強いけど勝ちきれない…日本競馬史を彩った愛すべき「善戦マン」といえば?

11

2021年05月14日 18:00  AERA dot.

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AERA dot.

写真2001年12月、香港の引退レースでGI初優勝したステイゴールド。武豊騎手=ロイター
2001年12月、香港の引退レースでGI初優勝したステイゴールド。武豊騎手=ロイター
 突然だが、「ウマ娘 プリティーダービー」というゲームを御存じだろうか。ざっくり説明すると実際の競馬で活躍した名馬たちを美少女化したキャラクターを育成するゲームで、2月のサービス開始からの人気はかなりのもの。ゲームから実際の競馬に関心をもって初めてレースを観戦したという人も多いという。

 その人気ぶりを示したのが、ゲームにも登場して人気を博しているナイスネイチャのバースデードネーション。今年で33歳となるナイスネイチャの誕生日に寄付を募る催しで今年が5回目となるが、300万円の目標金額に対してすでに3000万円以上が集まっているというのだから、ゲームの影響力のすごさが分かろうというものだ。

 もっとも、ナイスネイチャという馬は現役時代から「愛されキャラ」だった。1991年から暮れの大一番、有馬記念で3年連続3着という偉業(?)を達成。ブロンズコレクターとも呼ばれていた。前置きが長くなったが、今回はこのナイスネイチャのような善戦マン(あるいは善戦ウーマン)たちを取り上げてみようと思う。

【名脇役タイプ】

 有馬記念でのナイスネイチャもそうだったが、どんな相手やレースにも関わらず上位には食い込むが、人気以上の番狂わせはしない。そんなシルバーコレクターやブロンズコレクターを語るならば、まずステイゴールドを取り上げるべきだろう。

 97年クラシック組のステイゴールドは翌98年の天皇賞(春)で10番人気ながらメジロブライトの2着と善戦。同年の宝塚記念でも9番人気でサイレンススズカの2着と好走した。さらに天皇賞(秋)も2着、有馬記念では3着とG1で上位には来るが勝つには至らず。99年も宝塚記念を含む重賞3着が4回に天皇賞(秋)では2年連続の2着と、惜しいレースを続けた。

 しかし2000年5月にG2目黒記念で待望の重賞初制覇。翌01年は1月にG2日経新春杯を制すと3月にはドバイ遠征を敢行し、当時G2だったドバイシーマクラシックで名馬ファンタスティックライトを破る大金星を挙げた。そして引退レースとなった同年末の香港ヴァーズでついにG1初勝利を手にしたのだった。

 余談だがステイゴールドの大ファンだった筆者はそのレースを現地で観戦。勝った直後の大興奮は今でも忘れられない。ちなみにこの年は香港マイルをエイシンプレストン、香港カップをアグネスデジタルが勝つという、日本馬にとっては歴史的な日だった。

 だがG1で2着4回のステイゴールドを上回る善戦マンも競馬史には存在する。海外G1を制したシーキングザパールを母に、世界的な名種牡馬ストームキャットを父に持つ良血馬シーキングザダイヤだ。

 当初は芝でも走っていたシーキングザダイヤはダートに主戦場を移して長く活躍した。だが川崎記念やフェブラリーステークス、ジャパンカップダートにJBCクラシックなどで、タイムパラドックスやメイショウボーラー、ユートピアにカネヒキリ、アジュディミツオー、アロンダイトらに主役の座をことごとく譲り続けた。

 その間になんとG1レース(Jpn1を含む)で2着9回。これはJRA所属馬としては今なお最多記録だ。ちなみに現役時代に勝ち運に恵まれなかったのと引き換えなのか、引退後は南米チリで種牡馬として成功。多くのG1馬を輩出している。

 2014年の菊花賞2着馬サウンズオブアースも、有馬記念とジャパンカップでの2着を含めて重賞で2着が7回もありながら重賞勝ちには手が届かず。30戦してわずか2勝で引退し、主な勝ち鞍は3歳春の条件戦である、はなみずき賞だった。

 2018年の菊花賞2着馬エタリオウ(ステイゴールド産駒)はさらにその上を行く。デビュー2戦目に未勝利戦を勝った後は青葉賞まで4戦連続で2着。ダービーこそ4着だったが、秋には神戸新聞杯と菊花賞でまたしても2着を続け、翌年の日経賞も2着だった。こちらは通算17戦1勝。主な勝ち鞍は最後まで未勝利戦だった。

 現役では牝馬のカレンブーケドールが善戦ウーマンとして名を馳せている。3歳春にオークストライアルにあたるリステッドのスイートピーステークス勝ちはあるが、肝心のオークスではラヴズオンリーユーの2着。以降もG3紫苑ステークス3着を挟み、秋華賞とジャパンカップの両G1、翌年の京都記念とオールカマーの両G2まで4戦連続2着だった。今年もG2日経賞2着、G1天皇賞(春)3着と善戦どまりのレースが続いている。

【無冠の帝王タイプ】

 これはクラシックで主役級の注目を集めながらも勝ちきれなかった馬たちのこと。その元祖ともいうべき存在は1980年のモンテプリンスで、実力は十分ながら皐月賞とダービーでは苦手な道悪に苦しんで4着と2着、菊花賞も2着で無冠に終わった。ただし古馬になった翌年も天皇賞(秋)2着、有馬記念3着と惜敗したものの、82年の天皇賞(春)と宝塚記念を勝って留飲を下げている。

