IOCが東京五輪を中止しないなら、橋本聖子会長はするべきことがある 元招致担当者に聞く

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2021年05月13日 09:00  AERA dot.

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写真東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の橋本聖子会長 (c)朝日新聞社
東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の橋本聖子会長 (c)朝日新聞社
 東京、大阪などに加え12日には愛知、福岡にも緊急事態宣言が発令されるなど、コロナ感染拡大が止まらない日本。東京五輪・パラリンピックの開催中止を求める声は国内外で高まっており、米ニューヨーク・タイムズも「危険な茶番劇を止める時がきた」と中止を訴えるコラムを掲載した。五輪中止は誰がどのように決めるのか。中止しないとしたら、日本がやるべきことは何なのか。東京都で五輪招致推進担当課長を務めた、鈴木知幸氏(国士舘大学客員教授)に話を聞いた。

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――世論は大会開催の「中止」に傾いていますが、日本が中止を決定することは可能なのでしょうか。

 大会開催を中止する権利は、主催するIOCにしかありません。開催国として会場を提供している日本から申し出るとすれば、「中止」ではなく、「返上」ということになるでしょう。

――返上すると、どうなるのですか。

 返上すると損害賠償請求を受ける可能性はあります。開催都市契約にOCOG(オリンピック組織委員会)の保険に関する規定がありますが、契約条件は不明です。東京五輪・パラリンピックが中止された場合の世界の保険会社が被る損失は20〜30億ドルになるという試算が報じられています。ただ、組織委員会がどのように保険をかけているかは明らかにされていません。

――過去に返上や中止はあったのでしょうか。

 柔道の父・嘉納治五郎が招致に尽力し、1940年に東京で開かれることが決まっていたオリンピックを政府が返上した歴史があります。嘉納は1938年にカイロで開かれたIOC総会に参加し、帰国の途上で亡くなりました。嘉納の死後、日中戦争の泥沼化を理由に日本政府は「返上」を決定しました。その後ヘルシンキ(フィンランド)が代替地になりましたが、第二次世界大戦の勃発により、大会そのものが「中止」になった歴史があります。

 付け加えると、1980年のモスクワオリンピックは、ソ連と対立するアメリカのカーター大統領がボイコットを同盟国に呼びかけ、日本もそれに同調せざるを得ず、参加しませんでした。この時、柔道男子のメダル候補だった山下泰裕は涙を流して参加を訴えました。

 それからさらに40年後にあたる2020年の東京開催が、近代五輪史上初の「延期」に。私は「日本五輪史は、返上・ボイコット・延期の魔の40年」と呼んでいます。

 現実問題に話を戻すと、もう東京五輪は「返上」も「中止」も困難な段階にあります。

――IOCが中止を決断しない理由はなんでしょうか。

 開催中止の決定権を持つIOCが一番注視しているのは、開催国の国内事情ではなく、IF(国際競技連盟)やNOC(各国オリンピック委員会)です。これらの団体から中止を求める声が多数上がればIOCは中止を決めるでしょうが、どこも言い出しません。なお、報道を通じた個別の意見は無視します。

 というのも、IOCはスポンサー料と放映権料の財源を得ますが、それがIFやNOCに還元されるという構造があるからです。放映権料についていえば、IOCはアメリカの放送局NBCから2032年までの夏季、冬季6大会の放映権料として総額76億5千万ドルを受け取ることで合意しており、一大会の開催ごとに支払われます。

 無観客の開催になれば、NBCをはじめ世界の契約放送局は歓迎し放映権料を支払います。特にNBCは録画撮りの予定だった開会式を生中継に変更すると表明しています。

――組織委員会は大会に向けて公認スポーツドクター約200人と、看護師約500人を確保しようとしており、医師については約280人の応募があったと報じられています。国内で医療現場がひっ迫するなかで医療従事者を集めることに、批判の声があがっています。

 東京五輪に参加する主要な選手団はチームドクターを連れてきますが、熱中症やケガの治療にはあたれます。ただ、感染症が発生した場合に日本の医療機関と連携して外国人医師も治療にあたるためには法制度上の特例措置が必要です。基本的に、外国人の医師は日本での医師免許がないと医療行為が出来ません。しかし、阪神・淡路大震災や東日本大震災の時は、日本の医師免許を持たない外国人医師に対し、厚労省が緊急避難的措置として医療行為を特例で認めています。

 今回も、各国選手団のチームドクターにコロナ対策医師を同行させ、大会中は「合同海外医師団」を結成して、コロナ対応に専従させるなどの交渉を、IOCとWHOに突きつけるべきなのです。昨年5月に、IOCとWHOは、延期された新型コロナ禍での東京五輪の安全な開催に向けて連携していくという覚書を交わしているので、それを利用すればよいと思います。

 さらに、競技会場を無観客にして、「合同海外医師団」が対応すれば、それほど日本の医療従事者は必要ないでしょう。しかし、組織委員会は観客数の判断を6月に先延ばしているのです。「無観客開催」を即刻表明すべきです。

――日本はIOCに何を求めていくべきだと考えますか。

 組織委員会の橋本聖子会長は、今回の五輪開催に限定した「合同海外医師団」の結成など、IOCに対して、無理難題を強く主張して交渉すべきです。一定の要求が認められなかったら、それこそ「返上」すると強気な姿勢で挑むべきです。

(構成/AERA dot.編集部・岩下明日香)

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  • つまりIOC というかスポンサーのアメリカを説得するしかないんだろうなあ・・
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