高血圧とメタボ解消に苦心 「麻雀か、お散歩か」作家・黒川博行の選択は

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2021年05月13日 16:00  AERA dot.

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写真黒川博行・作家 (c)朝日新聞社
黒川博行・作家 (c)朝日新聞社
 ギャンブル好きで知られる直木賞作家・黒川博行氏の連載『出たとこ勝負』。今回は、黒川家の選択について。

*  *  *
 このところ血圧が高い。かかりつけの病院で血圧手帳をもらって毎日、記録しているが、朝は上が180で下が100、夜は上が170で下が90を超えることもある。血液検査をしたが、腎臓や肝臓に異変はなく、血糖値も問題なかった。本態性の高血圧ですかね──。医師も首をかしげて降圧剤を増やしてもらったが、どうもはかばかしくない。

 これはほんまに痩せんといかんな。わたしは反省した。毎年、人間ドックでメタボを指摘されている。

 前々から食事の量は意識的に減らしていて、ごはんは軽く一膳、麺類はよめはんと半分ずつ、野菜はできるだけ多く摂るようにしているが、それを徹底しようと決めた。もっと運動もしないといけない。

 とりあえずテニスや──。日曜日、市営のテニスコートに行ったら、メンバーがいない。ほかのコートにもひとがいない。市のスタッフに訊いたら、その日が緊急事態宣言が出された日で、当分のあいだ、コートは使用できないといわれた。

 がっかりして家に帰り、考えた。ウォーキングでもするか──。ただ歩くだけというのがおもしろくない。五年ほど前、よめはんとふたりで近所を歩いたが、一週間でやめたのは雨が降ったからだ。なにか決めごとをしても守れたためしのないのがわたしのキャラクターで、そこはよめはんとまったくちがう。よめはんは毎月一、二回、京都へ行って舞妓や芸妓(げいこ)をデッサンし、毎月一回、近くの美術クラブに行ってヌードデッサンをする。毎日、絵を描き、買い物は歩いて行くことを自分に課して、それを守る。若いころはそうでもなかったが、よめはんはいまや“信念のひと”“意志のひと”なのだ。そんな立派なひとが同じ屋根の下にいるということは、わたしにとってもなにかしらの糧になっているにちがいない(この部分、よめはんが読むことを期待します)。

 テニスがあかんのならプールで泳ぐか──。十年ほど前、スイミングスクールに通ったことを思い出した。二カ月でやめたが、ゴーグルやスイミングキャップは捨てていないからどこかにあるはずだ。

 ネットでスクールの電話番号を調べ、ダイヤルボタンを押そうとしたとき、ふと思い出した。いつも眼が充血して痛くなったことを。

 そう、三年ほど前、テレビの『チコちゃんに叱られる!』という番組でやっていた。「プールで眼が赤くなるのは消毒用の塩素のせいではなく、人間の尿や汗に含まれるアンモニアと塩素が結合してできる『クロラミン』という刺激物が眼にわるさをする」と──。

 わたしは電話をやめ、よめはんにいった。「ね、これから毎晩、ふたりでお散歩をしよ」「なにそれ。どういう風の吹きまわし?」「緊急事態宣言やから」「意味不明」「血圧高いし、メタボやから」「それやったら分かる」「今日からしよか。お散歩。お手々つないで」「今日はお絵描きする」「ほな、明日から」「麻雀は」「麻雀もする」「どっちかにして。麻雀か、お散歩か」「それはむずかしい選択やな」

 ──で、麻雀をとった。わたしのアイデンティティーだから。そう、よめはんとわたしは毎日、ふたり麻雀をしている。

黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する

※週刊朝日  2021年5月21日号

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