負けてなお強し。アルビレックス新潟のJ2首位快走にはワケがある

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2021年05月18日 11:31  webスポルティーバ

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 負けてなお強し――。開幕からの無敗がストップした手痛い一戦も、むしろそんなことを印象づけた試合と言っていい。




 5月16日に行なわれたJ2第14節。アルビレックス新潟は町田ゼルビアとアウェーで対戦し、1−2と敗れた。

 前節まで10勝3分けと無敗で首位を走っていた新潟にとっては、これが今季初黒星。勝ち点のうえでは、2位のFC琉球に「33」で並ばれる結果となった。得失点差で6点上回り、依然首位を守っているとはいえ、スタートダッシュはひとまず止まった格好だ。

「スタートの10〜15分が今日の試合の分かれ道だった。我々の集中力は決して適切なものではなく、しっかりと集中し切れないまま試合をスタートしてしまった」

 新潟を率いるアルベルト監督がそう振り返ったように、何より試合の入りがマズかった。

 キックオフから1分と経たず、左サイド(町田から見て右サイド)のスローインから簡単にサイドを破られて先制点を許すと、11分にはまたしても左サイドのクロスから失点。新潟はたちまち2点のビハインドを背負うはめになった。

「我々が目指しているプレースタイルは、全員がしっかり集中していなければ表現できない。今日は、それができていなかったのが残念」

 結果として、試合序盤の2失点が勝負を決めたのだから、就任2年目のスペイン人指揮官が嘆くのも、当然のことだった。

 しかし、13戦無敗は伊達ではない。新潟はここからが強かった。

 町田の果敢なプレスに手を焼いた試合序盤を経て、前半半ばから徐々に前方向へとボールが動き始めると、新潟の攻撃は後半開始から一気にギアアップ。完全にボールを支配し、町田を自陣に閉じ込めた。

 とりわけ新潟の強さが感じられたのは、高い位置での攻撃から守備への切り替えの速さである。

 最終ラインからボールを大事につないで攻撃を組み立てるだけでなく、新潟は一度ボールを失ったあとの奪い返しも速かった。これでは、町田もどうにか守るだけで精一杯。カウンターで追加点を狙うどころではなかった。

 結果的に新潟は、キャプテンのDF堀米悠斗が豪快な左足シュートで1点を返すにとどまり、逆転はおろか、同点に追いつくこともできなかった。

 だが、「少なくとも引き分けるに値するチャンスは多く作れていた」とアルベルト監督。実際、必死で逃げ切りを図る町田に対しても、いくつかの決定機を作り出しており、相手を蹂躙するような攻撃には迫力があった。

「やりたいサッカーをやっていれば、相手がキツくなる」

 堀米が口にした、そんな言葉からも決して小さくはない自信がうかがえる。今季初めての敗戦も、内容的に見れば、それほど悪くない負け方だった。

 今季の新潟が好調に首位を走ることができている最大の要因をあげるとすれば、昨季アルベルト監督が就任して以来継続してきた、スタイルの確立にあるのだろう。

 ボールを支配し、敵陣で攻守を繰り返す――。目指すスタイルの成果は、勝ち点33だけでなく、J2最多を誇る総得点32にも表われている。ピッチ上の選手たちがバランスよく立ち位置を取り、連動した攻守を繰り返すことができているからこその数字だろう。

 攻撃的なスタイルを志向しているとあって、好調なチームのなかで注目されがちなのは前線の選手たちだ。10番を背負う20歳のMF本間至恩や、昨季J3得点王で"個人昇格"を勝ち取ったFW谷口海斗らが、その筆頭格だ。

 しかしながら、今季の新潟が目指すスタイルを確立するにあたり、むしろカギを握っているのは、パスワークの起点となる最終ライン。なかでも絶対不可欠な存在となっているのが、センターバックを任されている35歳、DF千葉和彦である。

 サンフレッチェ広島時代、3度のJ1制覇に大きく貢献した千葉の持ち味は、類まれなビルドアップ能力。パスを受けるためのポジショニングやフィードセンスのよさは群を抜いており、その力だけで言えば、Jリーグナンバー1のセンターバックと言ってもよかったほどだ。

 当時の広島は、ボールを動かすことで意図的に相手の守備を広げ、すかさず空いたスペースを突いていくことを得意としたが、そこに千葉の能力は欠かせないものだった。

 16年前、新潟でJリーガーとしてのキャリアをスタートさせた千葉は、広島から名古屋グランパスを経て、今季から古巣に復帰。昨季11位に終わった新潟が今季、加速度的にスタイルの確立を進められた背景に、ベテランDFの存在があることは見逃せない。

 さすがに現在は年齢も30代半ばとなり、全盛期ほどのキレはなくなっているとはいえ、最終ラインでも落ち着いてボールを扱い、時に自ら前方へ持ち運び、時に一撃必殺の縦パスを通す。その力は、J2レベルではいまだ抜きん出ている。

 ボールを保持して試合を進めたい新潟にとって、日本には数少ない"異能"を手にしたことの意味は大きい。まだ14節を終えたばかりの今季、チームとして千葉の能力をもっと効果的に取り込み、さらに練度を高めることができれば、一度止まったかに見える勢いも、一段と加速する可能性すらある。

「いつかは負ける日が訪れると、誰もがわかっていた」

 アルベルト監督がそう語ったように、無敗のまま長いリーグ戦を終えることなど、そう簡単にできるはずがない。

 しかし、だからこそ、ひとつの負けを喫したあとが重要になる。

 キャプテンの堀米が「同じこと繰り返しちゃいけないという教訓にしなければいけない」と言えば、指揮官もまた、「ミスから学ぶことが重要。今日のミスから選手たちが学んでくれることを願っている」と語り、次戦へと視線を向ける。

 今季初黒星を喫したばかりの新潟は、幸か不幸か、次の第15節では現在3位の京都サンガを、さらに次の第16節では現在2位の琉球を、いずれもホームに迎える。

 新潟にとっては、シーズン序盤の天王山とも言うべき2連戦。ミスからの学びを問うには絶好の舞台となりそうだ。

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