「すみません」連発の日本の子育てに疑問 よちよち歩きの子どもが道をまっすぐ歩けるだけで奇跡

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2021年05月11日 07:00  AERA dot.

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写真アメリカ・アラバマの道路は広く、ほとんど人がいないので道をよける気遣いもいらない。東京ではなかなかこうはいかないけれど(写真/著者提供)
アメリカ・アラバマの道路は広く、ほとんど人がいないので道をよける気遣いもいらない。東京ではなかなかこうはいかないけれど(写真/著者提供)
「マミー、なんで日本ではいつも謝っているの?」

 子どもは時として、親よりもずっと注意深く物事を観察しています。4歳の娘と1歳の息子をふたり乗りベビーカーに乗せ、東京の狭いスーパーマーケット内を歩いていたとき。右手では陳列品を落としそうになり、左手では人にぶつかりそうになって、とにかく「すみません、すみません」と頭を下げながらベビーカーを押すわたしの姿を見て、4歳の娘が発したのが冒頭のことばでした。「マミーは日本に来てからずっと謝ってるね。なんで?」と。

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 その数週間前まで、わたしたち家族はアメリカに住んでいました。アメリカの中でもアラバマ州というかなり人口密度の低い──言い換えれば結構な田舎にいたため、歩いているとき誰かにぶつかりそうになるというシチュエーションは限りなくゼロに近いものでした。アメリカでも人と接触しそうになったときは「Sorry(すみません)」と言いますが、その言葉を口にした回数は両手で数えるくらいだったように思います。

 しかし東京へ引っ越した途端、「すみません」は日常語になりました。アラバマでのびのび育ったわが子ふたりは、まず道路をきちんと歩くことができませんでした。右手にきれいなたんぽぽがあれば摘みに行こうと、左手にかっこいい車があれば触りに行こうとするので、まっすぐ前に進めないのです。もちろん前から後ろから来る通行人の邪魔になり、自転車にぶつかりそうにもなります。そのたびに「すみません」と頭を下げ、「まっすぐ前を向いて歩きなさい!」としかることになりました。

 また彼らは、電車やバスの中では静かに座っていなければいけないことも知りませんでした。アラバマでの移動手段は100%自家用車で、公共交通機関に乗る機会がなかったからです。子どもたちが車内で歌をうたい、車窓風景を見ながら「あっ、クレーンだよ!」と大声で叫び、手足をぶらぶら動かして隣の乗客にぶつかりそうになるたびに、私は「シーッ!!!」としかめっ面で人差し指を口に当て、「すみません」と周りに頭を下げました。

 さらにいえば、彼らは電車のシートに靴で乗ってはいけないことも、プラットフォームでは黄色い線の内側に下がって電車を待たなければいけないことも、エスカレーターは片側に寄って乗らなければいけないことも、エレベーターは降りる人が先だということも知りませんでした。アラバマでは電車を利用することは前述の通りゼロ。高い建物がなく道行く人も少ないのでエスカレーター・エレベーターをマナーに従って利用する回数も皆無に等しく、上記のルール・マナーを身につける機会も必要もなかったのです。

 いまこれをお読みの、日本に生まれ日本で子育てをされている皆さんは、「なあに、1歳はともかく4歳にもなって、こんなルールも守れないの?」と驚き呆れていらっしゃるのではないでしょうか。本当に、日本の子どもたちは当たり前のように守っているルールばかりだと思います。社会で他者と気持ちよく暮らすためにも、自分のいのちを守るためにも、道路はまっすぐ歩きなさいとか白線の内側を通りましょうというのは最低限のルールです。しかし、それらは決して先天的に身につくルールではありません。お子さんが生まれた時から保護者のかた、保育園・幼稚園の保育者さんたちが口を酸っぱくして教え込んできたからこそ身についているのだと、日本生活に途中参加した身としてつくづく感じます。
 
 同時に、常に「すみません」と周りに頭を下げ、「まっすぐ歩きなさい・静かにしなさい」と声をとがらせながら子育てしなきゃいけないって、果たしてどうなんだろうなと疑問にも感じます(都市部に限った話かもしれませんが)。もちろん他者と気持ちよく暮らすため、子どものいのちを守るためにルールを教え込ませることは必要ですが、そこまでルールに厳しくあらなければいけない社会って、子どもの自然な性質に合っていないんじゃないかなとも思うのです。子どもが子どもらしく生きるには、もう少し人が少ないか、土地が広いほうがいいんじゃないかと。

 だからといってすぐに人口密度を減少させたり土地を拡大させたりすることは不可能なので、われわれはこの社会でなんとか生きていくしかありません。しかし、せめて「子どもが道をまっすぐ歩けるのは普通のことではない」と認識し、「子どもと親ががんばった証だ」と親子共に褒めたたえながら暮らしていってもいいんじゃないかとは思います。よちよち歩きの小さい子が親の手を離さずまっすぐ歩いている姿を見ると、感動すら覚えます。日本の子のマナーって、すごいです。

◯大井美紗子
おおい・みさこ/アメリカで6年暮らし、最近、日本に帰国。1986年長野県生まれ。海外書き人クラブ会員。大阪大学文学部卒業後、出版社で育児書の編集者を務める。渡米を機に独立し、日経DUALやサライ.jp、ジュニアエラなどでアメリカの生活文化に関する記事を執筆している。2016年に第1子を日本で、19年に第2子をアメリカで出産。ツイッター:@misakohi

※AERAオンライン限定記事

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  • 子供好きな私が言うのも何だが、「郷に入っては郷に従え」としか言い様が無い。しかし、探せばそのお子様でも自由に遊ぶ空間はあるはず。そうして育ってきた。
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