明神智和が考える「現代サッカーの“黒子”に必要なこと」

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2021年05月09日 07:01  TVerプラス

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サッカー元日本代表の明神智和が、5月8日放送のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20〜)にゲスト出演。チームを縁の下から支える“黒子”としての役割について語った。

日韓ワールドカップで日本代表を指揮したフィリップ・トルシエ監督に「完璧なチームとは、8人の明神と3人のクレイジーがいるチームだ」と言わしめた明神。番組アナリストの北澤豪は「トルシエ監督は、スター選手ではなく、チームを機能させる選手にかなり注目していた」と言い、その中でも明神の存在は大きなものだったという。

そして、かつてチームメイトだった稲本潤一(FC相模原)が、明神について「身体的なモノではなくて、考えるスピードがものすごく早かった。一つ一つのポジション修正やバランスを見ることは神経がいるのですが、それをやり続けた本当にすごいプレーヤー」と評せば、明神がベストパートナーに挙げる遠藤保仁(ジュビロ磐田)も「危機察知能力が高くて、先を読む力があった。ピッチからいなくなると効いていたとわかる一緒にプレーしていて助かる選手」と絶賛した。

番組では、このプレースタイルを確立するに至った4つの要素を紹介。1つ目は「ライバルは据えるが比べない」。20代前半、同年代の同じポジションの選手のプレーを必要以上に気にしていたことがあるという。明神は「ライバル心から自分を高めようとする意欲的な部分は大事ですが、それによって自分を見失ってはいけない」と話した。明神にとってのライバルは、1学年下のいわゆる“黄金世代”。稲本潤一、小野伸二、遠藤保仁、中田浩二といったワールドユース準優勝メンバーたち。

明神自身、中学高校から10番と言われるプレーに憧れていた。しかし、そのようなプレーが得意ではなくコンプレックスを抱えていた。そんな中で黄金世代のプレーを目の当たりにして「自分にできること、できないことが分からなくなっていた」と当時を振り返った。しかし、ユース世代の時に指導を受けた山本昌邦の言葉が明神の未来を変えた。「一人ひとりがボールに触る時間は2〜3分で、それ以外はボールを持っていない。その持っていない時間で何をするかが重要」と言われ、「自分の生きる道はこれかもしれない」と感じ、周囲とのバランスを常に意識しながらチームを機能させることを優先するプレースタイルを獲得していったという。

それを体現するために心掛けたのが2つ目の「人を知ろうとすること」。明神は「サッカーは団体スポーツなので1+1=2ではなく、できるだけ大きい数字にしたい」と述べ、その為には、サッカー以外の生活の中からも、その人がどういう性格で、どのような考えの持ち主なのか、お互いに気持ちよくプレーするにはどうしたら良いのかを考えていたという。

そして3つ目が「自分の価値を意識すること」。プロのサッカーはお金を払って観てもらうものなので「来てよかった」と思ってもらうことを強く意識していたという。その考えに至ったのは、2006年にガンバ大阪に移籍した時のこと。前年にJ1を制覇したガンバ大阪は、明神をはじめ、マグノ・アウベス、播戸竜二、加地亮といった実力者を獲得。すると、当時の佐野泉社長に「君たちには全体で8億使った。活躍してくれなきゃ困る」と言われ、このクラブに恩返ししなくてはいけないと感じたという。

最後の4つ目は「鈍感力」。明神自身、周囲の目を気にしてプレーがうまくいかなくなることがあった。しかし、渡辺淳一のベストセラー本「鈍感力」を読んで「周囲の目を気にする必要はない」と考えるようにした。また、今の時代だとSNSなどのコメントで様々な評価を受けることがあるが、自分でコントロールできないものに動かされても悪い方向にいきがちなので「それならば気にしないで良い」と、時に鈍感であることの大切さに気付いたという。

北澤は「いつも70〜80点をキープできていて、それが凄いと思っていたけれど、内側ではいろんな思いがあったんですね」と語ると、「表情には出ないかもしれないですけれど、悩みすぎて胃が痛くなって、練習に出られなくなったこともあった」と明かした明神。これを聞いて番組MCの勝村は「こんなすごい人でさえも悩むことがあるのだと知って、子供たちも安心する」と話していた。

最後に“未来の黒子”に必要なことを聞かれると、「サッカーが変わり、守備だけをしていればいい、点だけを取ればいいという時代ではなくなった。しいて言うなら、守備が得意な選手やボールを奪うことが得意な選手が必要になってくると思う」と語り、「今でいえば遠藤航選手(シュツットガルト)、守田英正選手(サンタ・クララ)を見てしまう。そういう選手が楽しみ」と期待を寄せていた。

すると北澤は「ピンチをあそこで防いでいるから、大きなピンチにならない。奪えているからチャンスのスタートを作れている。そう考えていくとチームの中心なのかもしれない。どうしても黒子という言い方になってしまうけれど、チーム全体を機能させている。それは明神さんがやっていたこと」と語り、勝村も「最終的に自分がやりやすいようにまわりを動かしている。まわりを輝かせるために自分は輝きを消すけれど、実は誰よりも輝いている」と語っていた。
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