もはやEV並み? マイナーチェンジで完成の域に達したVW「ティグアン」

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2021年05月18日 08:11  マイナビニュース

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マイナーチェンジを経たフォルクスワーゲンのSUV「ティグアン」は、完成度が格段に高まっている。エンジン車でありながら、その静かで上質な走りは電気自動車(EV)の領域に近づいていると思わせるほどだ。試乗で感じたティグアンの進化を詳しく報告したい。

現行のティグアンは2017年のフルモデルチェンジで2代目となり、日本では2018年に発売となった。初代が誕生した当時、VWには「トゥアレグ」というより大柄なSUVがあり日本でも人気を博していたのだが、現在は世界的にもコンパクトSUVが人気となっている。VWの日本向けSUVとしては現状、ティグアンが最も大きなクルマだ。その下にクロスオーバーの「T-Roc」(Tロック)、さらに小柄な「T-Cross」(Tクロス)という品ぞろえである。

2代目ティグアンは初代に比べ、わずかに車体寸法が大きくなっていたが、外観の造形の影響からか、かなり大柄なSUVに見えた。東京都内の市街地や首都高速を中心に試乗し、混雑した道で乗ったことも、大柄なクルマであるという印象を強めたのかもしれない。

2台目の登場時に強調されたのは、スマートフォンとクルマの連携についてだった。「フォルクスワーゲン・カー・ネット」という情報通信機能を搭載しているので、USBケーブルでスマートフォンと接続することにより、機種を問わずアプリケーションを利用できるという触れ込みだったのだが、操作性などはまだあまり直感的でなく、情報の入手速度もじれったさがあるなど、使い勝手についてはこれからの熟成を待つ様子だったと記憶している。

今回のマイナーチェンジでティグアンは、新世代のインフォテイメントシステムを採用。接続性を強化するなど改善がはかられた。試乗では十分にその機能を試すことができなかったが、カーナビゲーションの精度や情報収集能力は高く、運転者の気持ちに即した反応を見せてくれるので、安心して目的地を目指せるのを実感した。いわゆる、ヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)が格段に向上したようだ。

VWはこれまで、先進技術の搭載において、同じグループのアウディに比べると遅れ気味だった。今回のティグアンのマイナーチェンジでは、ほかの車種で熟成が進んだ装備を満を持して採用してきた格好だ。

走行機能としては、エンジンの排気量が従来の1.4リッターから1.5リッターに増え、変速機(DSG)が同6速から7速に多段化した。DSGとは2枚の湿式クラッチを使い、奇数段と偶数段のギアの組み合わせを滑らかに切り替えていく手法の変速機だ。

新たに採用した装備としては、LEDを使ったマトリックスヘッドライトが挙げられる。夜間やトンネル内などでハイビームにして走行する際、前を走るクルマや対向車の運転者を眩惑させずに明るい前方視界を得られる機能だ。新型ティグアンでは、ライトをオートに設定していない時、手動でヘッドライトを灯火させないと、メーター内に「ヘッドライトを点灯してください」との注意喚起が表示される。オートに設定していれば問題ない話だが、夕暮れ時やトンネル内などで、ヘッドライトを点灯してしない運転者を今なお見かけるので、メーター表示での注意喚起はよいことだと思う。

運転支援機能では、前期車種でも前車追従型のクルーズコントロールであるACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を採用していたが、今回のマイナーチェンジでは「トラベルアシスト」という機能が全車で標準装備となった。

トラベルアシストは、ハンドル左側のスポークにあるスイッチを押すと起動する。ACCと車線維持機能が同時に稼働し、高速道路などでの運転をより楽にしてくれる機能だ。例えばボルボの「XC40」だと、ACCと車線維持機能は別々のスイッチで作動させる操作法になっているが、ティグアンは1回のスイッチ操作で済むので使いやすい。

