人と違っていたとしても、自分のペースで生きてみよう。『麦本三歩の好きなもの 第一集』/佐藤日向の#砂糖図書館

0

2021年05月15日 20:11  ダ・ヴィンチニュース

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ダ・ヴィンチニュース

写真佐藤日向
佐藤日向

5月に入ったあたりから自分にエンジンをかけるのにとても時間がかかってしまい、常に間に合うか間に合わないかのギリギリのラインで、物事を進めてしまう。

文章から伝わる「世界の美しさ」に、元気をもらおう。『物語のなかとそと』/佐藤日向の#砂糖図書館

頭ではやらなくては、と理解しているのだが、最初の一歩がなかなか踏み出せないのだ。そして、やらなくてはならない事が山積みな時に限って、部屋の掃除を始めてみたり、見つけた本を読んでしまう現象が起こる。きっとそれは心が疲れていたり、元気が足りないからだと私は思う。

今回紹介する住野よるさんの『麦本三歩の好きなもの 第一集』は、心に栄養が欲しい時にぴったりの作品だ。

本作は、大学の図書館員として働く主人公・麦本三歩の、何でもない、でも愉快な日常生活について、三歩が好きなものを詰め込んで描いた12編の連作短編集となっている。

“住野よる”さんという名前を聞いて、多くの人にとって最初に思い浮かぶ作品は、きっと『君の膵臓をたべたい』だろう。高校生の頃に読んだ『君の膵臓をたべたい』が印象に残っていたので、住野さんのお名前を見つけ、本作を手に取ってみたのだが、読了後の陽だまりに当たっているような感覚が今までに無い感覚で、心地よかった。三歩という存在が、まるで私の写し鏡のようだった事も大きいだろう。

私がこれまでの学校生活の中で学んだことは「思ったことをそのまま言葉にすると、周りにあまり理解されない」ということだった。

どうやら私の考え方は少し変わっているようで、協調性を求められる学校生活は、どうにも息苦しかった。そんな私を、この短編集は優しく受け止めてくれた。

例えば「麦本三歩は年上が好き」という短編に登場する、iPodを持っていても気分によって聴いたり、聴かずに外の音を楽しむ、といった内容だ。これはあまり共感を得た事がなかったので、本の中に仲間を見つけたような気持ちになった。

子役の頃、オーディションに行くとよく「普段どんな音楽を聴きますか?」と聞かれた。
私は最近やっと音楽を聴くようになったので、当時は「波の音を聴いてます」と答えていた。

今でも、ラジオを聴くのと同じ感覚で、環境音を聴きながら作業をする事が好きだが、きっとどんなジャンルの音楽が好きか、という問いだったはずなのに、なぜか環境音と答えていたあたり、やはり少し人とズレているのだろう。
だが、この一冊を読み終える頃には、まるで作品の内容が私の取扱説明書のようで、主人公の三歩が愛おしくなるのと同時に、作業が止まってしまう自分のことを好きでいてもいいのかもしれない、と思えるようになっていた。

周りから「そんなこと気にしてたの?」と言われたり、自分の中に引っかかる言葉が人とは違うというのは、22年間生きてきてなんとなく気づいていたが、出来ない自分に落ち込まず、ゆっくり自分の速度で楽しく前に進めたら、と思う。

本作にも出てきたように、コンビニのお気に入りのおにぎりで自分のご機嫌を取ってみたり、美味しいご飯を食べるために二度寝をやめてみたり。

コロナ禍ということもあり、あまり外に出られない生活が続くが、三歩のようにのんびり生きたいと思える本作を、日常に取り入れてみてはいかがだろうか。

さとう・ひなた
12月23日、新潟県生まれ。2010年12月、アイドルユニット「さくら学院」のメンバーとして、メジャーデビュー。2014年3月に卒業後、声優としての活動をスタート。TVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』(鹿角理亞役)、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(星見純那役)のほか、映像、舞台でも活躍中。

    オススメゲーム

    ニュース設定