渋野日向子は迷走中? コーチなし、スイング大改造に識者から不安の声

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2021年05月19日 06:31  週プレNEWS

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写真昨年から勝利が遠い渋野。今季もトップ10入りできない試合が続き、同じ黄金世代、さらに若い選手たちの後塵を拝する形になっている
昨年から勝利が遠い渋野。今季もトップ10入りできない試合が続き、同じ黄金世代、さらに若い選手たちの後塵を拝する形になっている

今年4月、松山英樹がマスターズ・トーナメントを制し、グリーンジャケットに袖を通した。マスターズを含む、「メジャーチャンピオンシップ」と呼ばれる四大大会で優勝したのは、日本男子ゴルフ界では松山が初めて。まさに歴史的快挙だった。

女子ゴルフ界では2年前、同じくメジャー大会のひとつである全英女子オープンを、渋野日向子が制したことが記憶に新しい。当時は実質プロ1年目のルーキーで、初めての海外試合であり、初めてのメジャー出場。にもかかわらず、終始笑顔を振りまきながら、軽やかにチャンピオンズトロフィーを持ち帰った。

しかし、その"スマイリング・シンデレラ"の笑顔に陰りが見えている。19年は国内でも4勝を挙げたものの、20年は勝ち星なし。昨年末の全米女子オープンは4位とメジャー2勝目に迫ったが、スポット参戦を続けているアメリカLPGAツアーでは思うような成績を残せていない。

10位台をキープしていた世界ゴルフランキングも、5月10日時点で26位。日本選手では3番目と、ランキングで決まる東京五輪出場(上位2選手)も怪しくなってきた。

今年に入り、渋野は自らを大きく変化させている。3年間師事した青木 翔コーチのもとを離れ、当面はコーチをつけないことを表明。スイングの大改造にも着手した。

渋野のニュースイングは、これまでとは明らかに違う。バックスイングで頭の高さまで上がっていたグリップは肩の高さまで。フラットでコンパクトなトップをつくっている。そしてレイドオフ(トップの位置で、シャフトが飛球線方向より左を向く)からクラブヘッドを下ろしていく。

近年、アメリカ男子のPGAツアーを中心に流行している「シャロー(浅い)スイング」「シャローイング」と呼ばれる動きだ。ボールに対するクラブヘッドの入射角を浅くすることでショットの安定性が増し、究極的には飛距離も伸びる。渋野は、打球が左に曲がるミスを減らし、ショットの再現性向上を狙っているという。

スイング大改造はうまくいくのか。プロゴルファーで解説者のタケ小山氏はこう分析する。

「渋野とシャローイングの相性はいいと思います。腕が長く、手の位置が低い渋野は、そもそもシャローなんです。ただし、バックスイングを浅く、トップを低くしたことでパワーが出ず、スイングスピードは落ちるでしょう」

スイングスピードが落ちれば、アドバンテージだった飛距離を失うことになる。小山氏も「今以上のスイングを求める気持ちはわかります。しかし、何を求めてスイングを変えるのかをはっきりしないと、渋野のいいところをすべて消してしまいかねません」と懸念する。

これまで渋野は、クラブを振る才能と、けれん味のないスイングで攻撃的なショットを放ってきた。それは強気のパッティングと共に渋野のトレードマークだった。そのスタイルから移行し、ミスを減らして再現性の高いスイングをつくることは、単なる改造ではない。プレースタイルをも変えていくことになる。

「渋野はポテンシャルと、それまでにつくってきたスイングでメジャーを勝ったわけです。それを磨くことが大切で、一からやり直すようなことは危険です。本当の迷路に入り込む可能性があります」(小山氏)

実際に、迷い道に入った選手は少なくない。メジャー2勝、15年2月に17歳で世界1位になったリディア・コー(ニュージーランド)も、コーチ、キャディ、クラブなどすべてを変えたことで、「(17年に)世界ナンバーワンから転げ落ち、低迷した」と小山氏は指摘する。

渋野が現在、コーチをつけていないことも不安要素だ。スイングだけでなくプレーで悩みがあっても、解決の手立てを提示してくれる存在が近くにいないことになる。特定のコーチがいなかった松山が、コーチをつけた途端にマスターズ制覇を成し遂げた(もちろん理由はそれだけではないが)ことを鑑みても、次のメジャー制覇を狙うのであれば、やはりコーチは必要だろう。

また、渋野がどのフィールドで、どう戦いたいのかが明確に見えてこない。2年前に全英を制し、米ツアーメンバーになる権利を得たものの、国内ツアーを選択して登録を見送った。しかしその後、目標を変更して米ツアーの出場権獲得を目指しスポット参戦を続けており、結局"回り道"になってしまっている。

日本かアメリカか。さらに東京五輪もある。すべての目標を狙える位置にいて、その実力を持つゆえの悩みだろうが、スイング、コーチも含め、渋野は「迷走中」(小山氏)のように見える。

ただし、と小山氏は言う。「ポテンシャルが高いのは確かです。国内ツアーを制する力はあるし、日本だけで終わる選手ではありません。体格にも恵まれ、スタミナもありますから、米ツアーで十分にやっていけます」

メジャーチャンピオンとはいえ、いまだ発展途上の選手。5月に入ってからは、2年前に初優勝を果たして縁起のいいはずの「ワールドレディスサロンパスカップ」を欠場。優勝者としての出場義務違反の罰金を払ってまで米ツアーに挑戦した。

アメリカ行きの覚悟は決まったようだが、スイング改造には半年以上かかると多くの関係者はみている。選択の良しあしの判断もそうだが、満面のスマイルが見られるのはもう少し先になるかもしれない。

取材・文/小崎仁久 写真/アフロ

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