なぜ10GBまで1GB刻みに? 「イオンモバイル」新料金プランの狙いを聞く

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2021年05月11日 06:12  ITmedia Mobile

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写真4月1日から料金プランを改定したイオンモバイル
4月1日から料金プランを改定したイオンモバイル

 大手キャリアがオンライン専用プラン、ブランドを導入し、メインブランドでの値下げにも踏み切る中、MVNO各社も対抗策を打ち出している。「イオンモバイル」を展開するイオンリテールも、その1社だ。同社は4月1日に料金プランを全面改定。既存のユーザーに対して値下げするのと同時に、10GBまでのデータ容量を1GB刻みにした「さいてきプラン」を導入し、その細かさが話題を集めた。



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 10GB超の料金プランも「さいてきプラン MORIMORI」と位置付け、値下げした。20GBの料金は2398円(税込み、以下同)と、大手3キャリアのオンライン専用プランより低い価格を打ち出している。また、60歳以上限定で500kbpsに通信速度を絞った低料金の「やさしいプラン」も、さらなる値下げに踏み切った。繰り越しなど、従来プランで好評だった特徴は継承する。



 値下げの反響は大きかったというイオンモバイルだが、1GB刻みのデータ容量を、本当にユーザーが選べるのか。新料金プラン導入の狙いや、4月1日以降の反響を同社に聞いた。インタビューには、イオンリテールの住居余暇・H&BC本部 アプライアンス商品部 モバイルユニット ユニットリーダーの河野充宏氏、同 イオンモバイル商品マネージャーの井原龍二氏、同 イオンモバイル通信開発リーダーの間野耕司氏が答えた。



●携帯業界以外では、ユーザーが自由に選べる環境がある



―― 10GBまでの料金プランが1GB刻みというのは、驚きました。なぜこのような料金プランを打ち出したのでしょうか。



河野氏 菅(義偉)総理が「値下げの余地がある」と発言したあと、大手キャリアのサブブランドがまず値下げをしました。それで終わりかと思っていたところに、12月3日のahamoの発表があり、20GBで3278円(現在は2970円)という衝撃的な価格を打ち出しています。ahamoは20GBでワンプランだったので、そこまで使うかという感覚はありましたが、一方でMNOがそこまで下げてくると価格だけでは差別化が図りづらくなります。どうやって競合他社と差別化していくかは考えました。



 それと同時に、イオンモバイルではお客さまの声を常に伺っています。12月に行ったユーザーアンケートで多かったのは、繰り越しプランに対する評価の高さで、これは私たちの想像以上でした。もともと2GB刻みの料金プランをやっていましたが、そこが自分にピッタリ合っているという評価が多かったんですね。それを踏まえ、お客さまにとってどんな料金プランがいいのかを考えていきました。



 他社の料金プランを見ると、3GBの上が一気に15GBや20GBに跳ね上がってしまうことがあります。それがお客さまにとって便利かというと、そうではありません。例えば、ランチに行ったときに、お腹が空いていればたくさん食べますが、ウエストが気になるから少し減らしたいということもありますよね。洋服も、たくさんサイズがあり、選べるようになっています。つまり、携帯業界以外では、お客さまが自由に選べる環境が当たり前のようにあるということです。



 総務省の統計を見ると、8割の方のデータ通信量は10GB未満です。であれば、10GB未満に特化した方がいいということで、1GB刻みで100円(税別)ずつ違うプランにさせていただきました。その中で1つ重要な決定もしています。既存のユーザーに対する値下げもしっかりしました。イオンモバイルは、50万以上のお客さまに支えられているので、まずそこに対する値下げをする決定をした後、料金プランの検討をしました。ARPUが下がる決定ですが、狙い通りの評価をいただいています。



―― アンケートの結果を、もう少し詳しく教えていただけますか。



井原氏 12月末にマイページで募集し、1011人からアンケートを取りました。利用をし続けたい、利用したい、他の人に推奨したいというユーザーをロイヤルカスタマーと位置付け、もともと契約前にどういうことを期待していたかを伺っています。安くなることや、料金プランが分かりやすいことは、想像通りでした。



 一方で、契約後にどうだったかを伺うと、余ったデータ容量が繰り越せることが一番大きな結果として出ていました。こんなに繰り越しがいいのであれば、1GB刻みにすればもっとよくなるのではということで、今の料金プランを作っています。以前の料金プランは、データ容量が偶数だけでしたが、小刻みにすることで結果的に簡単に選べるようになりました。例えば、4GBだと、UQ mobileと比較しても1200円ぐらい差が出るようになっています(UQ mobileは3GBの次が15GBのため)。



●データ容量の繰り越しとプラン変更で安くできる



―― ただ、1GB刻みをユーザー自身が選ぶのは難しいような気もしています。この辺は、店頭でのサポートが強力なイオンモバイルならではということでしょうか。



河野氏 店頭にはスタッフがいるので、相談ができます。どのぐらいお使いですかと伺って、ご提案をしています。われわれは小売業なので。1GB刻みの料金プランはむしろスーパーとして当たり前の発想なんです。単身赴任の方が増えたら1人用の食品を用意しますし、魚も切身で販売します。



