【レースフォーカス】雨が生んだ明と暗…バニャイア、ホンダライダー、M.マルケス、ビニャーレスの場合/MotoGP第5戦

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2021年05月19日 08:31  AUTOSPORT web

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【レースフォーカス】雨が生んだ明と暗…バニャイア、ホンダライダー、M.マルケス、ビニャーレスの場合/MotoGP第5戦
 ドライコンディションで始まったMotoGP第5戦フランスGPの決勝レースは雨が路面を濡らし、ライダーたちはピットイン、マシンを乗り替えなければならなかった。しかし、レースが進むと雨は上がり、頭上には青い空がのぞきはじめる。路面は再び、ドライコンディションになっていった。天候とフラッグ・トゥ・フラッグが命運を分けたこのレース、それぞれのライダーについて追っていく。

■フランセスコ・バニャイアの場合
 まずは、4位でフィニッシュしたフランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)。16番グリッドからスタートしたバニャイアは、フラッグ・トゥ・フラッグでレインタイヤを履いたマシンに乗り替えると、10番手付近から次第にポジションを上げていった。

 実はバニャイア、ドライコンディションで走らせていたマシンはあまりよくなかったという。「バイクを交換できたのは、この混乱のレースのなかではラッキーだったね」と、バニャイアはフラッグ・トゥ・フラッグを味方にしたようだ。

 しかし、ピットに戻った際にはひとつの“アンラッキー”があった。ミラー同様、バニャイアもピットレーンでのスピード超過により、ダブル・ロングラップ・ペナルティを科されたのである。ピットレーンの制限速度は60km/h。スピードオーバーをしてしまったのだ。

「(ピットレーンで)スピードを3km/hオーバーした。ペナルティは正しいものだ」と、バニャイアはペナルティについて冷静に受け止めた様子を見せつつ「このダブル・ロングラップ・ペナルティで7秒ロス。これがなければ、2位、3位に迫れたと思う」とも語った。

 バニャイアが語るように、路面が乾いていった終盤には猛烈な追い上げを見せた。そのラップタイムを見ると、レース中盤以降は優勝したジャック・ミラー(ドゥカティ・レノボ・チーム)よりも各周1秒ほど速かった。

 その勢いについて、3位表彰台を獲得したファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)は「残り5周でペッコ(※フランセスコ・バニャイアの愛称)が追い上げてきたんだけど、僕より2秒か2.5秒くらい速かったんじゃないかな。あと2周あったら……」と語っている。

 最終的なクアルタラロとバニャイアとの差は1.704秒。バニャイアのダブル・ロングラップ・ペナルティによる「7秒のロス」がなければ、計算上は3位フィニッシュが可能だったことになる……もちろん、レースに“たら・れば”はないのだけれど。

 ともあれ、16番グリッドから4位でフィニッシュを果たしたバニャイアは、チャンピオンシップランキング2番手。トップのクアルタラロとの差を1ポイントにとどめることに成功したのだった。

■ホンダライダーの場合
 ホンダライダーとしたのは、彼らがある問題を抱えていた、とレース後に口をそろえたからだ。それは、ウエットコンディションにおけるリヤのグリップ、トラクションである。

 7位でフィニッシュした中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)は、ドライコンディションで始まったレース序盤は4番手付近を走り、マシンを乗り換えてからは一時、3番手を走行した。しかし、ペースは上がらずトップを走るジャック・ミラー(ドゥカティ・レノボ・チーム)やクアルタラロとの差は開いていき、終盤には後方から追い上げてきたライダーに交わされて後退した。

 中上によれば「ウエットコンディションにかなり苦戦しました。氷の上を走っているようで、リヤグリップは“ゼロ”でした」という状況だったという。

「特に、ブレーキングからの旋回とエイペックスに向かうところです。立ち上がりはよかったのですが」

 ポル・エスパルガロ(レプソル・ホンダ・チーム)はリヤのトラクションについて、「それは僕たちが今、抱えている問題だ」と同意している。ポル・エスパルガロは8番グリッドからスタートし、レース中盤以降はそのポジションをキープしたまま8位でレースを終えた。

