新人の万引きGメンが、勤務中に万引き! 警察官の前で彼女がひた隠す「見られちゃいけないもの」とは?

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2021年05月08日 19:04  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

 こんにちは、保安員の澄江です。

 過日、とても恥ずかしい事件の報道を目にしました。大阪の現役保安員が、勤務経験のある大阪・ミナミの「ドン・キホーテ」で万引きをして逮捕、起訴されていた話です。被告男性は41歳。逮捕事案における被害品は、高級ブランドのバッグを計5点、合計11万円相当とのこと。その手口は、防犯ワイヤーを切断したうえで、狙った商品を店内倉庫に隠し、一旦外に出てから商品搬入口より店内に侵入して商品の回収を図るという悪質極まりないものでした。このほか、ドラッグストアで大量盗難事件(被害合計7万4,000円相当)を起こし、その犯行後に盗んだ商品を買い取り業者に持ち込み換金(およそ6万円)した事案でも立件されています。報道によれば、風俗店に勤める女性にプレゼントするつもりで犯行に及んだと話しているそうで、救いようのない人だと呆れた次第です。

 今回は、過去に私が経験した同僚の不祥事について、お話ししたいと思います。

 かれこれ15年ほど前の話になるでしょうか。休日に家でゆっくりしていると、普段は滅多に電話をかけてこない所属事務所の社長から電話がかかってきました。

「大変なことが起きた。澄江さんが担当しているMさんが、勤務中にいくつかの商品を裏に持ち込んで隠していたらしくてさ。店長に見つかって、警察沙汰になりそうなんだ」
「ええっ? なにかの間違いでしょう?」
「どうやら間違いないみたい。お休みのところ申し訳ないけど、取り急ぎ謝罪に向かうので同行してくれるかな」

 この日、彼女が入っていた現場は、東京都内の駅ビル内に位置するスーパーO。複数路線が乗り入れるターミナル駅と直結している繁盛店です。社長との通話を終えて、すぐに身支度を済ませた私は、いままでのことを回想しながら現場に向かいました。

 Mさんは、当時38歳。まだ入社から1年もたたない新人さんで、青白い肌と長い髪、それにどことなく寂しげな表情が印象的な女性です。この頃、新入社員の指導教育責任者の1人だった私は、彼女に課せられた新任研修のほとんどを担当しました。そのため、月に何回かは、業務上のことを中心に電話で話す関係にあります。話の中で聞いた個人的なことをかいつまんで話せば、離婚をして一人暮らしを始めたことがきっかけで入社されたそうで、研修中には久しぶりの仕事だから慣れるまで不安だと漏らしていました。どちらかといえば、真面目で重いタイプの女性といえるでしょう。彼女と最後に話した時、いつもより饒舌に自分のことを話し、近いうち再婚するかもしれないと声を弾ませていたことを覚えています。

 待ち合わせ場所である店舗の裏口前に到着すると、見たことがないほどに憔悴された社長が、異常なほど蒼い顔をした営業部長と一緒に待っていました。このクライアントが、会社の売り上げの4割を占めていることを思えば、それも無理のないことといえるでしょう。

 防災センターの扉を開くと、店長と駅ビルの警備隊長、それに男女2人の警察官に囲まれたMさんが、盗んだと思しき商品を並べた応接テーブルの横で床に伏して丸まっていました。軽く背中を叩きながら声をかけても、まるで反応しないので、店長を外に連れ出して状況を確認します。

「商品をロッカーに入れていたので声をかけました。本社の指示で警察を呼んで、おまわりさんが所持品を確認したら、ロッカーにあったバッグからも商品が出てきたんですよ。そこまでは普通にしていたんですけど、そのバッグの中にあった化粧ポーチに警察官が手をつけた途端に暴れて、それを取り上げてうずくまっちゃって。もうかれこれ10分くらい、この状況です」
「そうでしたか。誠に申し訳ございません」
「これ以上に、なにか見られちゃいけないものがあるんですかね。おたくの社員さん、大丈夫ですか?」