間野氏 接客できる従業員がしっかりいるのは大きいですね。接客の際には、料金重視かデータ容量重視といった最適な使い方をしっかりヒアリングしています。従業員には、お客さまのプランを設計するという気持ちを持ってほしい。ここからどうぞというのではなく、最適なプランを選んでわれわれから提供するということです。そこが他社のやり方と大きく違うところです。シニアの方も含め、一緒に料金プランを考え、最適なプランを選んでいただきたいという思いがあります。



井原氏 一番人気は4GBプランで、ユーザーにはデータ容量が余ったら翌月少なくしてもいいとお伝えしています。迷っているなら、取りあえず3GBや4GBに申し込み、月末に少ない容量に切り替えれば、無駄なく使えます。店頭では、さらに接客しやすくなったと好評ですが、実はWebの方が伸びているんです。



―― それは意外です。ユーザーによっては月ごとの変動が多いと思いますが、プラン変更で対応するということでしょうか。



井原氏 マイページは簡単に見られます。例えば5GBプランを使っていて、2GB余ったら、翌月から2GBに変更すれば計4GB使えて料金も下がります。それでも余ったら、今度は1GBプランにすればいい。この使い方でプランを変えていくと、3GBプランをずっと契約しているより安く使えます。



 料金プランは、月末の前日まで変更できます。マイページのトップには料金プラン変更の入口を設けていて、プラン選択が簡単にできるようにしています。実際、プラン変更の量も多く、毎月何万件も受け付けています。



―― イオンモバイルの場合、シニアの方が多い印象がありますが、プラン変更が多いというのは驚きです。



井原氏 僕らもそういったイメージがなかったのですが、繰り越しがいいというシニアも多くいます。シニアと言っても、リテラシーの高い方が多いのかもしれません。店頭でご説明しているのも、大きな差だと思います。



―― 段階制にして、自動で最適な料金になるような設計もできたと思いますが、そういったことは検討されたのでしょうか。



河野氏 していません。段階制プランはお客さまにとって、便利ではないからです。もともと料金を下げたくてイオンモバイルに来ているのに、気づいたら料金が上がってしまうのは怖くて使いづらいと思います。ですから、料金についてはデータ容量を超えたら速度が遅くなるという設計にしています。足りない場合は、1GBあたり528円のクーポンも提供しています。



●4〜5GBプランが主軸、20GBプランのユーザーも増えている



―― 先ほど4GBが一番人気というお話がありましたが、容量はそこに集中しているのでしょうか。



間野氏 改定前後の比較では、1GBから3GBまでの低容量が大きく減りました。結果として主軸となっているのが4GB、5GBで、大容量はahamoを検討したような方が、14GB以上、30GBぐらいにいます。やはり店頭サポートや端末の修理をどうしようと考えるようです。全国211店舗でしっかりとしたサポートがあり、かつ20GB同士で比べても比較的安いということで、大容量を選ばれる方もいます。ただし、全体感としては、1〜3GBより上のプランを選ばれる方が増えています。



井原氏 料金的に今まで一番安かったのは500MBプランでしたが、値下げの結果、それぐらい出すなら、ということで4GB、5GBのプランを選ぶ方が増えています。



―― ということは、データ容量の平均は上がっているということですね。



井原氏 はい。上がっています。



間野氏 シニア専用プランのデータ容量が大きくなったことも影響しています。やさしいプランは3GBで1078円ですが、最安のプラン(200MB)との差は110円しかありません。やさしいプランの通信速度は500kbpsですが、店頭でヒアリングすると、天気予報やYahoo!のニュースを見る他は、お孫さんとLINEをするぐらいという方も多く、本当にLTEの速度が必要かどうかはしっかり検討する余地があると感じています。そういったことも、イオンモバイルなら提案できます。



―― 大容量プランも増えているという話がありましたが、こちらはどのようなユーザーが使っているのでしょうか。



井原氏 20GBが増えているのは、シェアの関係もあります。シェア音声プランの20GBの料金は2728円ですが、家族4人で使うと4048円、1人あたり1012円で5GB使えます。シェアプランをやっているところが減ったのも大きいと思います。



●ahamoで乗り換えが止まるも、4月1日以降に山が戻ってきた



―― 一方で、ARPUは下がったのではないでしょうか。



井原氏 単価が下がったので、落ちましたね。全員一律で下がったので。一方で、容量は増えています。



―― 値下げ発表が比較的早かったですが、どういった経緯でこの金額が決まっていったのでしょうか。



井原氏 もともと接続料は下がると言われていました。将来原価方式で33万2000円(ドコモの21年度、10Mbpsあたり)という金額は出ていましたが、それ以上に下がるという話は出てきていました。音声の基本料も、総務省や構成員からは、確実に下がるという話が出ていました。イオンモバイルは、MVNEから回線を仕入れていますが、その辺も含めてご相談させていただき、何とか3月頭に発表することができました。



