サポーターに深々と頭を下げたイニエスタ。日本、そして神戸との「絆」

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2021年05月21日 11:21  webスポルティーバ

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 37回目の誕生日を迎えた5月11日、ヴィッセル神戸のアンドレス・イニエスタは2年の契約延長を発表した。

 2018年6月の来日から3年。世界的スーパースターは、Jリーグのピッチでも変わらない輝きで多くのサッカーファンを魅了してきたが、あと2年、そのプレーをJリーグの舞台で楽しめるのだ。




 会見の席に同席した三木谷浩史会長も、彼の功績を讃えるとともに、期待を言葉に変えた。

「世界ナンバーワンのテクニックとサッカー頭脳は予想をはるかに上回るものだったと思いますが、それ以上に『利他の精神』と言いますか、チームだけではなく、周囲の人や社会に対する思いやり――エル・クラシコでレアル・マドリッドのサポーターがスタンディングオベーションをする選手はおそらく、アンドレスだけだと思いますが、その意味がよくわかるなと思います。

 彼の存在によって、ヴィッセルのステータスが上がったという以上にJリーグに対する世界的な認知も高まったと思いますし、キャリア前半の有望な若い選手が日本に来てプレーすることが増えたという流れも、彼が果たした大きな貢献じゃないかと思っています。

 今回の契約延長は、単なる契約延長にとどまらない、ヴィッセル神戸がアジアのナンバーワンになるというプロジェクトに継続的に参加し、引っ張っていくという意味があると理解していただきたい。彼のプレー、哲学、サッカーに取り組む姿勢というものが、サッカーをしている若者だけに限らず、日本全体に大きな影響を与えてくれるんじゃないかと私自身も期待しています」

 イニエスタにとっては、サッカー人生の岐路に立たされた大ケガを乗り越えての契約延長だった。

「ACL(AFCチャンピオンズリーグ2020)で負ったケガは、僕のキャリアで復帰までの時間を最も要するケガになってしまいました。しかも、36歳でこのような大ケガを負ったことで正直、いろんなことを考えました。

 特に手術を決断するまでの時間、そして、実際に手術が行なわれるまでの時間は、本当に手術をするべきか、手術がうまくいくのか、という不安も大きく、僕自身のメンタリティ、サッカーへの思いを試されているようでした」

 ACLをベスト4で終えた直後、スペインに帰国した彼は病院のベッドの上で、何度も自問自答を繰り返したという。さらに言えば、手術を決断し、ポジティブにリハビリに向きあう日々のなかでも、心の揺れはあったと明かしている。

「長期にわたるリハビリになったこともあり、その過程での浮き沈みはありましたが、難しい状況の時も、とにかく努力と練習を続けて乗り越えてきました」

 だからこそ、復帰戦となった5月1日のJ1リーグ第12節のサンフレッチェ広島戦は、彼にとって特別な試合になった。15分間の出場ではあったものの、勝利の瞬間をチームメイトとともに味わえた事実に、素直な胸の内を言葉に変えていたのも印象深い。

「本当に幸せな気持ち。チームメイトとともにプレーできたことが何よりもうれしいし、勝ち点3をとることもできて、本当に完璧な一日になった」

 そして、その舞台で感じたサッカーをできる喜びは、イニエスタに新たな欲を植えつけた。

「ピッチに戻った今、改めて(サッカーへの)ワクワク感を感じています。自分が全力でピッチで表現したものを、今後もファンやメディアのみなさんに語り継いでいただけるような、そんなプレーをこの先のピッチで示していきたいと思っています。

 僕の一番のモチベーションは、ピッチで、自分にできる最高のプレーをすることに他なりません。そのために、日々のトレーニングを続けていますし、この先も長く続けていきたいと思っています。

 かねてから、僕はサッカーの引退を決めるのは、自分でありたい、ケガに引退させられるようなことはしたくないと思ってきました。であればこそ、大きなケガをした今回も、復帰まで多くの犠牲を払い、多くの努力を重ねてきました。

