元地下アイドルが飛び込んだのは、クセだらけの人間が集まったシェアハウス。はたして物語はどこに向かうのか?

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2021年05月15日 20:11  ダ・ヴィンチニュース

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写真『ベイビー・ブルー・クラスター』(Be-con:作画、にゃるら:原作/KADOKAWA)
『ベイビー・ブルー・クラスター』(Be-con:作画、にゃるら:原作/KADOKAWA)

 ルックスはいいが毒舌の地下アイドル・天久ルシは、住み込みだった事務所を解雇されて秋葉原で途方にくれていた。そこで彼女はライダーベルトを抱えた男と出会い、今日の寝床を求めて彼の家へついていく。『ベイビー・ブルー・クラスター』(Be-con:作画、にゃるら:原作/KADOKAWA)のプロローグは、ほんのりボーイ・ミーツ・ガールな雰囲気だが、彼女を待っていたのは、男4人と少女1人の“社会不適合者”が集うシェアハウスだった……。

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コミュ力も職も不要なシェアハウス「モラトリアム・ハウス」

 シェアハウスはここ何年かで都会から地方まで増加し、「恋愛リアリティドラマ」でも一躍有名になった。光熱費やインフラ、風呂・トイレをシェアという、とにかくコスパの良さがポイントだ。そんなお得さにひかれてシェアハウスに住んだという家族や友人の実体験を聞いたことがあるが、そこで快適に暮らせるのは、コミュ力に長けた人間だけだな、と個人的には感じた。

 だがシェアハウスにもいろいろある。「日本一有名なニート」という肩書を持っていたpha氏のギークハウスは異彩を放っていた。集まっているのは一癖以上ある人間たち。そこは最低限稼いで、お金や物が無かったら無いなりに楽しく暮らしていこうという場所だ。こちらは某ドキュメント番組で見て、楽しそうに見えた(裏では揉めごとがあったようだが)。

 さて本作のシェアハウス、「モラトリアム・ハウス」はこのギークハウスに近いかもしれない。住人は「普通じゃない」「社会性が欠けている」ことを自覚している。そしてここが「掃き溜め」であることも。生きづらさによる暗さはまださほど描かれていない。ただ現実なら共同体が崩壊一直線の非常な事態が、ここでは多発していた。それらは連続すれば特殊ではなく日常となっており、おかしなバランスの保たれた空間となっていた。

 そこにやって来たルシは、ひくこともなく住人たちとゲームを楽しみ、あっさりとここで暮らすことを決めてしまう。

解雇された元地下アイドルと“みんなで幸せに”なれるのか?

 モラトリアム・ハウスに住む変人たちを紹介すると、アルコールにおぼれている大城。顔はいいが売れないバンドマンで、少々人の心が欠けている桃原。うつで休職中のエロゲ原画描きの小禄。

 そしてルシを結果的に連れてきた主人公の鏡水現(かがみずうつつ)は無職のオタク。この家、この場所、このバランスが好きだという。

 最後のひとりが、いつも“刻が見える…”とか言っている、紅一点で現の妹、虚(うつろ)だ。

 ルシはそんなモラトリアム・ハウスの全てを受け入れる。外見の良さを吹き飛ばすほどの毒舌と、ズケズケとした性格でトラブルメーカーだった彼女もまた、地下アイドルをクビになるような人間だからだ。

 彼女は「代表」と呼ばれる家主と会い、居住契約を結ぶ。彼は破滅しそうな人間を好きに暮らさせてその人生を、花火を見るように楽しむのが望みなのだとか。モラトリアム・ハウスはそんな酷い花火が見られる特等席なのだと、現はルシに伝えた。だが彼女は涼しい顔で言う。「花火は下から見るんでも横から見るもんでもない、自分でやるのが一番楽しいし綺麗」「みんなで思いっきり幸せになってわかっていない代表や世間やネットを悔しがらせよう」と。

 本作は生きづらさから逃げるオタクたちのモラトリアムであり、もう子供ではない彼ら彼女らが、不格好な青春をやり直す話でもある。

 なお「タブー満載の家族ごっこ」であると本作のキャッチコピーにある通り、危険な知識とオタクネタが満載であると書くだけ書いておく。

 生きづらい人間たちが立ち直っていく物語なのか、アキバやオタク話を楽しむ作品なのか、はたまたラブコメか。1巻の時点では、これからどう転がっていくのか、まだわからない。しかし私はもう完全に掴まれている。強いルシと、こんなハイパーハードボイルドな暮らしに。この危険地帯に住んでみたくなった自分に気づいている。読めばあなたもそうなるかもしれない。

文=古林恭

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