【映画コラム】記憶や脳内こそが最大のミステリー『ファーザー』

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2021年05月13日 06:20  エンタメOVO

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写真(C)NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF  CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION  TRADEMARK FATHER LIMITED  F COMME FILM  CINÉ-@  ORANGE STUDIO 2020
(C)NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINÉ-@ ORANGE STUDIO 2020

 ロンドンで独り暮らしをしているアンソニー(アンソニー・ホプキンス)は、認知症で記憶が薄れ始めていたが、娘のアン(オリビア・コールマン)が手配した介護人を次々に拒否する。

 そんな中、アンソニーはアンから、新しい恋人とパリで暮らすと告げられる。だが、アンソニーの前に、アンと結婚して10年以上になるという見知らぬ男(マーク・ゲティス)が現れ、ここは自分とアンの家だと主張するが…。




 日本を含め世界30カ国以上で上演されたフロリアン・ゼレールの戯曲を、ゼレールとクリストファー・ハンプトンが脚色して映画化。

 認知症で記憶と時間が混迷する父親の視点で描いた点がユニークで、現実と幻想の境界を描き、時空を超えるという意味では、映画向きの題材だとも言えるだろう。ミステリー映画のような趣きもあり、記憶や脳内こそが最大のミステリーなのだと感じさせる。

 老いた親と子の葛藤や相克という点では、シェークスピアの「リア王」とそれを基に映画化した黒澤明監督の『乱』(85)を、また、ある老人が自分の家族に対して抱く時空を超えた妄想という点では、アラン・レネ監督の『プロビデンス』(77)を思い出した。

 ホプキンスが実年齢と重なる認知症の老人を演じ、彼の頑固さや、戸惑い、崩壊などを見事に表現しているが、それを受けて互角に渡り合ったコールマンもまた見事だった。今年のアカデミー賞で、脚色賞と主演男優賞を受賞したのも納得の出来だ。(田中雄二)

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