三浦建太郎『ベルセルク』が漫画界に残した功績 ダーク・ファンタジー興隆への礎に

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2021年05月21日 12:31  リアルサウンド

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『ベルセルク(1)』

 『ベルセルク』(白泉社)などの作品で知られる漫画家の三浦建太郎が、5月6日、急性大動脈解離のため亡くなった。54歳という早すぎる死を惜しむ声は絶えず、Twitterでも「Berserk」が世界トレンド1位になった。なお、同作が連載されていた『ヤングアニマル』の編集部は、次のようなコメントを発表している。


 “三浦建太郎先生の突然の訃報に接し、ヤングアニマル編集部は深い悲しみに包まれています。
 この受けいれがたい事実をどのように捉えたらいいのか。正直、言葉が見つかりません。思い出されるのは、編集部の人間に会うと、いつも朗らかにご自分の好きな漫画やアニメ、映画の話などを楽しく語っていた時の笑顔ばかりです。我々は三浦先生の怒った顔を見たことがありません。いつも楽しそうな少年のような方でした。
 どうかファンの皆様、関係者の皆様、三浦先生の楽しそうな笑顔を想像していただき、ヤングアニマル編集部と共に静かにご冥福を祈っていただければと存じます。何卒よろしくお願い申し上げます。


ヤングアニマル編集部一同”


関連:【画像】『ベルセルク(40)』表紙


 三浦建太郎は、1985年、「再び…」(『週刊少年マガジン』掲載)にてデビュー。卓越した画力による豪快なバトル表現を得意とし、1989年、『ヤングアニマル』の前身である『アニマルハウス』で『ベルセルク』を連載開始。


 主人公の名は、ガッツ。身の丈を超す巨大な剣で、人知を超えた魔物たちと戦う全身黒ずくめの大男だが、この種のヒーローが活躍する「剣と魔法の物語」――いわゆるヒロイック・ファンタジーは、いまでこそ漫画の世界でもひとつの人気ジャンルとして定着しているが、同作が始まった1989年頃はそれほどメジャーな存在ではなかった(※)。


※……念のため書いておくが、たとえば、和田慎二『ピグマリオ』(1978年〜1990年)や、萩原一至『BASTARD!!―暗黒の破壊神―』(1988年〜)のような人気作はいくつかあった。


 ましてや『ベルセルク』は本格的なダーク・ファンタジーだ。当時の少年漫画や青年漫画の主流とはいいがたい。むろん、作者も編集部もヒットさせるつもりで連載の企画を立てたのだろうが(そうでない連載漫画などあるはずがない)、果たしてここまで――つまり、単行本のシリーズ累計発行部数が4000万部を突破するまで売れるとは最初から予測できていたかどうか。


 いずれにせよ、この作品のヒットがその後のコミック・シーンの流れを大きく変えたのは間違いない。そう――『ベルセルク』というターニングポイント的な作品がなければ、のちの『鋼の錬金術師』も『進撃の巨人』も、あるいは、『鬼滅の刃』も『呪術廻戦』もなかった……というのはさすがにいいすぎかもしれないが、それでも、80年代末に三浦が上げた最高のトスが、現在の漫画界におけるダーク・ファンタジーの隆盛につながっているのはまぎれもない事実だろう。


 もちろん『ベルセルク』が未完に終わったことは残念というほかないが、考えようによっては、作者は読者の想像力に物語の結末を託したのだといえなくもない。


 三浦建太郎先生のご冥福を、心からお祈りいたします。


■島田一志
1969年生まれ。ライター、編集者。『九龍』元編集長。近年では小学館の『漫画家本』シリーズを企画。著書・共著に『ワルの漫画術』『漫画家、映画を語る。』『マンガの現在地!』などがある。


■書籍情報
『ベルセルク(1)』
三浦建太郎 著
定価:本体580円+税
出版社:白泉社


このニュースに関するつぶやき

  • ダークファンタジーって言っちゃうと軽く聞こえるけど、絵も内容も相当ヘビーだからねぇ…。「読むと疲れる系」のマンガ。けど面白い。ほんと御冥福をお祈り申し上げます。
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