オリックスに“5割の壁”再び「言っても始まらない」

◆ 山本由伸で再び返済ならず

　オリックスにとって“5割の壁”は、またしても厚く高かった。

　エース・山本由伸を擁し、借金返済に挑んだロッテ戦。序盤はオリックスのペースだった。2回に4番・杉本裕太郎が「外野を越えるとは思ったが、スタンドに届くとは思わなかった」と、ライトへ先制のソロ本塁打。前夜は、チームは競り勝ったものの、自身は4打数無安打。主砲として5割復帰がかかる大事な試合にチームを鼓舞する一発を放ち、安堵感を漂わせた。

　今季、9試合目の登板となった山本の序盤も順調だった。1回、3人を13球で片付け、2回はレアードに安打を許したものの、井上晴哉を126キロのカーブで空振り三振に仕留めるなど、直球、フォークボール、カーブのコンビネーションで打たせて取る危なげのない投球。

　しかし、援護を受けた直後の3回、荻野貴司に適時打を許し追いつかれ、4回も佐藤都志也、荻野貴の連続適時打で2点を献上。5回にはレアードにソロを浴びた。3回に先頭・藤岡裕大を直球2つで追い込みながら、3球目の155キロを中前にはじき返されたが、今季も3打数2安打と相性が悪い藤岡だけに、勝負を急がない慎重さが必要な場面だった。

　打線は、5回に紅林弘太郎の適時二塁打などで2点を挙げ、1点差に迫ったが、6回には名手・安達了一が二ゴロを後逸してピンチを広げ、T-岡田の本塁への悪送球で2点を献上してしまった。

　結局、山本は6回、108球、8安打、6失点（自責点4）で降板。「ボール自体は悪くなかったが、何とか抑えようと力んで投げ過ぎてしまった。走者を出してから勝負所で甘く入って痛打されるなど、リズムの悪い投球になってしまった」とは山本の弁。6度目の5割挑戦となった5月5日の西武戦（メットライフドーム）でも、山本は10安打を許し、7回途中、自責点4で降板していたが、エースとしての自覚が逆に力みとなって自らの投球の幅を縮めてしまったようだ。

　8回に杉本のこの日、2本目となる10号ソロが飛び出し2点差としたが、9回はロッテの守護神・益田直也に反撃の芽を摘まれ、借金返済はお預けとなってしまった。

　中嶋聡監督は、山本について「先制して、簡単に点を取られると『あれっ』となるのが、エースの宿命。少しずつ返していく中で、その1点が重くのしかかり、ああいうミスもでる。しっかりととらえられていたし、何を投げたかより、どこに投げたのかというのもある。全部が全部、悪いわけではないので」と、言葉を選びながら試合を振り返った。

　借金返済の失敗には「言っても始まらない。何回もチャレンジはするが、そこ（勝率5割）を目指しているわけではないので」と、一喜一憂せず目の前の試合に全力で立ち向かうとした。

取材・文＝北野正樹（きたの・まさき）

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