コロナが過ぎても100%元通りはない 居酒屋オーナー鈴木おさむが感じた同業者の覚悟

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2021年05月13日 16:00  AERA dot.

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写真放送作家の鈴木おさむさん。居酒屋のオーナーもしている
放送作家の鈴木おさむさん。居酒屋のオーナーもしている
 放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、飲食店の経営者として感じているコロナ前後の変化についてつづります。

【写真】実は鈴木おさむが原作!YOASOBIのあの曲
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 僕は東京の中目黒近辺で居酒屋のオーナーをしています。以前は、「ちゃんこ屋 鈴木ちゃん」という名前で3階建てのちゃんこ屋さんをやっていたのですが、5年近くやって、鍋屋さんの経営の難しさを痛感しました。5年で6000万近くの大赤字を出して、閉じたのですが、そこで終わらせたくないと。

 店長をやっていた元力士の鈴木店長(偶然にも僕と同じ苗字)が一人で店を回すことの出来る居酒屋を作ることにしました。元力士の彼だからこそ作れるボリュームのある料理を食べて、お酒を飲んで、彼に逢いに来るような店にしたいと。

 そしてなるべく1オペでできるようなお店にする。

 お店を開店し、鈴木店長の料理と人柄に魅力を感じて、常連さんはどんどん増えていきました。理想のお店になり、正直、すごく利益が出るわけではないけど、前回の反省を活かして、とてもいいお店になってきたのです。

 が、コロナです。去年の緊急事態宣言の時は、開店時間を昼からにして営業したりしていました。給付金もあるし、なんとか頑張れていました。

そして今年の1月と今回の緊急事態宣言。給付金を頼りに、なんとか赤字は出ないようにと頑張って入るのですが、夜8時まで営業していても、売上は通常営業していた時の3分の1以下。一番の問題は、昨年の緊急事態宣言の時に同じ営業スタイルでやっていた時よりも売上が下がっているということです。

 このコロナで日本人の生活スタイルは大きく変わりました。家でお酒を飲むことの楽しさに気づいた人も多いでしょう。

 コロナが過ぎれば、きっとお客はまた戻ってくると思ってやっていましたが、そうじゃない。変わるところは変わってしまった。100%の元通りを期待すると、また店を閉じることになると思っています。

 そんな中。僕が昔から仲のいい中目黒の和食屋の板前さんAさんがいます。自分で店を経営している板前さんでとても腕がよく人気。決して安いわけじゃないけど、新鮮なお刺身とさまざまな魚介料理を食べさせてくれる最高のお店です。

 Aさんとは20年以上のお付き合いになりますが、Aさん、今のお店を開店した直後にバイクで事故にあい、いきなり休業しなければいけない状態に。その時の怪我がひどくて、しばらく足が思うように動かなくなったりして。これまでたくさんのピンチを乗り越えてきた。

 去年、緊急事態宣言の時は自慢の料理を出来る限りテイクアウトスタイルにして営業してました。僕も何度も買いに行きました。今まで来てくれていたお客さんが自宅でも食べられるようなスタイルにしていった。でも、正直、テイクアウトを始めたとしても、以前のような売り上げになることはないわけです。

 そして、今年になりまたもやの緊急事態宣言。するとAさんは、「このまま守りの営業ばかりしていてもだめだ」と思ったみたいで、僕にいきなりLINEをくれました。「ランチを始めます」と。そして「昼は思い切ってラーメン屋にします」と。和食屋さんだからできるラーメンを開発し、ランチ時はなんとラーメン屋の形態で営業するという思い切った施策を打ち出しました。和食屋さんらしい、魚介だしの体に優しくおいしいラーメン。

 その思い切った施策がうまくいったのでしょう。4月からの緊急事態宣言中は、ランチだけじゃなく、ほぼこのラーメンを中心に営業をするということに切り替えました。

 営業時間が短くお酒も出せない中、基本、ラーメンをメインにすれば、いつもよりフードロスも少ない。そしてなにより、とにかく評判がいい。

 和食屋さんをラーメン屋さんにするという発想。きっとここで増えたお客さんは、また和食屋さんに戻った時に、来るでしょう。

 Aさん、以前、テイクアウトスタイルにした時には、「今までのお客さん」をターゲットにして、何とか少しでも売上を上げようと考えていたと思うのです。だけど、「今までのお客さん」を頼りにするのではなく、新規の顧客を取りに行くことを考えたのだと思います。

 優しさに甘えない。

 うちのように、お客が減ったことに不安になり、給付金だけを頼りに生き延びようとしていない。

そのAさんの攻めの発想と営業努力を見て、コロナが過ぎても100%前のように戻ることはないと覚悟を決めて、今の店を活かしながら、新形態のお店を作る。

守ってばかりだと、きっと前に進めない。こういう時だからこそ、知恵を使って、力を合わせて、捨てるものは捨てて、新しく生まれ変わらなきゃいけないのだ。

守るのではなく、変えよう!

■鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中。バブル期入社の50代の部長の悲哀を描く16コマ漫画「ティラノ部長」の原作を担当し、毎週金曜に自身のインスタグラムで公開中。YOASOBI「ハルカ」の原作「月王子」を書籍化したイラスト小説「ハルカと月の王子様」が好評発売中

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