夫や子どもを怒鳴って落ち込む「私はおかしいの?」 教科書に載っていない生理前のリアル

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2021年05月12日 16:55  AERA dot.

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写真写真はイメージです(Getty Images)
写真はイメージです(Getty Images)
 突然イライラしたり、不意に涙が出てきたり、生理前は自分が制御不能になる――。月経前の心身の不調を医学的には「月経前症候群:PMS(Premenstrual Syndrome )」や「月経前不快気分障害:PMDD(premenstrual dysphoric disorder)」という。数年前に比べれば月経について知る機会は増えているようだが、現在も学校でPMSやPMDDについて語られることはほとんどなく、女性でさえ、大人になってから自分の症状を自覚するケースは少なくない。

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「生理!生理!生理がうつる!」
 
 男子たちがはやし立て、女子たちが怒ると逃げていく。

 「おもひでぽろぽろ」(1991年、高畑勲監督、スタジオジブリ)に、こんなシーンがある。小学5年生の主人公のタエ子は、保健室に女子だけ集められ、先生から生理の仕組みについて教えられた。男子たちは何をしていたのかたずねるが、女子たちはそろって口をつぐむ。ところが1人の女子が話してしまったことで、タエ子たちは男子たちからからかわれるようになる。

 一定の年齢以上の女性ならば、タエ子のような経験をした人は少なくないだろう。

 PMDDの症状に苦しんできた中部地方在住のAさん(30代・既婚)もその一人だ。小学5年生のころ、男女別々の教室に集められ、女子は女性の身体の仕組みや月経の役割などを学ぶ授業を1時間受けたが、男子はその間、性や月経とは全く関係のないテレビを見ていたという。男子に「何してた?」と聞かれ、思わず言葉を濁すと、かえって男子の興味・関心を増長させ、気まずくなってしまった。

「小学校の月経教育の時間にPMSやPMDDのことを学んでいたら、長い間、1人で苦しまずに済んだし、職場でも家庭でも、もう少しうまく対処できたかも……」

 現在、Aさんはこのように話す。Aさん自身、月経前の不調や、それによる職場・家庭での対処に悩み、PMDDを自覚して医療機関にたどり着くまで時間がかかったからだ。

 Aさんは初潮から大人になるまで、生理痛などの重い身体症状はなかった。しかし就職して5年ほど経つと、自分では制御できないほどいら立つことが増える。上司に意見したり、同僚と口論になったりし、その一方で「消えてしまいたい」とひどく落ち込んだりもした。振り返れば、気持ちが乱れるのはいつも生理前。こうしたことが原因で転職したこともあった。

 気分のアップダウンは、転職後の一時期は治まっていた。それが妊娠・出産を経て職場復帰を果たすと、再びイライラや落ち込みが強く出始める。夫とのケンカが増え、幼い子どもにも必要以上に怒鳴ってしまう自分を責め、「死んでしまいたい」と思うこともあった。

「自分はおかしいのでは?」

 悩んでいたAさんは、インターネットで調べ、PMS・PMDDを知った。

 思い当たる症状が多く、Aさんは婦人科を受診する。医師に「おそらくPMDDでしょう。当院では35歳以上の方は診られないので、心療内科を受診してください」と言われ、Aさんは心療内科を受診。処方された薬の服用を始めて以降、精神的には安定している。

 Aさんのように、月経前の不調で悩み苦しんでいる女性は少なくない。しかし、「治療できる」ことを知らないため、適切な対処方法にたどり着くのが遅れる。これは、学校での性教育・月経教育不足が一因なのではないか。そして、男性も月経教育を受けていれば、Aさんのような職場や家庭でのトラブルは減らせたのではないかと筆者は考える。

■    まだ教科書にも載っていない

 元養護教諭で、現在性教育講師として小・中学校・高校で性教育を行っている「にじいろ」さんによると、月経教育の男女共修は、1992年頃から始まったのではないかという。

「1992年以前には、小学校には保健の教科書は存在しませんでした。1992年頃に教科書ができたことから、それまでの小学校では女子だけで秘め事のようにやっていたことが、男女分けずに『授業として学ぶもの』という形になっていったのではないかと思います」

