天龍源一郎が語る“相撲中継と巡業” 無観客相撲で天龍がNHKへ新たな実況解説を提言!

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2021年05月09日 07:00  AERA dot.

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写真天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ(撮影/写真部・掛祥葉子)
天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ(撮影/写真部・掛祥葉子)
 50年に及ぶ格闘人生を終え、ようやく手にした「何もしない毎日」に喜んでいたのも束の間、突然患った大病を乗り越えてカムバックした天龍源一郎さん。人生の節目の70歳を超えたいま、天龍さんが伝えたいことは? 今回は「相撲中継と巡業」をテーマに、飄々と明るくつれづれに語ります。

【写真】退院して天龍さんがやったこととは?

*  *  *
 最近、ようやく花粉が落ち着いてきたね。俺はプロレスのアメリカ修行時代にテキサスにいて、その頃から「春になるとやたらとくしゃみが出るなぁ」と思っていたんだ。

 それからずっと春になっても「鼻がムズムズするだけ」と言っていたけど、最近になって周りから「それが花粉症だ!」と指摘されてようやく認めるようになった。俺が花粉症になった原因は絶対にテキサスのコロコロ転がっているダンブルウィードとファンクスの家の草だ!(笑)。

 さて、いよいよ今日から相撲は五月場所が始まる。また何日かは無観客になっているけど、この後はお客さんを入れてくれるのかな? まあ、力士にとってみれば、とにかく勝たなきゃ番付が上がらないし、観客の有無はあまり関係ないと思うけどね。相撲取りって、目の前の勝負に没頭するもんでね。それでも取組前は「張り手が来るんだろうな……」、「耳の鼓膜が破れたら嫌だな……」という負の思いが駆け巡るのも正直なところだ。

 いやあ、現役の頃を思い出すね。次、自分の取り組みだなっていうときが一番ドキドキしてきてね、汗が脇の下からまわしのところにまで流れて、控えで立っている時に、立っている足型が汗でつくんだ。ドキドキしているのと気持ちがグッと入るので、足の裏からも汗が出る。控えから力士が出ると、その人の足跡がキレイに残っているくらい緊張しているのが分かるんだ。俺らのときには大鵬さんでも同じようなもんだったよ。

 特に自分より格上の力士と対戦するときは顕著だ。でも、相撲って、手をついたり、ちょっとでも土俵から出たら負けだから「相手が横綱でも、もしかしたら勇み足で勝つかもしれない。足を滑らせて勝てるかもしれない」って思って、そこでようやく「エイ! やってやろう!」と、ようやく肝が据わって立ち上がるんだ。絶対に勝てないと思っている相撲取りはいない。

 力士はそれほどの緊張感の中で相撲を取っているんだから、NHKの大相撲中継も無観客だったらブースで解説しないで客席に出てきて、力士に声が聞こえるくらいの位置で解説をすればいいと思うんだよ。お互い緊張感を持ってね。解説者の「あぁ。いまのダメですね」とかやり取りが力士に聞こえれば、変な相撲は取れないし、解説者も変なこと言えないって頑張るよ! 聞こえるところで解説者の北の富士さんに「頑張ってほしいですね」なんて言われれば、力士も「あ、俺の事頑張れって言っていた」って励みになる。

 現役の力士は、解説でいろいろ言われるのは「うるせえなぁ」と思うところだけど、北の富士さんに褒められると喜ぶ力士は今でも多いだろう。こんな人はなかなかいないよ。いろいろ言っても、語り口の柔らかさでみんな味方にしちゃう。俺も見習いたいもんだね(笑)。 

 こんな状況だから地方巡業もなかなかできないね。相撲甚句や初っ切りが見られるのも、巡業の楽しみのひとつなんだけどね……。相撲甚句は各部屋で歌の上手いやつを若者頭が推薦される。500〜600人いる力士から6人くらいだから、よっぽど声がいいとか、プロ並みに歌が上手いというやつらがやるもんなんだよ。相撲甚句はエリート部隊だ。

 でも、今の若いお客さんは「後妻」とか「間男」なんていう言葉にピンと来ないから、昔は拍手が出るところで無かったりとか、俺が聞いていてまどろっこしく感じる部分もある。「親子は一世、夫婦は二世、主従は三世、間男はヨセ、ヨセ(四世)」といっても通じなかったりね。昔はこぶしがきいてる歌いまわしに喜んで拍手をくれたもんだけど、今はちょっと違うのかな? 落語も古典をやるにしても、マクラに新しいいまどきのことをしゃべったりしてるから、相撲甚句も新しいことを入れないといけない時期なのかな。なかなか難しいね。

 そういう面で初っ切りは新しいことをどんどん取り入れているよね。さらに、相撲甚句は6〜7人いるが、初っ切りはたった2人だから、よほどセンスのあるやつじゃないとできない。臨機応変に立ち回って、プロレス技を取り入れたりしてね。時代に合わせてお客さんに飽きさせずに楽しませる。これは、センスがいるし、ちゃんとしていないと無理だよ。俺は相撲甚句や初っ切りをやりたいなんて、そんなこと思う余裕もなかったからね。地方巡業を心待ちにしているファンも多いだろうし、相撲の本場所も早くお客さんの前でできるようになるといいね。

 まあ、俺はどっちにしろ退院したばかりでおとなしくしてなきゃいけないんで、五月場所は家で観戦だ。こんな時期だから相撲だけじゃなくて、ゴールデンウイークも旅行に行きたくても行けない人が多かっただろう。そういう時の旅番組はいいね。家で座ってるだけで、世界中に行った気になれる。

 そんな旅番組を見ていると、昔、俺もテレビの収録で女房とスペインに行ったことを思い出すよ。トランジットでソ連に2〜3時間滞在したりしてね。まだロシアがソ連だった時代だ(笑)。その時の俺は、海外といえばアメリカしか知らなかったし、国境越えのフライトを体験したことがなかったから、国境越えの乗り換え便があるのは刺激的だったよ。ヨーロッパは当然、アメリカと文化とは街も建物も食べ物も、すべてが違って楽しかったね。

 そうそう、スペインで闘牛場に行ったらなぜか東スポの記者も来ていて、カメラを構えて「天龍さん、ちょっと牛にちょっかい出してください」なんて言ってきたよ。ふざけるな!(笑)。結局、その記者も車に乗せて、女房と3人で山岳地帯をず〜っと走り回ったことを今でも覚えている。小高い丘が連なっている風景を見て3人で「寝っ転がっている馬場さんの背骨みたいだな」なんて言いながらね(笑)。またこんな旅行が普通にできる日が戻ってくるまで、みなさん頑張りましょう!

(構成・高橋ダイスケ)

天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。

このニュースに関するつぶやき

  • モノマネだけど 松村邦洋が 貴闘力のモノマネすると磯山さやかが 通訳する  誰か通訳しないと 聞き取れないかも https://mixi.at/a8dcES9
    • イイネ!2
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  • もうプロレスも大相撲も父との遠い思い出にしまったままだけど、こんな話は今は楽しめてホッと(^^)v。→
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