 もちろん、今後もまだまだ練習を重ねていかなければいけませんが、契約延長によって再び、ヴィッセル神戸に関われること、このクラブでアジアチャンピオンという目標に向かって偉大なプロジェクトを成し遂げていくんだというモチベーションが、今の自分を突き動かしています。

 それを今後も持ち続けながら、ヴィッセルのファンのみなさん、日本のサッカーファンのみなさんが示してくれる応援、気持ちに応えるために、努力を続けていきたいと思っています」

 その復帰戦を皮切りに、イニエスタは今、徐々に公式戦での出場時間を増やしながら、コンディションを高め、試合勘を磨く作業を続けている。その姿に、三浦淳寛監督も「(ピッチから)離れていた時間が長かった分、多少時間はかかると思っていましたが、想像していた以上にいい状態。コンディションも試合を重ねるごとに間違いなく上がっています」と太鼓判を押す。

 もちろんそれは、彼自身も実感しながら、完全復活に向けて歩みを進めている。

「練習や試合時間を重ねるごとに、コンディションは間違いなく上がっていますし、ここまでの経過についてもとても満足しています。ですが、ベストコンディションに持っていくための道のりはまだまだあるのかなと感じています。

 今回は長い怪我からの復帰で、痛めた箇所だけではなく、体全体が試合勘、トップレベルで戦えるコンディションを取り戻すには、練習、試合でプレーする時間を少しずつ増やしていく作業が必要になるからです。そういう意味では、この5月は『自分をベストの状態に持っていく』という目標を達成する月になると感じています」

 彼の戦列復帰、契約延長を語るうえでもうひとつ、忘れてはならないのが彼と"日本"との心の距離が年を追うごとに深まりを見せている事実だ。異国での仕事をする外国籍選手にとって、家族を含めた生活環境や食事面での充実は成功をおさめるうえで不可欠な要素になる。

 その点において、イニエスタがこの3年で示してきた日本、神戸への愛着は間違いなく今回の契約延長を後押ししたはずだ。会見で話した"感謝"の言葉が、それを如実に示している。

「私と私の家族を代表して、神戸、日本のみなさんに感謝申し上げたいです。愛情とリスペクトを持ってみなさんがおもてなしをしてくださったことで、本当にこの場所が私たちにとっての第二の故郷になりました。

 みなさんは今、(コロナ禍にあって)大変な時期を過ごしていると思いますが、これまでもみなさんが出してきたのと同じエネルギーを持って、この困難をともに乗り越えていければと思っています。アリガトウゴザイマス」
 
 そんな日本、神戸との"絆"を伺える温かいシーンを目の当たりにしたのが契約延長発表直後のホームゲーム、J1リーグ第14節のセレッソ大阪戦だ。この試合前、神戸サポーターはコロナ禍で観客が立ち入ることのできないアウェーゴール裏にイニエスタの名前と顔をかたどったコレオグラフィーを作り上げた。

 彼の復帰と契約延長を歓迎する意を示したものだと察するが、その思いをイニエスタ自身もしっかり受け取ったのだろう。試合後、30分ほど経って、撤収作業を始めようとしていたサポーターのもとに一人、歩み寄り、深々と頭を下げて、感謝の気持ちを表した。

 これだけのキャリアを重ねても、決して色あせない人間性と"仲間"を思いやる心。それもまた、彼が世界的スーパースターとして愛され続ける理由に違いない。




このニュースに関するつぶやき

  • イニエスタには是非ともカズが更新中である現役プロ選手年数の記録を更新してほしい
    • イイネ!1
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  • 単純に「ゼニ」目当てではなく日本のサッカーを愛しているからこその契約更新。こういう律儀な選手をチームは大事にしてあげなくちゃexclamation
    • イイネ!7
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