「こんな時代だからこそ発信を」コロナ禍のライブバー店長に、音楽への想いや今の本音を聞いた

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2021年05月18日 18:00  まいどなニュース

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写真加瀬さん近影。アーティスト・加瀬だいすけとしてステージにも立つ
加瀬さん近影。アーティスト・加瀬だいすけとしてステージにも立つ

新型コロナウイルスの影響で、音楽業界は大きな打撃を受けています。

【写真】ライブバー「section3」の店内

このような状況下で、地域のライブハウスやライブバー、そしてそこを拠点に活動しているミュージシャンたちは、一体どのような想いを抱えているのでしょうか。

大阪市内の鶴橋にあるライブバー「section3」(大阪市東成区)の店長であり、自身もアーティストとして活動する加瀬大輔さんに、今の状況や本音について聞きました。

――僕も出演させていただいたりして、何年もお世話になっていながら、聞く機会がなかったのですが「section3」のこれまでについて教えてください。

加瀬さん(以下、敬称略):僕がここの店長になって今年で8年なんですけど、その前はオーナーがやっていたんです。その頃に知り合いのミュージシャンの応援に来たのが縁で僕自身もここでライブや企画をやらせてもらうようになって。そのうちに、オーナーから「店やらないか」と誘ってもらったんです。

――なるほど。別にオーナーさんがいることは知りませんでした。

加瀬:そうなんです。今は僕が運営していますけど。店長になった当初はまだ人脈とかがなかったので、人づてで集客を頑張りました。

――音楽に限らず色々な企画をされていますよね。

加瀬:ガンダムが好きな人たちで集まってガンプラを作ったり、野球好きのお客さんの発案で野球と音楽を融合したイベントを開催したり――。人の縁をつないでいきながら、今の形を作っていきました。店のバーテンダーを務めているasukaくんも、元々は僕がやっているユニットのメンバーの知り合いだったんですよ。

音楽は“不要不急”?

――コロナ禍で直面している困難や課題について教えていただけますか?

加瀬:一言でいうと“大変”です。うちも客商売なので、出演者やお客さんに来てもらわないとお金は発生しないし家賃も払えない。でも、自粛ムードでなかなか皆さん出てこられない…。

――どの接客業にも当てはまります。出演者からのドタキャンや無断キャンセルもあったとか。

加瀬:しょっちゅうですよ。でも、外出や出演によって多少なりとも感染へのリスクが上がってしまうことを考えると、こちらから無理に出演をお願いすることはできないです。

――加瀬さんの知り合いや関係者にも影響があったりしますか?

加瀬:もちろん。ミュージシャンや他のお店のマスターの方が、濃厚接触者や感染者本人になって隔離されてしまった、なんて話はよく聞きますね。

――本当に大変な状況です。

加瀬:まあ、仕方のない部分はあります。でも、このような現状の中で一番ネックとなるのは、音楽をやることが“不要不急”みたいな風潮が世間に広まってしまうことだと思うんです。僕も含めて音楽を大切に思っている人もたくさんいて、そういう人たちにとって音楽は“不要不急”じゃない。でも、世間の風潮がそれを許さない。昨年、京橋のライブハウスでクラスターが発生した直後とかは、ギターを持っているだけで周囲から冷たい目で見られたこともありました。

――私にも覚えがあります。ギターを持っていたら、すれ違ったカップルに「ヤバい」って言われたんですよ。でも、このような時期だと、言われても仕方がないのかなと思えたりもして。

加瀬:それって少し違う気がするんですよね。少し前まで、音楽をやっている人間は非難されて当たり前のような風潮でした。でも最近はほとんど騒がれなくなった。一時期は世間から悪者みたいな扱いをされていたのに、時が過ぎたらそんな事実さえなかったことにされているように思えてしまいます。

――それでも、「音楽にはリスクがある」という印象は、世間に根強く残っているのでは?

加瀬:でも、リスクがあるのは音楽だけに限らないでしょ。何にせよ、人が動けば多少なりともリスクは伴いますよね。

――そのようなリスクが叫ばれるなかで、どのような取り組みをされていますか?

加瀬:月並みかもしれませんが、アルコール消毒などの感染対策はできる限りやっています。あとは、出演者の方がうがいできるよう手洗い場に紙コップを常備していたり、窓を開けて換気もしています。

加瀬:また、なかなか会場に来られない方々に向けて、ライブの様子をネットで配信しています。利用している配信サイトには投げ銭システムがあるので、わずかではありますが見てくださっている有志の方から収益もいただいています。

目先ではなく、根本を見る

加瀬:あとは強調できることとして、この状況下でも運営を続けているというのはあるかもしれない。こういう時期だからこそ自分たちで立てるぐらいの力をつけたい、という気持ちでやっています。

――“負けないぞ”みたいな。

加瀬:実際には負けているけど(笑)。でも、気持ちで負ける気はない。それは、今の騒動の本質って、ウイルスではないと思うからなんです。コロナはあくまでも発端であって、そこから起こっている問題の方が深刻な気がします。

――私も思い返してみたら、最近愚痴が多くなっていたり、対人関係での小競り合いが増えていた気がします。気づかないうちにメンタルがマイナス寄りになってしまっている人は多いかもしれませんね。

加瀬:もっと言うと、「失業者や自殺者はどれだけ出ているの?」とかも。その背景には根本的な問題があると思うんです。コロナの危機はワクチンが広まれば収束に向かうでしょう。でも、次の危機がやってくるかもしれません。その時、この社会や人の心はまた悪い方に動いてしまうんじゃないかな。目先のことばかりにとらわれず、本質を見ることが大切だと思います。

歌っている人たちを応援しつつ、いろいろなことに挑戦したい

――他に店の運営として行っていることはありますか?

加瀬:まず、「アーティストたちが歌える場を残したい」という思いから、「section3」の運営継続のためのクラウドファンディングを行っています。協力をしてくれた人たちには、当店のオリジナルコーヒーのドリップパックを毎月お送りしています。

加瀬:あとは、ネットショップを開設して、「section3」オリジナルグッズの販売や、うちに出演してくれているアーティストさんのCDやグッズの委託販売も行っています。

――いろいろなことに取り組まれていますね。

加瀬:今後はこの会場を母体にして、ライブだけじゃなく講演や教室を開催したいとも思っています。いろんなことに挑戦していきたいです。

小さなところからでも発信を!

――では、最後にメッセージをお願いします。

加瀬:「小さなところからでも発信していこう!」です。日本人ってどうしても右にならえが美徳で、なかなか主張できないところがあります。でも、人の見方は千差万別で、何が正しいかなんて人それぞれ。だから、非難されることを恐れたり、自分なんかがと思ったりせずに、まずは発信することが大切だと思うんです。昔は突出しているアーティストが多くて、だからこそ今の人たちにも感動を与えている。僕もそうなりたいし、皆にもそこを目指して欲しいと思います。

  ◇  ◇

自分の信念をもちながら、仲間のことも思いやって、想いを発信し続けている加瀬さん。その姿は、音楽に関わる人のみならず、多くの方の参考にもなるのではないでしょうか。加瀬さん、貴重なお話、ありがとうございました!

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・竹中 友一(RinToris))

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