「自分を好きになれない」と苦しむ22歳女性に鴻上尚史が説いた“好き”と“嫌い”以外の生き方

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2021年05月18日 16:00  AERA dot.

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写真鴻上尚史さん(撮影/写真部・小山幸佑)
鴻上尚史さん(撮影/写真部・小山幸佑)
 自身を「ダメなところだらけ」と責め続ける22歳女性。「今の自分を認めつつ改善していく」ことができないと思い悩む相談者に、鴻上尚史が勧めたのは「0と100の間で人生と向き合う生き方」とは。

【相談106】だめな所だらけの自分を認めて、好きになるなんて事、できるのでしょうか(22歳 女性 あかね)

 私は病院受付をしている22歳女です。

「自分を好きになる」という事と「ダメな自分を直す」という事がわからなくなっています。

 私は幼い頃、活発で、周りのことを考えない、わがままな子供でした。

 そして中学あたりで、自分の無神経な行動を批判されたり、些細なことで同性に陰口を言われたりして「自分が間違ってる」と知り、精神的に不安定になりました。

 高校は、心療内科に通院しながら通いましたが、休みがちで、留年した後に通信制に転校しました。

 そして卒業してからは3年弱の介護職を経て、今の職場で働いています。

 今はとても働きやすく、精神的にも安定してる日々がほとんどなのですが、落ち着いてきて冷静に考えられるようになり、自分の行動や考え方などで直すべき所に気づきました。

 そして、そんな所だらけの自分をずっと責め続け、好きになれません。

 ある日、自分を認めてあげて、と両親に言われました。

 うまくいかなかったり、自分はだめだなぁ、と思っても、それを大きく考えすぎないで、自分を責めないで、と。

 自分はなんで卑屈なんだろう、なんで変われないんだろう、価値のない人間だ、そう思い続けてた私にとって、とても難しい事です。

 性格を直した後の自分を認める、ということはできそうな気がするのですが、今の自分を認めつつ改善していく、ということがどうしてもできなくて悩んでいます。

 だめな所だらけの自分を認めて、好きになるなんて事、できるのでしょうか。

【鴻上さんの答え】
 そうですか。あかねさん。「だめな所だらけの自分」を認めて、「好きになる」ことは無理ですか。

 では、友達はどうですか?

 あかねさんには仲のよい、大好きな友達はいますか? もしいるとしたら、その友達には「だめな所」はひとつもないですか? 好きな友達はみんなパーフェクトな人ですか?

 逆に言うと、だめな所がひとつでもあったら、その友達のことを嫌いになりますか?

 好きな友達がいないのなら、推しのアイドルとかミュージシャンとか俳優はいませんか?

 もし、あるアイドルが好きだとして、その人には何の欠点もないですか? やっぱり、完全な人しか好きになりませんか?

 あ、ご両親もそうですね。両親はパーフェクトだから好きですか? 欠点があるから、大嫌いですか?

 勝手な推測ですが、他人の場合は、「だめな所」と「嫌い」という感情はイコールとは違うんじゃないですか?

 両親も友達も推しのアイドルも、欠点があったり、ダメな部分があっても、それがただちに「嫌い」という感情にはつながらず、好きだったりするんじゃないですか。

 ただ、自分だけが、ダメな部分があると、すぐに「嫌い」という感情につながっているのではないですか。

 そうするとね、あかねさん。それは、僕には、「好き」という強烈な感情の裏返したものに感じるのです。

 とても好きだからこそ、ちょっとした欠点が許せない、という感覚です。

 自分が大好きだからこそ、自分のちょっとしたことが許せなくて、ダメな部分しか目につかなくて、自分が大嫌いになる、という感覚です。

 でも、正直に「自分は自分のことが大好きなんだ」と認めてしまうと、子供時代の自分が戻ってくるかもしれないと、あかねさんは怯えているんじゃないかと感じます。

「活発で、周りのことを考えない、わがままな子供」時代です。

 そうなってしまうと、また、中学生の時みたいに、「自分の無神経な行動を批判されたり、些細なことで同性に陰口を言われたり」する可能性があって、それが、あかねさんはとても怖いんじゃないでしょうか。

 だから、「自分は自分のことが大好きなんだ」と認めるより、「自分は自分のことが大嫌いなんだ」と決めた方がまだいいと思っているんじゃないでしょうか。

 でね、子供時代は、自分が大好きですから100点満点の状態です。今は自分が大嫌いですから0点の状態です。

 僕がこの連載で何度か書いているように、「0か100」というのは、申し訳ないのですが「子供の思考」です(大人でもこの考え方をしてしまう人が多いんですよね)。

「自分を認めてあげて」というご両親のアドバイスはとても素敵ですが、これは自分を「100点」として受け入れてというアドバイスになってしまうと僕は感じます。

 あかねさんは、一度、つらい目にあって、ちゃんと成長したと思います。高校も通信制を含めてがんばって卒業したし、今現在、安定して働けています。

 そろそろ、「自分が大好き」と「自分が大嫌い」の、ふたつにひとつではなく、「この部分はちょっとだめ」「ここはけっこういい」「これは私はだめだと思うけど、たぶん、世の中の人はそう思わない」と、0と100の間、48点とか72点とかで、人生と向き合う生き方を選んでもいい時期じゃないかと思います。

 自分の「ある部分」は受け入れて、「ある部分」は改善しようとするということは、ちゃんと自分と向き合うということです。これはとてもしんどいことです。

 一番簡単なのは、自分のことは「全部好き!」か「全部嫌い!」です。子供の発想ですね。

 そうではなくて、粘り強く、周りの意見も聞きながら、冷静に、「今日の私は49点だった」とか「今日は92点だった」と自分と向き合うのはどうでしょうか。

 やがて、「ふむ。私って、自分であきらめるほど悪くはないし、期待するほど良くもないか」なんて、やわらかく自分と向き合える日が来るんじゃないかと思います。

 焦らないで、ゆっくり、ゆっくり、始めてみて下さい。ここまでやってこられたあかねさんなら、きっと、できると思いますよ。

 あかねさん。ゆっくりと自分と向き合ってみて下さい。

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  • 僕の場合、自分の顔が大嫌いです。顔の所為で恋人が出来たこともありませんし、友人も少なくコミュ障になり就職だって苦労しました。此れはどうしようもないです。
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  • 46になっても自分が好きになれない…��������
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