路上で「地蔵」になるウーバー配達員、脅迫のようなメールも…悪化する労働環境に疲弊

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2021年05月09日 08:00  AERA dot.

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写真好きな時間に働ける自由さに魅力を感じ、フードデリバリーで働く人が増えた。コロナ禍の失業者の受け皿にもなっているが、ひずみも出ている(撮影/写真部・高野楓菜)
好きな時間に働ける自由さに魅力を感じ、フードデリバリーで働く人が増えた。コロナ禍の失業者の受け皿にもなっているが、ひずみも出ている(撮影/写真部・高野楓菜)
 今や都市の新しい風景にもなったフードデリバリー。配達員は、コロナ禍の雇用の受け皿にもなった。だが、彼らは「個人事業主」。急成長の陰で、労働環境の悪化が浮き彫りになってきた。AERA 2021年5月3日−5月10日合併号で取材した。

【写真】「人間扱いされていない」と労働組合トップになったウーバー配達員はこちら

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 世界を一変させた新型コロナウイルスは、都市に新たな風景を生んだ。四角い大きなバッグを背負い、自転車やバイクでさっそうと街中を走り抜けるフードデリバリーだ。

 朝10時。横浜に住むシングルマザーのエミリアさん(ハンドルネーム、24)は小学1年の息子(7)が登校すると、原付きバイクに乗り配達に出かける。

「雨の日は注文が多くなるので大変。スリップが怖くてノロノロ走ってます」

 彼女は、フードデリバリー「ウーバーイーツ」の配達員だ。

 飲食店で働いていたが昨年6月、コロナ禍で店が突然休業になった。収入は途絶え、貯金もない。シングルマザーで昼間も働ける仕事を探したが、見つからない。そんな時、母親が紹介してくれたのがウーバーだった。

 昨年10月に配達を開始。近くに住む祖母に子どもを預け、配達料の上積みが期待できる夜も働き、月10万円近い収入を得られるようになった。最近はネット配信など別の仕事も始めたので、1日1万円を目標に週3〜5日ほど稼働する。ウーバーがなかったら、職を失い仕事がない時は精神的に追い詰められていたと振り返る。

「働いたら働いた分だけちゃんとお金が入る安心感ってやっぱり大事。仕事に対する意欲が向上します」(エミリアさん)

■利便性とコロナで急成長 デリバリーを支える配達員

 ウーバーは、米IT大手のウーバー・テクノロジーズが手掛けるオンラインの食事配達サービスだ。2015年にカナダでサービスを開始し、翌16年9月に日本に上陸した。

 利便性と、新型コロナ禍での「巣ごもり需要」を背景に急成長。今やウーバーと日本発の「出前館」の2強に、フィンランド発の「ウォルト」、日本発の「menu」、中国系の「DiDiフード」、国内ベンチャーの「チョンピー」、ドイツ企業傘下の「フードパンダ」など、国内外から新規参入が相次ぐ。

 デリバリーを支えるのが配達員だ。配達用のバッグと自転車かバイク、連絡を受けとるスマートフォンさえあれば、自分の都合に合わせて働くことができる。会社に縛られない「自由な働き方」として肯定的にとらえられることも多い。

 そして、コロナ禍で失業者が10万人を超える中、雇用の受け皿にもなってきた。ウーバージャパンによると、同社の配達員は全国に約10万人、35都道府県でサービスを展開しているという。

 市場調査会社「エヌピーディー・ジャパン」(東京)によると、国内のフードデリバリーの市場規模は、20年は6264億円と前年比50%増になった。

 すさまじいスピードで拡大するフードデリバリーだが、その陰で、配達員は厳しい状況に陥っている。

 東京・新宿。マクドナルドの前には、フードデリバリーのバッグを抱えた配達員が何人も集まっていた。彼らは「地蔵」と呼ばれる。まるで道端の地蔵のように動かず注文を待っているからだ。

「仕事の奪い合いです」

 地蔵をしていた男性(36)は、疲れた顔で話す。PR会社で働いていたが人間関係に疲れ、2年ほど前からウーバーの配達員を始めた。以前は週5日働き、月30万円以上の収入があった。だが、コロナ禍で仕事をなくした人たちが配達員に流れてくるとパイの奪い合いで、収入は一気に半分近くに減少。今年から他社のデリバリーの掛け持ちを始めたが、収入は3割近く減ったまま。妻子がいるという男性は言う。

「何の補償もないし、そろそろ潮時」

 地蔵をしていた別の男性(41)も「体力的にもきつい。稼げるうちに稼いでおかないと」と疲れた体にむちを打つ。

 配達員の疲弊の背景には、デリバリー業界が抱えるいびつな構造がある。

 ウーバーをはじめ多くの運営会社の配達員は、運営会社が提供するスマホアプリを介し、飲食店と配達ごとに業務委託契約を交わす「個人事業主」。運営会社とは雇用関係になく、労災や雇用保険の適用対象外で、所得補償も不十分だ。そうした中、労働環境のさらなる悪化が懸念されている。

 3月上旬、東京・永田町の衆議院議員会館でこんな緊急声明が出された。

「あまりに不当な料金で配達員の生活を破壊している。直ちに中止すべきだ」

 声明を出したのはウーバーの配達員ら約30人でつくる労働組合「ウーバーイーツユニオン」。3月1日から福岡市と京都市で導入された新料金体系への抗議声明だった。新体系になると配達員の報酬が平均3割減り、ウーバーに問い合わせても明快な仕組みは説明されない。ユニオンは、配達員への公式な説明と減額分の補填(ほてん)などをウーバーに求めた。

 同ユニオン執行委員長の土屋俊明さん(44)によれば、その後、報酬は再び上がったという。ウーバーイーツ日本法人は本誌取材に、新料金体系の導入は行ったがユニオンが主張するような「事実はない」と回答。ただ土屋さんは、状況は悪化していくだろうと見る。

「世界的に見て多くのデリバリー業界は、サービス開始当初の報酬がもっとも高く、そこから落ちていくビジネスモデルと言われています。まず目の前にニンジンをぶら下げ、少しずつ報酬を下げ、最後はニンジンがなくなっても気づかずに走らせる。働き手がいなくなると、『損切り』してその国から撤退する。すでに韓国のウーバーイーツは、競争が激しく不採算が続いたため撤退しました」

(編集部・野村昌二)

※「後編」の「ウーバー配達中の事故がきっかけで労働組合委員長に 当時「人間扱いされていない」と感じた理由」に続く

※AERA 2021年5月3日−5月10日合併号より抜粋

このニュースに関するつぶやき

  • 正直、いくらパンデミック禍とはいえ、これら(かなりブラックな)事業形態に頼らざるを得ない労働環境に違和感しか覚えない。
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  • まあそうだろうな https://mixi.at/a8dVGyw
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