父の相続、母と長女が独占…蚊帳の外に置かれた次女「同じ姉妹なのに、どうして?」

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2021年05月23日 09:31  弁護士ドットコム

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母親から自分が不利な条件での「遺産分割協議書」にサインしろと言われた——。相続に関するこんな相談が、弁護士ドットコムに寄せられました。


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相談者(次女)は両親と姉の4人家族ですが、母親と姉からは疎ましく思われていました。相談者と仲が良かった父親が亡くなると、母親と姉は自分たちを優遇する「遺産分割協議書」を作成。相談者に署名と実印の押印を求めてきました。



そもそも、相談者は相続できる財産がいくらあるかも知らされていません。「同じ母から産まれた子どもなのに、どうして?」と納得できない様子です。



このような「遺産分割協議書」の作成は、違法ではないのでしょうか。五十嵐里絵弁護士に聞きました。



●解説のポイント

・遺言がない場合、話し合いの結果を「遺産分割協議書」にまとめる



・相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる遺産の分け方を決められる



・1人でも反対する相続人がいる場合には、有効な遺産分割協議書は作成できない



●遺言がない場合どうする?

——遺言がない場合、どのように遺産を分けるのでしょうか。



相続が発生した場合、遺言があればそれに従うことになりますが、今回のように遺言がな いときには、相続人全員が話し合って遺産の分け方を決めることになります。



話し合いがまとまった場合には、話し合いの結果を「遺産分割協議書」という書面にまとめ、相続人全員が署名、捺印(通常は実印)して、不動産の名義変更や預貯金の払戻などの手続を進めていくことになります。



——今回のケースではどう分けられますか。



今回の相続人は、相談者の母、姉、相談者の3人、民法で定められたいわゆる法定相続分 は配偶者である母が2分の1、子である姉と相談者はそれぞれ4分の1です。



ただ、相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる遺産の分け方を決めて、遺産分割協議書を作成することも可能です。



●全員が合意していなければ何の効力もない紙切れに

——合意していない場合は、どうなりますか。



当然ですが、遺産分割協議書は全員がその内容に合意して、署名捺印しなければ効力はなく、1人でも反対する相続人がいる場合には、有効な遺産分割協議書を作成することはできません。



相続が発生した後に、一部の相続人が、自分たちの意向に添った遺産分割協議書を提示するということは実はよくあることで、このような協議書の作成と提示は、一部の相続人からの提案にすぎないと考えられるため、違法とまでは言えません。



内容に納得がいかない相続人が署名捺印を拒めば、何の効力もない紙切れになって終わるというだけのことです。



ただし、協議書を作成したうえに、内容に納得していない相続人になりすまして署名捺印までしてしまったら、協議書が無効であるというにとどまらず、私文書偽造などの犯罪行為として刑事責任を追及されることもありえます。



今回の相談者は、そもそも遺産の全容を知らされてもおらず、法定相続分を無視した遺産 分割協議書への署名捺印を求められたということですから、署名捺印を拒み、遺産の内容の 開示と、納得のいく分け方ができるような話し合いを求めるべきだろうと思います。




【取材協力弁護士】
五十嵐 里絵(いがらし・りえ)弁護士
新聞社に記者として勤務した後、法科大学院に進学、弁護士に。離婚・男女問題、遺産相続、企業法務を取り扱う。
事務所名:辻山・五十嵐法律事務所
事務所URL:http://www.tyig-law.jp


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