 被害品は、化粧品や健康食品など計6点、合計で1万2,000円ほど。この店で扱う商品のなかでも、ひと際高額な商品ばかりを盗んでおり、その悪質性は否定できません。それよりも、仲間であるはずである私たちの呼びかけにも応じることなく、ひたすらにうずくまって化粧ポーチを守り続ける理由が気になります。

「Mさん、頼むから、これ以上の迷惑はかけないでくれ。大事なお客様のところで、いいかげんにしてくれよ。私も一緒に謝ってあげるから、頼む」

 怒りに体を震わせながら、極力冷静に声をかける社長でしたが、Mさんは反応しません。業を煮やして、社員みんなで腕を取って立たせようとしても、より強固に身を丸めて抵抗してきます。その様子を黙って見ていた警察官が、嫌気の差した呆れ顔で言いました。

「見ての通り仕方ないので、まずは窃盗の現行犯で逮捕して、詳しく調べようと思います。ちょっと時間かかっちゃいますけど、被害届は出していただけますよね?」
「わかりました。こうなったら、とことんお付き合いします」

 警察に対して全面協力を申し出た店長に、再度深々と頭を下げた社長が言いました。

「この度は、本当に申し訳ございません。何卒、穏便にお願いいたします!」
「穏便に? もう遅いでしょう。本社にも報告しちゃったし」

 素気ない店長の様子に、失望を隠せない社長でしたが、警察官は構うことなく事務的に事を進めていきます。

「○時○分、あなたを窃盗の現行犯で逮捕します」

 警察官2人がかりで引き起こされたMさんは、抵抗空しく後ろ手に手錠をかけられました。深く項垂れているために、髪の毛で顔が隠れて表情は窺えませんが、歯を食いしばって身を捩る姿が病的で、別人のように見えます。自分の教え子といえる後輩社員が、目の前で手錠をかけられる現実は重く、自然と涙があふれ出ました。

「この中に、危ないものが入っていないか確認するから、一緒に見ていてくださいね」

 Mさんが死守していた化粧ポーチを拾い上げた女性警察官が、その中身を彼女の面前で確認すると、火力の強いターボライターのほか、ところどころが焦げているガラスのスポイトのようなものと、カラフルな和紙に包まれた結晶状の粉末が出てきました。

「これは、なにかな? 自分の口で言ってください」
「…………」

 警察官の問いかけに、項垂れたまま顔を背けたMさんは、なに一つ言葉を発さないまま警察署に連行されました。その後の調べで、和紙に包まれた結晶は、覚せい剤と判明。尿検査の結果もクロで、覚せい剤を使用した状態で勤務にあたり、商品を盗んでいた事実が明らかになりました。

 後日、留置場まで面会に行くも拒絶されたので、未払い分の給料を差し入れて、懲戒解雇の通知書は封書で送りつけることにします。すると、しばらくして拘留中のMさんから、返信の手紙が届きました。

 逮捕当日からいままで、合わす顔がなく、きちんとした謝罪もできず、本当に申し訳ありません。

 そんな謝罪の言葉から始まった手紙を読み進めると、付き合っていた彼氏の影響で覚せい剤を常用するようになったそうで、気がつけば夢中になり、自分を見失ってしまったという言い訳が書かれていました。どうやら彼氏はヒモのような人らしく、要求に応えているうちにお金が足りなくなり、現場で商品を盗んでは、ネットで売って換金したことも告白しています。

 その後、何度も契約先に出向いては謝罪をして、ようやくにお許しいただき、単価を下げることで契約解除は免れました。しかし、失った信頼を取り戻すまでの時間は長く、その損失は思いのほか大きかったです。

 好いた男に振り回された結果、仕事と信頼を失い、仲間に迷惑をかけ、獄にまで落ちた彼女にかける言葉はありません。離婚せずにいたら、彼女の人生はどうなっていたことでしょう。男に振り回されて堕ちていく生き方に触れ、彼女の人生は男次第なのだと痛感した次第です。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)

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