「24インチiMac」を試して実感した“Apple M1の強み” iPhoneで磨かれた技術がついにデスクトップへ

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2021年05月19日 08:32  ITmedia PC USER

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写真「Apple M1」を搭載した新しい「24インチiMac」。写真のカラーは「ブルー」で、全7色の展開だ
「Apple M1」を搭載した新しい「24インチiMac」。写真のカラーは「ブルー」で、全7色の展開だ

 Apple独自設計の「Apple M1」チップが、21.5インチiMacの後継となる「24インチiMac」に搭載された。



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 コンピュータとしての性能をベンチマークテストで調べてみたところ、同じく冷却性能に余裕があるM1搭載の「Mac mini」と同程度の数字が出た。単にコンピュータとしての性能を知りたいならば、「M1を採用」という説明だけで十分という読者もいることだろう。



 Mac miniに加えて、これまでに発売されたM1搭載の「13インチMacBook Pro」や「MacBook Air」でも、Apple Silicon搭載の利点や、ハードウェア設計、機能面への貢献が明らかになっていた。



 Apple Siliconを採用する利点は、単純なCPU・GPU性能だけではなく、機械学習や映像、音声、音響の処理などiPhoneで培ってきた開発成果を生かすことだった。これまでのIntel MacではApple T2チップがその一部を分担していたが、M1を採用することで最新の開発成果をMacの設計に生かせるようになったのだ。



 しかし一方で、ディスプレイ一体型デスクトップパソコンというパッケージに落とし込んだとき、Appleはどのような付加価値をM1で提供できるのか。Appleが独自にSoC(System on a Chip)を開発することの利点について、この新しい24インチiMacで明らかになった部分もある。



●OS+SoC+商品設計のすり合わせで生まれる価値



 iMacのようなディスプレイ一体型デスクトップパソコンというジャンルは、ディスプレイやスピーカーなどをトータルで設計できるため、ディスプレイ別売のコンピュータよりもユーザー体験を演出しやすいという利点がある。



 いや、そうした側面があることをiMacという商品自身が開拓してきたともいえる。黎明期の一体型パソコンは初心者向けの低価格モデルという位置付けで、初代iMacもその例に漏れずだった。



 この流れが大きく変わったのは、27インチiMacに5Kディスプレイが搭載されたときのことだ。しっかりとしたカラー調整が施された5Kディスプレイは、単体の製品で入手すると高価だ。解像度の面でも、5Kモデルは製品の選択肢が少ない。



 これを一体型デスクトップパソコンに採用し、長く搭載し続けることで比較的低価格で提供できたのが27インチiMacの利点だった。OSを含めたコンピュータと一体で提供することで、表示の正確性や、解像度と表示サイズのマッチングなど、使い勝手をトータルで演出できる。



 この伝統は引き継がれており、24(正確には23.5)インチiMacの4.5K(4480×2520ピクセル)という解像度も、情報量と見やすさのバランス、それにDisplay P3対応の色再現、最大500nitsのHDR対応などの利点を、特別な知識の習得や設定を行うことなく、自然にユーザーが活用できるようになっている。



 Appleは、iPhoneの内蔵カメラやディスプレイなどのハードウェアを互いに生かせるように作り込んでおり、自社製品内での体験コントロールを極めて厳密に行っている。



 例えばiPhone 12シリーズはDisplay P3で写真や動画を記録し、動画はHDRでの収録も行えるが、ユーザーはこれらの技術的な仕様を特に意識することなく、iPhoneでもMacでも正しい色やトーンで表示できる。



 当たり前といえば当たり前だが、それを意識せずに行えるようスマートフォン、タブレット、パソコンまで包括的に仕様を決めているからに他ならない。



 こうしたすり合わせの範囲を、M1の採用によってSoCの領域にまで広げることでiMacの付加価値を高めようという意図が、今回の新商品ではさらに明確になっている。



●M1搭載でMacBookと同様の付加価値をデスクトップでも



 M1はiPhone 12シリーズ向けSoCの「A14 Bionic」を強化したチップともいえ、故に共通する回路が搭載されており、iPhoneを磨き上げる中で活用されてきた技術が、そのままMacでも活用できる。



 その端的な例がTouch ID付きのMagic Keyboardだ。M1には指紋認証を行うための処理回路とセキュリティ機能がiPhone向けSoCのAシリーズと同じく搭載されているので、iPhoneで実績のある指紋認証システムをそのまま利用できる。M1を搭載したことで、この機能をデスクトップのMacでも利用可能になった(従来はT2チップを搭載するノート型Macでのみサポート)。



 なお、このキーボードはM1を搭載していればどのMacでも利用可能で、Mac miniなどでも使えるが、現時点では単体での発売は予定されていない。マウス、トラックパッド、Lightningケーブルのカラーバリエーションも単体発売はなく、いずれもiMacオーナーが保守部品として注文する以外に入手方法はない。