 90年のクラシックでは弥生賞を勝って主役に躍り出たメジロライアンがもどかしい競馬を続けた。皐月賞は2番人気で3着、ダービーでは1番人気も2着、そして菊花賞でも1番人気に推されながら同馬主のメジロマックイーンらの後塵を拝する3着どまりだった。さらにこの年の有馬記念でも奇跡の復活を遂げたオグリキャップの2着。ただし翌91年の宝塚記念でマックイーンを退けて悲願のG1制覇を果たした。

 その息子であるメジロブライトも皐月賞とダービーは1番人気で4着と3着にとどまり、、菊花賞は2番人気で3着だった。ただし彼もその直後から重賞を連勝し、翌年の天皇賞(春)でG1馬となった。

【悲運の世代タイプ】

 いくら実力があっても、さらに上の存在がいれば勝てないのが非情な現実。同世代や前後の世代に傑出したスーパーホースがいたためになかなかG1勝ちに手が届かなかった馬たちも数多い。ちょうど20世紀から21世紀にかかる時代に絶対的な強さを誇って「世紀末覇王」と称されたテイエムオペラオーに惜敗し続けたメイショウドトウはその筆頭的な存在だろう。

 出世が遅れたメイショウドトウはテイエムオペラオーが皐月賞を制し、アドマイヤベガやナリタトップロードらとしのぎを削ったクラシックには間に合わず。4歳の宝塚記念で初めてG1に挑戦してテイエムオペラオーのクビ差2着と善戦した。

 秋はG2オールカマーを勝ってG1戦線に臨むも、天皇賞(秋)、ジャパンカップ、有馬記念は全てオペラオーの2着だった。しかもその着差は2馬身半差だった天皇賞はともかく、ジャパンカップはクビ差、有馬記念はハナ差だったのだから悔しさもひとしおだろう。さらに翌01年の天皇賞(春)でも勝ったオペラオーから半馬身差の2着。だが6回目の対戦となった宝塚記念でついにオペラオーに1馬身1/4差の勝利を収め、G1馬となった。

 このタイプの牝馬ではヴィルシーナの名前を挙げたい。2012年の牝馬クラシック路線で桜花賞、オークス、秋華賞の全てを制したのは名牝ジェンティルドンナだったが、その3戦で2着だったのはいずれもヴィルシーナ。秋華賞トライアルのローズSを含めれば同じ相手に4戦連続で2着だった。

 しかも目の上のたんこぶだったジェンティルドンナが不在のエリザベス女王杯でも、伏兵レインボーダリアに強襲されて2着。古馬になってからはヴィクトリアマイルを2連覇したように実力は申し分なく、クラシックでは相手が悪かったとしか言いようがない。

 三冠馬に泣かされたといえば、かのディープインパクト世代(2002年生まれ)で皐月賞2着、ダービー3着、菊花賞4着だったシックスセンスも該当する。同馬は暮れの香港遠征でもG1香港ヴァーズで2着だった。ちなみにデビュー2戦目に未勝利勝ちして以降は上記のように惜敗が続いて「最強の1勝馬」の称号をいただいていたが、結果的に引退レースとなった06年の京都記念で重賞初勝利はなんとか手にした。

 シックスセンスの一つ下の世代にあたるドリームパスポートも、皐月賞とダービーは二冠馬メイショウサムソンの前に2着と3着。菊花賞で宿敵には先着したものの、上がり馬ソングオブウインドの2着だった。さらにジャパンカップではディープインパクトの2着と、こちらもやはり相手が悪かった。

 2011年の三冠馬オルフェーヴルに敗れ続けたのはウインバリアシオン。皐月賞には間に合わなかったものの青葉賞を制して臨んだダービーから神戸新聞杯、菊花賞までオルフェーヴルの2着続きだった。翌12年も天皇賞(春)こそ11着と大敗したオルフェーヴルに先着したものの自身も3着どまりで、宝塚記念と有馬記念ではオルフェーヴルの4着と2着。さらにオルフェーヴル引退後の14年の天皇賞(春)でも2着で、引退するまでG1制覇には届かなかった。

 今年は昨年に無敗でクラシックを制して三冠馬となった牡馬のコントレイルと牝馬のデアリングタクトが揃って黒星スタートとなる一方で、皐月賞と桜花賞はそれぞれエフフォーリアとソダシが無敗で制覇。早くも新たなスター候補誕生に沸いているが、勝ちきれずとも善戦を続ける馬たちにも目を向けてもらえると幸いだ。(文・杉山貴宏)

【おすすめ記事】川崎競馬の滝川寿希也騎手が “八百長暴露” におわせ? SNS不適切発言で騎乗停止問題


このニュースに関するつぶやき

  • ステイゴールドの子どものオルフェーブルとゴールドシップはとても有名な名馬ですよね。
    • イイネ!15
    • コメント 0件
  • ステイゴールドの子どものオルフェーブルとゴールドシップはとても有名な名馬ですよね。
    • イイネ!15
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(7件)

ニュース設定