バイデン大統領の「台湾明記」要求丸のみ…菅訪米の「致命的ミス」

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2021年05月13日 07:00  AERA dot.

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写真日米首脳会談後の共同記者会見に臨む菅義偉首相とバイデン大統領 (c)朝日新聞社
日米首脳会談後の共同記者会見に臨む菅義偉首相とバイデン大統領 (c)朝日新聞社
 日米首脳会談後の記者会見で、菅義偉首相はバイデン大統領から東京五輪・パラリンピック開催の決意に支持を得たと述べた。だが、その見返りは大きい。共同声明で台湾問題の明記に応じたことで、日中関係が悪化するのは必至だ。米中対立の“最前線”に立つ日本が戦場になる日も近い?

【図で見る】自衛隊による南西諸島への配備・増強計画はこちら

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 4月16日に行われた日米首脳会談後の共同声明には「台湾海峡の平和と安定の重要性」が明記された。台湾周辺で軍事的活動を活発化させる中国をにらみ、「台湾有事」を想定してのことだ。首脳会談の共同声明で台湾に言及するのは1969年の佐藤栄作首相とニクソン大統領以来。対中強硬路線を取るバイデン大統領の求めに応じた格好だが、台湾問題を「核心的利益」と公言する中国の習近平指導部はすぐさま反応し、「強烈な不満と断固とした反対」を表明した。軍事評論家の前田哲男氏が解説する。

「佐藤・ニクソン共同声明は日米が一体であることの意思表示でしかありませんでしたが、今回はまったく状況が違う。日本は近年、南西諸島を国防の第一線にする政策のもとで、ミサイル基地の設置を進めています。しかも、『12式地対艦誘導弾』を改良し、射程をおよそ900キロにまで伸ばす。日中間の緊張の高まりは、より現実のものになっています」

 南西諸島に配備されるのは陸上自衛隊の地対艦・地対空ミサイル部隊で、「南西シフト」と呼ばれる。ミサイル基地が設置されるのは鹿児島・奄美大島、沖縄・宮古島、石垣島だ。すでに奄美大島の奄美駐屯地と瀬戸内分屯地、宮古島駐屯地が開設された。このほか、沖縄・与那国島では、沿岸監視のレーダー基地が運営されている。

 南西シフトは九州・沖縄から台湾、フィリピン、シンガポールにいたる海峡・海域をすべて封鎖する対中包囲網の一環で、台湾以南には米海兵隊・陸軍が地対艦ミサイルを配備する予定。米国の西太平洋戦略に日本が組み込まれるかたちだ。それは同時に、有事の際に九州や南西諸島などが攻撃のターゲットになることも意味する。「南西シフト」に詳しい軍事ジャーナリストの小西誠氏が説明する。

「戦争になれば、緒戦は中国軍が有利です。中国は約1500発の中距離弾道ミサイルを保有しているとされ、九州・沖縄には10分前後で到達する。連続的に撃ち込む『飽和攻撃』をされたら撃ち落とすのは不可能です。沖縄の在日米軍も対航空機用のミサイルしか持っていないので、防ぎようがない」

 これに対抗するために米国が検討しているのが中距離弾道ミサイルの南西諸島への導入だ。日本が受け入れれば、中国本土が射程圏内になり、敵基地攻撃能力を保有することになる。だが、こうしたシナリオは米国の軍拡のための“キャンペーン”だとの指摘もある。

「台湾有事がにわかにクローズアップされたのは、日本に中距離弾道ミサイルを導入させるための口実。実際に中国が台湾に侵攻すれば米軍との全面戦争になるので、現実的ではありません。態勢を固めさえすれば、空母を11隻も持つ米国が圧倒的に有利だからです」(小西氏)

 海自も空母化した「かが」が宮崎の新田原基地に配備されたステルス戦闘機F35Bを載せていくことになりそうだ。ただ、中国海軍も急速に軍備を増強している。

 米中間の軍事的緊張の高まりが、予期せぬ戦争を引き起こす恐れがある。東シナ海や南シナ海での艦船同士の衝突といった偶発的な事故を機に、事態は急激に緊迫し得るのだ。前出の前田氏が語る。

「いま海上自衛隊は米第7艦隊と一体化して行動している。2015年の安保法制で、自衛隊は米軍を守るため武器が使用できるようになりました。米中の艦艇同士が偶発的な衝突を機に戦闘に及べば、海自は武器を使用して米側に立つことになる。小さな火が大きく燃え上がる可能性もあります」

 現場の司令官が冷静さを持ち続けられる保証はない。紛争がエスカレートすれば、南西諸島の自衛隊ミサイル基地が標的となり、中国からミサイルが雨のように飛んでくるだろう。宮古島に建設された弾薬庫にいたっては、住民居住地から200メートルしか離れていない。住民を巻き込み、「第2の沖縄戦」の様相となりかねない。

「米中ともに全面戦争ではなく、『海洋限定戦争=島嶼戦争』に収めるでしょう。しかし、住民は避難できず犠牲になってしまいます」(小西氏)

■米国一辺倒より「仲介役」目指せ

 陸自は今年9月から11月にかけ、中国を念頭に置いた島嶼防衛を想定し、全隊員約14万人が参加する過去最大級の演習を行う。巨大な軍事力を背景とした中国の海洋進出は懸念するほかないが、これでは威嚇の応酬にしかならない。新外交イニシアティブ(ND)の猿田佐世代表はこう語る。

「抑止力は、崩れたら戦争になるのが前提です。日本では抑止力信仰が強く、それが崩れた時には自分の町にミサイルが飛んでくるという現実は誰も考えていない。ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国は、米中いずれかの踏み絵を踏まされることを嫌がっています。米中が戦えば、日本は最前線になります。日本は米軍陣営で中国に対峙する姿勢を取るのではなく、米中対立を和らげる仲介役を果たすべきです」

 シンクタンク・言論NPОの日中共同世論調査によれば、米中対立下の日本について、「日中協力を進める」と回答した日本人はトータルで半数近くに上り、「米国と行動を共にする」と回答した14.2%を大幅に上回った。

「小競り合いや紛争が始まれば、世論が反中国一色になり、紛争を煽ることになりかねない。その前にこうした市民感覚を、もっと政治に反映するようにしなければなりません」(猿田氏)

 米国の戦略ゲームのカードになって、戦場になるのは日本なのだ。(本誌・亀井洋志)

※週刊朝日  2021年5月21日号

このニュースに関するつぶやき

  • 寝言を延々と長くすると記事って呼ぶのか。初めて知ったw
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  • 要するに、中国様がその気になれば、九州・沖縄は10分で焦土と化すが、中国様を怒らせないように、何の備えもしないでいるべきだ…と言いたいんだなアエラは。
    • イイネ!17
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