「リヤのトラクションがない。特にバイクが真っ直ぐな状態のとき、この問題に苦しんでいる」

「ウエットでは、ドゥカティは僕たちよりもトラクションがある。それが問題だ。けれどドライでは、僕は速かったしバイクにも満足していた。グリップにも不満はなかったんだ」

 6位でフィニッシュしたアレックス・マルケス(LCRホンダ・カストロール)も「その問題は僕にもあった」と語っている。

 ただ、中上やポル・エスパルガロほど苦しさがあった、というわけではなかったようだ。レース終盤にバニャイアやダニロ・ペトルッチ(テック3・KTM・ファクトリーレーシング)に交わされはしたが、アレックス・マルケスの6位は今季自己ベストリザルト、そしてホンダ勢最上位の結果だった。

■マルク・マルケスの場合
 マルク・マルケスは2回の転倒により、今季初のノーポイントレースとなった。マルク・マルケスは決勝日午前中のウォームアップセッションでも転倒しており、この日だけでも3度のクラッシュを喫したことになる。

 1回目の転倒は8周目。マルク・マルケスはマシン乗り換えの後にレースをリードしていた。第3戦ポルトガルGPで復帰して以来、初めてマルク・マルケスが決勝レースでトップを走ったシーンだった。

 このときの転倒については「予想外だったよ。そんなにプッシュしてなかった。でも、フラッグ・トゥ・フラッグではそういうことが起こることもある。かなりリスクがあるからね」と、今回のレースでは仕方ないといった様子。

 しかし、18周目に喫した2回目の転倒については「自分に腹を立てている。2回目のクラッシュはよけいだった」。このときマルク・マルケスは、11番手にまでポジションを回復していた。

「2回目のクラッシュは僕のミスだ。自分をコントロールできなかった。100パーセント集中していなかったんだ。速く走りすぎていた。1回目のクラッシュのあと、上位を走るほかのライダーがもっとゆっくりしたペースで走っているなんて知らなかったんだ」

「走りながら、腕のことなんかを考えていた。そして、(転倒した)あのラップには、チームにピットインしてスリックタイヤを履いたタイヤに乗り替えることを知らせた。コースはもう乾いていると思ったからね。でもまあ、そういうことだ。2回目のクラッシュにはがっかりだよ」

 怪我がなかったことは幸いだが、「天候によるチャンスを活かせなかった」とも語るマルク・マルケス。ウエットコンディションであれば、フィジカルにかかる負担は少なくなるからだ。それにしても「100パーセント集中していなかった」というコメントには少し、違和感を覚える。そしてまた、マルク・マルケスは今、完全復活の途中であると感じさせるコメントでもあった。

■マーベリック・ビニャーレスの場合
 レース序盤にはミラーやクアルタラロとトップ争いを演じたマーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)。しかし、マシン乗り換えの後は上位グループから姿を消していた。6周目に12番手に後退したビニャーレスは、最終的に10位でチェッカーを受けた。

「(マシン乗り換えの後)9コーナー、10コーナーあたりでミスしてしまった。マルクからも、ファビオからも、ミラーからも、離れてしまった。それからはもう、手が届かなかったよ」

 ビニャーレス自身のミスだけではなかった。ダンプコンディションでのペースにも苦しんでいたのだという。

「ポジションを上げようとした。でも、路面が濡れていないと、バイクが最大限の形で走らないようだった。フルウエットならグリップがあるし、バイクはよく機能する。でも路面の水が少ないと、少し複雑になる」

 中途半端なコンディションでの苦戦。この問題については、クアルタラロも予選後の会見のなかで「スリックで行けるようなミックスコンディションでは、悪くないと思う。でも、ウエットタイヤで走らないといけないようなミックスコンディションでは……、僕たちのバイクは加速しない」と言及していたものだった。

 ただ、ビニャーレスにとってこのフランスGPのスタートは満足のいくものだったようで、「いいスタートが切れたから、それはうれしい」と語った。ビニャーレスは以前よりスタートの改善を課題としており、カタールでの公式テスト以来、練習を重ねる様子を見せていたのだ。

 開口一番に語った「今日はアンラッキーだったね(苦笑)」という苦笑いに、この日のレースに対するビニャーレスの複雑な心境があらわれていた、かもしれない。

 天候とフラッグ・トゥ・フラッグによって、多くの悲喜こもごもを生んだフランスGPだった。
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