ただし、ほかのクルマが車線変更して前に入り込んできた際の応答や、車線の中央維持のための修正には、まだ精度が不足している印象があった。フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン広報によれば、トラベルアシストは自動運転レベル2に相当する機能であり、VWとしては運転者が主体的に操作することを前提に考えているので、トラベルアシストという言葉通り、支援機能に徹しているとの説明であった。

今回は試乗できなかったが、今年後半には国内で「R」というスポーツ車種が追加となる。VWのSUVでRが市販されるのはティグアンが初めてだ。普段使いはもちろん、サーキット走行も可能な性能だという。VWグループ内にはポルシェ「マカン」もあるので、SUVの高性能車として期待できるのではないかと思う。
○EVに近づく? 完成度を高めた「ティグアン」

ここからは、試乗して感じたティグアンの進化をお伝えしたい。

まず印象深いのは、静粛性が高く、走りが滑らかだったことだ。VWといえば「ゴルフ」などに代表される大衆車が主体という印象だが、新型ティグアンはそのイメージを超えた上級SUVに仕上がっていた。

試乗したのは、「R」と販売当初の特別仕様車「ファーストエディション」をのぞけば最上級グレードに位置づけられる「R-Line」(Rライン)であり、タイヤには注文装備となる40%扁平の20インチ径が装着されていたが、それでもタイヤ騒音が抑えられていて、上質な走りであると感じた。舗装路面が荒れると硬めの乗り心地となったが、そうした余計な凹凸がなければ滑るように走る。しかし、走行性能と乗り心地で最適なタイヤ寸法は、「エレガンス」というグレードに標準装備となる18インチ径ではないかと思う。

後席も快適で、座席の寸法は十分すぎるほど。着座位置も適切で、足を床へ降ろして座ることができ、座面で腿が支えられるので、体が安定する。ただ、試乗車は「レザーシートパッケージ」が適用されていたことから、服装によってはレザー表皮の影響で体が滑り、姿勢が崩れやすいかもしれない。

ガソリン直噴ターボエンジンは、わずか100ccの排気量増大だが力にゆとりが生まれ、軽くアクセルペダルを踏み込むだけで交通の流れに乗ることができて、不足がない。加速の様子は実に滑らかだ。変速機の段数が増え7速となったおかげで、ギア比がより接近し、変速での落差が少なくなったことが影響しているのではないだろうか。湿式クラッチを使うDSGであるため、変速後にギアがつながる様子に気付かないほど滑らかだ。

燃費向上のため、一定速度で走行する際には気筒休止を行うティグアンだが、4気筒から2気筒へ、あるいは2気筒から4気筒へ変わる様子にも、全く気が付かなかった。

まとめれば、マイナーチェンジ後のティグアンは、成熟の度合いを大きく前進させ、完成形の域に達したのではないかと感じた。その上質で、滑らかで、静かな走行感覚は、EVに通じる乗り味であるとも思った。

メルセデス・ベンツは、前型の「Sクラス」で直列6気筒ガソリンターボエンジンを新開発し、これにモーター機能付き発電機(ISG)と電気式スーパーチャージャーを組み合わせ、あたかもモーターのような走行感覚をもたらした。今回のティグアンも、アイドリングストップからのエンジン再始動ではセルモーターの音が響き、ガソリンエンジン車であるのは間違いないのだが、静かで滑らかな走行感覚はEVに近づいている。

日本の自動車メーカーは、エンジンからモーターへという時代の変化に対し、エンジン車の感覚から違和感がないようにEVを仕立てる傾向がある。その点、ドイツ勢はモーターの走行感覚にエンジン車の乗り味を近づけることで、エンジン車からEVへの移行を自然に消費者に体感させようとしているのを感じる。

過去を懐かしむのではなく、新しい時代を楽しみに待つ方が、クルマの未来に期待を持てるのではないかと思う。

御堀直嗣 みほりなおつぐ 1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレース参戦を経て、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。 この著者の記事一覧はこちら(御堀直嗣)
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