「日本型変異株」発生のリスク 「遅すぎ」接種ペースが招く!?

7

2021年05月19日 08:00  AERA dot.

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AERA dot.

写真ワクチン接種に使われる注射器 (c)朝日新聞社
ワクチン接種に使われる注射器 (c)朝日新聞社
 専門家たちに強く迫られたことで当初の方針を覆し、慌てて北海道、岡山県、広島県への緊急事態宣言発出に踏み切った菅義偉政権。感染の波が全国を覆う中、頼みの綱のワクチン接種もなかなか進んでいない。その遅れがウイルスの変異を招き、重大な結果につながる恐れがあるという──。

【写真】ワクチン担当の河野太郎行政改革担当相

*  *  *
 海外と比較して、日本の新型コロナウイルスワクチンの接種は遅々として進まない。1回以上接種を受けた人の割合は5月13日時点で3.2%と、先進国が加盟する経済協力開発機構(OECD)37カ国中でも最低。医療従事者約480万人への接種も、4月末時点で2回目の接種を終えた人はまだ22%程度だ。

 ワクチンの供給が限定的だったこともあるが、政府は医療従事者への接種も進まぬうちに、高齢者の接種を同時並行する形で開始。菅義偉首相は「1日100万回接種」をぶち上げ、7月末までに完了させる方針を打ち出した。ところが、一部の自治体が期限内の完了は困難と回答すると、菅首相は記者団に「ショックだった」と吐露。東京五輪開催を照準にした目標設定が、無理筋だったことは明らかだ。

 精神科医で、老年内科医でもある和田秀樹・国際医療福祉大学大学院教授が怒りを込めて語る。

「政府が真っ先にやるべきだったのは、医療従事者と入院患者を合わせた約600万人分のワクチンをあらゆる手段で確保し、一気に接種することでした。そうすれば、感染や院内クラスターを恐れる医療スタッフをコロナ治療の戦力にすることができ、医療逼迫の回避につながります。政治的メッセージなのか、高齢者への接種を前倒しで始めましたが、供給量が足りないから予約も取れず、逆に高齢者を不安に陥れているだけです」

 5月7日時点で、ワクチン接種後の死亡例が39件あるのも気になる。重いアレルギー反応であるアナフィラキシーと判定されたのが107件(5月2日時点)。和田医師が勤務する病院でも、特に2度目の接種後、約1割の人に38度以上の発熱が起きているという。約3600万人いる高齢者に安心してワクチンを打てるのか、副反応の検証のためにも医療従事者への先行接種が不可欠だと指摘する。

 不条理は、医療従事者の中での接種順にもある。和田医師がこう続ける。

「地域医療の最前線に立ってコロナ患者を診ている病院よりも、富裕層相手の病院のスタッフのほうが先にワクチンを受けているというめちゃくちゃな現実がある」

 加えて懸念されるのは、ワクチンの打ち手不足だ。各自治体は集団接種会場での医師や看護師の確保のため、人材派遣会社を通じ「日給10万円」でアルバイト医師を募集するなど苦慮している。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が言う。

「バイトの医師が毎日入れ替わるような体制だと、自分の病院で緊急手術やワクチン接種があればそちらを優先せざるを得ないから、穴を開けることになる。自治体がしっかり計画を立て、現場を仕切り、バイトを差配するリーダー格の医師を置かないと、接種は進まず、だらだら延びてしまうでしょう」

 ワクチン接種のスピードが鈍いことは、新たに深刻なリスクを招きかねない。すなわち、「日本型変異株」の出現である。上医師はこう語る。

「抗生物質や抗がん剤を使った治療は、一気にやらないと耐性を招くことが知られています。ワクチンの場合も、日本のように緩慢に接種を進めているとウイルスが変異をくり返す中でワクチンが効くものは消えていきますが、耐性を持ったものが生き残り、増殖していくことが考えられます」

 英科学誌ネイチャーは、「迅速かつ徹底したワクチン接種が、変異株が足場を築くのを防ぐ」と指摘している。その通り、米国と英国は今年に入ってワクチン接種を一気に加速させ、感染者を激減させた。5月15日時点で、ワクチンを少なくとも1回以上接種した人の人口に占める割合は、米国が約46%、英国が約53%。両国では経済再開の動きが活発化し、屋内施設や飲食店の集客制限が緩和されるなど街が活気を取り戻しつつある。上医師が説明する。

■接種率が4割で集団免疫効果?

「米英両国とも接種率が40%くらいになったころから感染者は増えておらず、集団免疫の効果が出始めた可能性があります。変異株が入ってワクチンの効きを低下させたとしても、ファイザーやモデルナのワクチンは変異株に対しても有効性が50%はあるといわれており、蔓延にはつながらないと考えられます」

 一方、日本の接種率は一向に上昇しないまま、時間だけが経過している。

「いまは昨年同時期に比べても、はるかに感染者数が多い。その分、ウイルスの変異が起きる可能性も高まります。このまま本格的な冬の流行期に突入していく中で、『日本型変異株』が現れる恐れが十分にあり得るのです」(上医師)

 日本発のワクチン耐性株が出現してしまえば、早期にワクチン接種を終えた各国が通常の経済活動に復帰していく中、日本だけがその流れから取り残されることすら考えられる。悲劇的結末を避けるためには、ワクチン接種のスピードアップに全力を注ぐ必要がある。(本誌・亀井洋志)

※週刊朝日  2021年5月28日号

このニュースに関するつぶやき

  • 片や五輪、片や猛烈変異株で地獄、てなことになりそうな安心安全五輪やな。五輪選手への手土産は変異株にて世界蔓延、武漢コロナが堂々と日本コロナに変換やな。以降国際舞台からオミット。
    • イイネ!1
    • コメント 0件
  • でも、感染者の分母が違うって話じゃないかと思うけど?チャイナは何も言わないけど、あそこは分母が大きいから変異しててもおかしくないよね?
    • イイネ!21
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(7件)

前日のランキングへ

ニュース設定