『ワンパンマン』誰にも真似できないそのヒーロー像とは? 最強すぎる男の“満たされない心”

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2021年05月08日 17:31  リアルサウンド

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『ワンパンマン』真似できないヒーロー像

 ウェブコミック配信サイト「となりのヤングジャンプ」で2012年より連載され、原作をONE、作画を村田雄介が手掛ける漫画『ワンパンマン』。2015年、2019年にはアニメ化もされている人気作品である。


 主人公は最強ヒーロー「サイタマ」。就職活動に行き詰っていたところ、人類に害を成す「怪人」と出くわし、1人の少年を救う。そのできごとがきっかけで「自分はヒーローになりたかったのだ」とかつての夢を思い出し、ヒーローを目指す。しかし、ひたむきなトレーニングの結果得たのは、どんな敵もパンチ1発で倒してしまう最強の力と、“満たされない心”であった。


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■前代未聞 とにかく強すぎるヒーロー


 就職活動中に怪人に出会ったことがきっかけで、かつての「ヒーローになりたい」という夢を思い出すサイタマ。それから3年かけて、最強を手に入れた。どうやってそれだけ強くなったのか。サイタマと同じヒーローならば、理由が気になるところだ。いや、敵である怪人さえもその強さの理由を知りたがる。


 サイタマは言う。この強さの秘訣はトレーニングであると。具体的には腕立て伏せ、上体起こし、スクワット100回、ランニング10km。朝食はバナナでもいいから三食きちんと食べて、精神を追い込むために冬も夏もエアコンを使わない。そして1年半後、サイタマの頭髪は全てなくなっていた。つまり、ハゲるほど死にもの狂いで自分を追い込むことが強さの秘訣だと、サイタマは神妙な顔で語る。


 その話を聞いたサイボーグでサイタマを師と仰ぐジェノスはこう叫ぶ。


「ふざけないでください!」


 そんな冗談を聞くためにあなたのもとに来たのではない、とご立腹だ。ごもっともである。この程度のトレーニングなら現代社会でも行っている人は多いだろう。やっている人なら分かるはず。人より体が引き締まる程度である。とは言っても仕方がない。だって、本人はそれで強くなったと言っているのだから。


■なぜ、強いのか


 常人のトレーニングで最強を手に入れてしまったのだから、読んでいる側とすれば強い理由をどうしても考えたくなってしまう。もともと備わっていた才能が開花したのか、実はサイタマは嘘をついているのか、はたまた遺伝なのか、サイタマ自身も知らないうちに誰かから力を与えられたのか。


 とにかくどんな敵でもワンパンチで撃退してしまう。これだけ闇雲に強いとなると『暗殺教室』の殺せんせーなどが思い浮かぶが、彼には強くなった理由がある。もはや「よく分からないけど強いんです」だけで押し切られると読者側も納得せざるを得ない、納得せざるを得ないと思いつつも考察してしまいたくなるのがもはや罠のような気がしてくる。


 ワンパンチで終わってしまうものだから、話が続かない。どのようにして話が続くかというと、周りの弱いキャラクター(と言うと語弊がありそうだが)が懸命に戦い、ボロボロになっていく。最終的にサイタマが出てきて倒すのだ。それでもおいしいところを総取りという雰囲気にならないのが、サイタマの長所のひとつかもしれない。


■強すぎるヒーローが出てこられると困る


 ヒーローと言うと、弱かった者、もしくは自らの未知なる才能に気がつき、努力で研鑽を重ねて強くなり、強い敵と邂逅し、戦い、また強くなるのが定石だ。サイタマにはそれがない。すでに誰よりも強いからである。恐怖も喜びも怒りも緊張もない(サイタマ談)。


 ヒーローが強すぎるため、「敵が弱いだけでは?」などという疑いまで持ってしまう。しかし、その一方で、周りのキャラクターたちの奮闘が際立ってくる。本来、主人公が奮闘するシーンをほかのキャラクターがやっているのだ。ジェノスの佇まいなど、ヒーローと聞いて想像するヒーローの姿によほど近い。


 最強ヒーローで主人公であるにも関わらず、サブキャラクターのような空気を醸し出す。後にも先にもいない唯一無二のヒーロー像だろう。


(文=ふくだりょうこ)


このニュースに関するつぶやき

  • この程度のトレーニングなら現代社会でも行っている人は多いだろう←いやいやw
    • イイネ!2
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