 1080p解像度に対応するFaceTime HDカメラの画質も、同様にiPhone 12シリーズのカメラと同じ高画質化処理が行われる。MacBook Air・Proとの違いはセンサーサイズで、より大きく高画質なCMOSセンサーが内蔵されている。



 実際に使ってみると、オートフォーカス(AF)やオートホワイトバランスの性能が高く、暗所でのノイズが少ないなど極めて優秀な結果が得られた。筆者が知る限り、ここまで高画質な内蔵カメラを備えるパソコンは他にない。



 それどころか、手元にある今年発売のUSBカメラを幾つか試したが、どれも高画質をうたっているものの、ノイズ、色再現、露出やAFなど、あらゆる面でiMac内蔵のFaceTime HDカメラが上回るほどだ。



●音楽も映像作品も楽しめる優れたスピーカー



 11.5mmしかない薄型の筐体は、今回ディスプレイ下部のスペース(アゴと一部ではいわれている部分)も比較的小さくなっており、とてもよい音がスピーカーから出てきそうには思えない。真下にしか音が出てくるスリットがないことも、よい音がでないと想像させる理由だ。



 しかし実際に試聴してみると、まるで前面に向いてそれなりの大きさのスピーカーが取り付けられているかのような、クリアで低域まで伸びた音が楽しめた。



 形式でいえば、iMacのスピーカーは2ウェイ3スピーカーのステレオ構成だ。低域を担当するウーファーを2基用い、ユニットを互い違いの向きに搭載することで振動をキャンセルする構造にしている。



 低域ユニットを対向に搭載することで、低域の量感を引き出し、さらに振動問題を解決することで、積極的に長いストロークでダイアフラムを動かすというアイデアは新しいものではないが、ウーファーといってもサイズ的には中域までをカバーする小さいユニットだ。



 それなりに指向性があるため、2つのスピーカーからの音を正しく聴かせようと思えば、かなりの工夫が必要になる。



 音が出る経路も筐体内を通って真下に出てくるところ、前面に座るユーザーに心地よい音にしようというのだから、信号処理は複雑になる。周波数特性や位相特性(耳に届くまでの時間)を全周波数帯で一致させるなどの工夫が必要になるが、いずれもiPhone、iPadのスピーカー向けに作られた技術をM1ならば応用できる。



 映像作品や音楽を楽しめるだけの低域再生能力を持っており、そのサイズ的な制約を考えれば十分だ。少なくとも中途半端なスピーカーを追加で接続する気にはなれない。27インチiMacよりも全体として整った音が出てくる。



 その素性のよさを最も感じるのは、空間オーディオを楽しむときだ。Apple TV+でDolby Atmos対応の映像を再生する際、Apple独自開発の仮想サラウンド技術で立体的な音響を楽しめるが、十分な立体感を得るにはスピーカーの位相特性が整っている必要がある。



 同種の技術はたくさんあるものの、Appleの空間オーディオは後ろへの回り込みが深く、また上下方向にもある程度は音の移動を感じることができる優秀な仕上がりだ。



 ちょうどApple MusicにDolby Atmosを用いた立体音楽の配信が発表されたところ。今後は音楽でも空間オーディオを楽しめるようになる。



●細部まで行き届いた作り込みはWindows PCにも影響を与えるか



 なおベンチマークテストを実行した場合の性能などはM1を搭載するMac miniと全く同じと考えていい。冷却ファンを内蔵するものの、ほとんどその動作を意識しなくていいという部分も全く同じだ。



 つまりCPUはトップクラスに高速で、GPUもSoC内蔵のグラフィックスとしては2位を引き離す圧倒的な性能を誇る。本機の位置付けであれば、十分な性能だ。



 デザインやガラスとアルミを多用した作りなどはいつもの通りで、薄く仕上がった本体、スタンドとディスプレイをつなぐヒンジ部の質感と動作感など、あらゆるところに高級感を覚えさせ、さらにはここまでに紹介したように、ディスプレイ、オーディオ、カメラなどあらゆる要素が高次元で整えられている。



 M1の弱点はシステムスペックの選択肢が少ない(搭載メモリは16GBまで、Thunderbolt 3は2つまで、独立GPUが選べない)ことぐらいしか思い付かないが、それは今回の24インチiMacの位置付けからすればマイナスにはならない。



 上位機である27インチiMacがApple Siliconに移行する際には、メモリの増設や外部GPUなどの選択肢が増えるべきだろうが、エントリークラスの一体型デスクトップパソコンとしては極めて優秀で、費用対効果においても高い。



 今後この製品が基準になるとするなら、長期的にはWindows搭載PCの開発トレンドにも影響するだろう完成度の高いモデルに仕上がっている。



[本田雅一,ITmedia]


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