、みんなにも言われていた」(マフレズ)

 しかし、レスターへの移籍は大正解だった。チャンピオンシップ(2部相当)では連戦連勝、それがアルジェリア代表への道を拓いた。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督(当時)はぎりぎりの段階でマフレズを招集し、ブラジルW杯の初戦ベルギー戦でプレーした。

 プレミアリーグに昇格したレスターは2015−16シーズンに奇跡の優勝を果たす。マフレズは17ゴール、10アシストでPFA(プロフェッショナル・フットボーラーズ・アソシエーション)年間最優秀選手に選ばれた。ジェイミー・バーディー(元イングランド代表)、エンゴロ・カンテ(フランス代表、現チェルシー)など雑草軍団の快挙だった。

「俺たちはプログラムされていないからね」(マフレズ)

 アカデミー出身のエリートと違い、日常生活から管理されてなどいなかった。ストリートサッカーのようなプレーをするマフレズは異質だったが、そうした様々な個性が融合していたのがレスターの面白さでもあったわけだ。

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 レスターの最初の監督だったナイジェル・ピアソンは父親のような存在だったという。ピアソンの後任となったクラウディオ・ラニエリはイタリア風の守備戦術を持ち込んだ。ラニエリ監督はマフレズに攻撃の自由を与えるとともに、「攻撃的かつ守備的にプレーしろ」と指示を与えている。ストリートの技術や感性だけでなく、よりプロフェッショナルな完成品に仕上げた。

<左で脅して右で仕留める>

 18年に加入したマンチェスター・シティで、マフレズは数少ない専業プレーヤーだ。

 5つのレーンを自在に動くチームメートたちと違い、マフレズは常に右のいちばん外のレーンでプレーする。ここでも異質な存在なのだ。

 1対1で仕掛けてチャンスをつくり、得点を生み出す。オールラウンダーたちのなかで、スペシャリストとしての価値を認められている。

 左足のタッチは独特、インサイドなのかアウトサイドなのか触る直前まで判別がつかない。シザーズの柔らかさ、切り返しの大きさとバランスの良さは、いかにもウイングプレーヤーである。

 左利きの右サイド。逆足のタイプでカットインからの左足のシュートが十八番だが、意外と右足のゴールも多い。完全な左利きと見せておいて、左のキックフェイントで裏返して右足というパターンだ。

 左が強力だからこそだが、左で脅して右でフィニッシュがうまい。1対1は心理戦の要素も大きく、このあたりの相手を手玉にとるセンスはストリート出身らしい。

 チャンピオンズリーグ準決勝、パリ・サンジェルマンとの第2戦では、シティを初の決勝へ導く2ゴールを決めた。右足で1点、左足で1点。ある意味、マフレズらしいバランスである。

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