―― 50万のユーザーというお話がありましたが、料金プラン改定後、獲得は増えていますでしょうか。



井原氏 純増数は上がっています。特にECが伸びています。19年ぐらいにMVNOは少しシュリンクしていましたが、それ以前に戻ってきた手応えがあります。(料金プランの改定で)市場自体が活性化しているのもありますが、その中でも伸びています。



河野氏 4月1日以降は、乗り換えも多いですね。ahamoの発表以降、乗り換えが止まっていたため、3月はいつものような山はありませんでしたが、4月1日以降、一気に山が戻ってきました。乗り換えということで、長く使っていただけるお客さまの契約が増えているのだと思います。



―― それは、MVNOの料金改定を待っていたということでしょうか。



河野氏 そうだと思います。



井原氏 結果として全員が値下げになるので、いつ契約しても変わらないんですけどね(笑)。ただ、MNOが転出料を無料にした影響もあると思います。



●申し込み手順を短縮したことでオンラインでの申し込みも増加



―― ECの伸びが大きいとのことですが、現状、どの程度の比率なのでしょうか。



井原氏 以前は8%程度でしたが、最近は30%程度がオンラインです。昨年(2020年)4月以降、コロナもあり、比率は一気に上がっていきました。申し込み手順が24工程もあり、煩雑過ぎたので、それを8工程に縮めたのが大きいと思います。



間野氏 エントリーパッケージを店舗で購入して、Webで申し込めるサービスを昨年9月にほぼ全店のイオンで開始しました。そこでも、ECの申し込みが増えています。



井原氏 PayPayモールにも11月に出店させていただきました。SIMでは一番売れています。



河野氏 一方で、店舗への来店は60代、70代の方が多いですね。ガラケーを使っていて、スマホに変えたいが不安という声を多く聞きます。1年半ぐらい前から、Googleアカウントの設定やLINEの引き継ぎを有償でやらせていただいていますが、こちらも非常に好評で、イオンに行ったらやってくれたという口コミが広がっています。今後、3Gのサービスがどんどん終了する中で、サポート体制が整っているのはイオンモバイルとして差別化ができるところです。



―― MVNO全体を見ても価格競争が激しく、イオンモバイルより安い会社もありますが、この動きをどう見ていますか。



河野氏 今までは業界最安級をうたってきました。今回も頑張って交渉はしてきましたが、既存ユーザーへの値下げを最優先にすると、なかなか難しい。ARPUが下がってしまうことを踏まえると、現状の価格が現時点での最大限の結果だと考えています。もちろん、今後も接続料は下がっていきますので、これで終わりではありませんし、1GB刻みというところを評価していただければ戦っていけると思います。



井原氏 それに加えて、今お話ししたように、われわれには211の店舗があります。店舗がある通信事業者という限定の仕方をすれば、業界最安です。故障修理対応はお店でやっていますし、コールセンターもフリーダイヤル、チャットもやっています。そこまで含めて見ていただければ、安いのではないでしょうか。



●完全かけ放題のニーズは少ないが、やらなければいけないこと



―― OCN モバイル ONEのように、音声接続(プレフィックス自動付与)を使った音声定額を導入するMVNOが出てきています。イオンモバイルではいかがでしょうか。



河野氏 私どものご契約者の中で、音声定額を利用されているのは2、3割で、基本的にはご家族や友人との通話にはLINEを使っている方が多いと見ています。そのため、完全かけ放題のニーズは今のところ少ないと見ています。



間野氏 ただ、音声接続だと通話料を安くすることもでき、使い勝手のよさにもつながります。一方で、われわれはドコモ回線だけでなく、au回線も取り扱っています。2つの回線で足並みをそろえていけるのかというのは、今、検討している段階です。「イオンでんわ10分かけ放題」をその中でどう位置付けていくのかという話もあります。いずれにせよお客さまの料金が下がるのは有意義なので、どう実現していくのかはまさに今、検討しているところです。



井原氏 お客さま目線で考えると、やらなければいけないことです。やはり苦情の中で多いのは、(イオンでんわの)アプリを使わず電話をかけてしまったというものです。iPhoneだと、アプリ電話の着信履歴が非対応で、不在着信から発信すると通常の電話になってしまうからです。



●取材を終えて:データ容量の繰り越しと手厚いサポートが武器に



 1GB刻みで細かすぎると思ったイオンモバイルの新料金プランだが、その背景には、ピッタリのデータ容量を選べる繰り越しと、イオンが提供するMVNOならではの手厚いサポートがあった。金額だけで見ると、確かにイオンモバイルより安いMVNOは存在するが、データ容量の選択肢が限定的だったり、受付がネットだけだったりするため、全てのユーザーにとっての最適解とはいえない。イオンモバイルの新料金プランは、その隙間を突いた格好だ。一方で、ユーザー層を踏まえると、音声接続の提供は喫緊の課題といえる。今後のサービス提供に期待したい。


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