 このころの学習指導要領(1989年改訂、1992年施行)では、保健の授業は5・6年生にしかなく、中でも月経は5年生の学習内容だった。その後(1998年告示、2002年施行)の学習指導要領で、保健の授業を3・4年生も行うようにカリキュラムが変更され、4年生で月経について習うようになったようだ。日本産科婦人科学会では、10〜14歳に初経が見られるものを正常とみなしているため、小学3〜4年生で月経について学ぶようになったのは「多くの女子児童が初経を迎える前に」という考えからと推測される。

 しかし、全国のすべての学校で男女共修ではなく、自治体や学校によって異なるのが現状だ。

 沖縄県で20年以上前から性教育に携わってきた、助産師の百名奈保さんはこう話す。

「月経教育は、自治体や学校によって内容や実施の仕方に違いがあり、現在も学校によって、『男女別』『男女共修』『女子のみ』と、行われ方はさまざまなようです。それぞれ、長所と短所がありますので、どのような形で実施するのかは、学校に任されています」

「男女別」は、男子・女子それぞれの込み入った悩みや質問が出やすく、答えやすい。「男女共修」は、男子・女子それぞれの心身の違いを知り、お互いをいたわり合うことを期待できるという長所がある。

 実際に性教育・月経教育を男女共修で受けた子どもたちは、どのように感じているのだろうか。にじいろさんに寄せられた声を紹介したい。

「最初は男女一緒にこういう話を聞くのは嫌だったけど、一緒に聞くことに意味があると思った」

「自分とは違う性のことを知るからこそ、他人のことも想像して思いやれるのだと気づいた」

 こうした声から筆者は、男女平等に月経教育を受けることのメリットは大きいと感じている。男性でも女性でも「知らなかった」「勘違いしていた」が悪気なく相手を傷つけたり、相手の言葉や行動の真意を取り違えたりすることは多くの大人が経験していることだ。

 現在、性教育・月経教育に使われている教科書にも、ナプキンなどの生理用品が必要なことや、その使い方など具体的な対処法まで載っていないことが多い。生理痛やPMS・PMDDなど月経に伴う心身の変化についての詳しい説明はなく、『おなかが張る』『個人差がある』などの記載があっても、症状によっては医療機関を頼ってもいいこと、改善法があることまでは触れられていない。

 にじいろさんはこう話す。

「最近は、保健の時間とは別に月経教育の時間を設ける学校が増えており、キャンプや修学旅行などの宿泊行事前に時間を設ける学校や、3〜4年生で学んだことを5〜6年生で復習したり、実際にナプキンを用いて使い方を教えたりする学校も出てきています。しかし、それでも学校での月経教育は、合計1〜3時間程度。とても『生理との付き合い方』や『生理のつらさ』にまで触れる時間はありません。月経が心身の健康に大きな影響を及ぼすということは、性別に関係なく平等に小学校でも学ぶべきだと思います」

 百名さんも同意見だ。

「たった1〜2時間程度、1〜2回だけで終わってしまうため、知識が定着せず、小学生で教わっているはずの内容を、高校生でもきちんと理解できていない生徒は少なくありません。『痛み止め』や『低用量ピル』についても適切な情報を伝えられていないため、『もっと早く教えてほしかった』という声を中高生からよく聞きます。男子が月経を知ること、女子が精通やマスターベーションを知ること、どちらも大切。小学校1年生から毎年数回は学習の機会を設けて、性教育・月経教育を、科学的・医学的に男女平等に充実させてほしいと思います」

 月経教育・性教育を男女平等に充実させることは、本当の意味での男女平等社会の実現や、月経に関する悩みを抱える女性の救いにつながるのでないだろうか。早期の改善を強く望む。(旦木瑞穂)

このニュースに関するつぶやき

  • 望まない妊娠をしない為にも必要だよ、性教育。望まない妊娠をした時、産まない、産み育てる、産むが手離す、これ等の先の事も教えなくてはいけない。現実を教えなくては。
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